微細藻の勉強をする中で、水田は格好の場であると考えてきた。有志でマイクロアグリカルチャー研究会も立ち上げた。
GHGT-6(第6 回地球温暖化対策のための国際会議2002年)でマイクロアグリカルチャーと題して水田利用につき発表した。本年11月GHGT-11が京都国際会議場で開催されるが、この問題に対する関心は薄い。
日本の水田の作付面積は、1980年の310万haから、2012年の250万haまでほぼ一定に減衰している。作付面積の増減はあるが、休耕田は間違いなく増加しており現在90万ha程度である。
微細藻に関係して日本中の農村を訪問し、多くの水田にもお目にかかった。そこで判ったことは、数千年前に最初の水田が出現して以来、想像もできないほど多数の農民の力で、これらの水田が出来上がったことだ。
大小様々な集落の全てで、全村の水田に、水を均等に配分する工夫がある。どこの村にも一番高い所に位置する水田があり、そのあたりに水田の水口がある。
西部劇ではないけれど、農民にとって水は命である。古今東西争いが絶えない。そんな中で、日本は、荒れ地を開墾し水田を増やしてきた。上流の水口に新鮮ではあるが、冷たい水が届く。村全体にできれば均等に綺麗な水を行き渡らせたい。
鹿児島県の南端大隅半島の根占町でさえ、農業用の上水道と下水道が完備されている。原則として上下水道が混じり合うことはない。上下水道の途中に、ある種の堰があり、上流の田から順に、田植えの為の給水がなされ、村全体に行き渡る。余った水や汚れた水は、各水田にある排水口から下水道を使って排水し、最後に河川に排水される。
水田はいわば上下水道完備の貯水池で、いつもきれいな水を貯められる構造である。
近年水田は整備され 300mx10m = 3,000m2サイズが基本である。言ってみれば、300mx10m= 3,000m2の水田がずらりと並んだ構図である。上下水道完備の水田は、そのままレースウエイであると思う。
水口に至る水の確保も重要である。というか、こちらの方が大問題である。都会育ちの我々が、小さな田舎町で、散策の途中で小さな堤に出くわすことがある。田植えや夏場の渇水期にそなえて、小さな河川の流域に何か所も堤を作って水を貯めるが、それでも水が不足し水争いが起き、死者が出ることも稀ではなかった。血の滲むような苦労の果てに完成した水田をもっと大切にする必要があり、今後新たな水争が起きないよう細心の配慮が必要である。かって、地球温暖化問題を考えた時、考えが及ばなかったことがある。それは地球温暖化で気温が上がるとき、空気中の水の蒸気圧があがり、一度に降る雨の量が、桁違いに大きくなることである。日本各地にダムを建設したが、昨今従来の設計条件はもはや用を成さない。洪水の恐れが飛躍的に増えていることに気付いて欲しい。
その時発表したのが上図だ。
基本の水田を1面30mx100m =3,000m2とし、10面3haを1ユニットとし、7面(緑色)で水稲を作り、3面(黄色)で窒素固定藍藻を栽培する。
黄色い池(レースウエイ)には炭酸ガスを注入する。青色および、赤色の線は水路である。このシステムの入力は水と炭酸ガスで、米が生産される。
言ってみれば、休耕田を活用し、炭酸ガスを固定して、米も作るし、肥料や綺麗な水も製品だ。
次回にもう少し詰めてみよう。
(2012-8-9 Yoshi)
