バイオジーゼルの話をする前に、ジーゼルって何だと気になってきた。イラクのキルクークの原油の掘削現場に行った。バクダッドから砂漠の中を車で駆けるのだ。1984年のことだ。

途中から月の砂漠のようなところに来るが、あたりの土が黒っぽくなり、ガスの臭いがし、少し油も漏れている。油臭い。フェンスで囲い入口で銃を持った守衛所に挨拶し中に入ると、目の前に、横型の巨大なタンクがある。オイル・ガス分離器だ。

油層から汲み上げられた原油は、ここで水と、ガスと油とに分けられる。この油がいわゆる原油である。ガスは近くのフレアで赤く燃えている。地面の下の原油は条件の良いところで、30%ぐらいが汲み上げられるが、後は地中に残っている。

こうして地上に出た原油はタンカーで日本に運ばれる。

ご承知の通り、石油は太古の有機物が地中で変化しできたもの、岩の間に詰まっているが、原料によっても異なる性状を持ち、また原油の中には、軽いガスは分離してはいるが、それでも少量含まれているものも含めると、メタンからずーっと重質の重油やアスファルトに至る油を

含んでいる。

ジーゼルって何だ。英語ではGas Oilという。身近なところで石油ストーブの燃料である軽油と同じものだ。自動車や漁船にはエンジンが使われているが、身近なエンジンはガソリンで走る乗用車と軽油で走るジーゼルに分かれる。

ガソリンは沸点が70℃から200℃くらいの油が混ざったもの、ジーゼルはガソリンよりは沸点が高く、最高沸点350℃ぐらいの油がj混じったものだ。

この当たりからが論点で、実は微細藻の脂質(Lipid)がジーゼルに良く似ている。もう一つ、米国で話題になっている大豆油も良く似た性質を持ち、微細藻の脂質や大豆油の主成分はTAGs(トリアセチルグリセロール)である。

今日、欧州では菜種油、米国では大豆油からのバイオジーゼルの生産は、米国ではなお新技術であるが、欧州では豆類からのバイオジーゼル生産はジーゼル代替品としての地位を確立している。

事実、歴史的にみると、ジーゼル油とは、初めてルドルフ・ジーゼルが作ったピーナッツ油の名称で中身はTGAsであった。豆類由来のジーゼル油はその後急速に導入された石油由来の安価なジーゼル油に取って代わられたが、ジーゼルエンジンの燃料はもともとピーナッツ油であった。実際1980年代、天然のジーゼル油は近代のジーゼルエンジンの燃料としては粘度が高すぎ、TAGsはアルコールと反応させてアルキルエステルとした。いわゆるバイオジーゼルとは、天然油をエステル化したものを指していたのである、

微細藻の脂質の主成分はTAGsであり、品質の点で問題はないが、その利点は生産性の高さである


Yoshiのブログ-SERI

2005年現在、米国の大豆植え付け面積は7,400万エーカであるが、年間600億ガロン必要とされるバイオジーゼルの需要を賄うには、微細藻の場合には、生産性を高く見積もると、600万エーカ(上図右の赤枠)、低く見積もっても4,800万エーカとなり、アリゾナ州で賄える構図となる。

微細藻なら何とかなるかも知れないと考える根拠はここにある。

(2012-9-26 Yoshi)