Yoshiのブログ-ポリアミン


バルドクツ(Bardocz)の文献を読み直して、再発見したことは、ポリアミンは生きている細胞の全てに含まれ、細胞内代謝に大きく関わっていることだ。たんぱく質合成、RNADNA合成において、合成開始、制御、刺激などに大きく関わっている。


さらに、電気化学的役割としては、不変的に(特殊任務としてではなく)金属イオンMg2+yや、Ca2+に置き換わることができる。この機能(+イオンとして働く)ゆえに、ポリアミンは細胞の成長と増殖に不可欠であり、かつ+電荷を持った分子で置き換えることのできない分子にとって成長に必須の機能を持っている。


バクテリアの成長をポリアミンが増進する試験の後に、動物実験が始まった。1970年のニューヨークアカデミーでの発表が初めての報告である。ポリアミンと核酸との関連が解ったのはさらに進み1978年のことだ。

上の図は、Quigleyが X-線回折技術を用いて確立したもので、DNAとスペルミンが深く関わっていることを証明するものである。赤で示したスペルミンが、Mgイオンがイーストの構造に深く入り込んでいる。裏表がら観察している。細いDNAの隙間をついて入り込むには、まっすぐがいいと思った。

食品中のポリアミン

千葉大の五十嵐一衛先生が、227種の食品についてポリアミン含有量を調べておられる。膨大なデータだ。先生の感謝しつつ、窒素固定を頭に置いてデータを調べてみよう。


食品中のポリアミンをカテゴリー別に概ね500nmol/gを含有量の多いものとしてピックアップした。

a. 穀類:米には含まれないが、ぬか・胚芽には多い。米の窒素は表面にあるという。

(15)、米ぬか(554),小麦粉(198),小麦胚芽(2,440)

b. 野菜:ピーマンに多い理由は何だろう。野菜も結構多く含む。成長の早いものに多い。

ピーマン(2,690)、ブロッコリ(565)貝割れ大根(496,にら(767)タケノコ(747)

c. 豆類:豆に多く含まれる。根粒菌によるのだろう。豆なら何でもということではないようだ。

大豆(1,090),あずき(679),テンペ(589

d. 種子:種子は生命の源、種子で極端にポリアミンの少ないものはない。

松の実(429)、ピスタチオ(488)

e. キノコ:どのキノコにもポリアミンがたくさん含まれる。菌類だ。窒素固定くらいするかも知れない。

シメジ(1,090)、エリンギ(1,080,マイタケ(728)、シイタケ(693)アガリクス(2,340)、マツタケ(1,030)

f. 漬物:乳酸菌のせいか、漬物にポリアミンが多い。繊維も多く腸内と同じ環境か?

シバズケ(1,450)、ぬか漬け(1,200)

g. 魚類:特定の魚介類に特別高濃度でポリアミンが含まれるが今のところその理由は思い付かない。 ワカサギはPond Smelt(池が臭い)という。何かの偶然か、間違いか。くさやじゃないか。

ワカサギ(1,490)、貝の内臓(91,500)、シジミ(853)、塩タラコ(906)、シラコ(1,270)

h. 肉:肝には多く、肉には少ない体内代謝によるものだろう。

牛肉(144)、牛肝(974)、豚肉(201)、豚肝(1,010)、鶏肝(1,380)

i. 果物:果物

ミカン(1,360)、バナナ(466)、マンゴ(903)

j. 調味料

オイスターソース(873)、魚醤(3,900)

k. 微細藻

スピルリナ(1,020

  ポリアミンの大量生産が必要になったら。大豆か微細藻だろう。

ポリアミンについてちょっと補足しよう。

生物が体内代謝でポリアミンを合成する時、出発点はアルギニンだ。アルギニン → オルニチン → プトレッシン → スペルミジン → スペルミン と進む。 プトレッシンは胃壁で吸収され、その後スペルミジン、スペルミンに変わる。食物中のポリアミンは、3種類のポリアミンそれぞれが多かったり、少なかったりするが、スペルミジンで代表させて効用を取り違えることはなさそうか。後刻、効用について記述しよう。

(2012-11-7 Yoshi)