吾輩を食っらうもの(英語ではAlgae Eaterという)の話しをしよう。順不同だ。イワシの餌は微細藻だと言った。海洋大循環の話しをした。北太平洋で結氷し、凍るのは純粋だから海水中の塩分が濃縮され、比重が大きくなり、海底へ潜り込む。この海水が巡り巡って、太平洋のペルー沖で浮上する。途中で海洋生物の死骸を沢山取り込み、窒素やリンたっぷりの海水が浮上する。アンチョビ(カタクチイワシ)が大量発生する。窒素やリンをたっぷり含む海水が、大量の微細藻を発生し、これを餌として、アンチョビが育つのだ。
ところで微細藻だけあれば良いかと言うとそうはいかない。
鹿児島でシラス漁をしている知人から最近シラスが減ってきた。シラスを陸上養殖出来ないかと聞いてきたことがある。宍道湖でシラウオを増やせないかとの話しもあった。とりあえず調べてみようと、この10年ほど調べて判ったことはそんな単純な話ではないということだ。基本的には正しいがその他に色んな事情もありそうだ。
そんな時、カリフォルニアはサンディエゴのScripps海洋水族館を訪問し中に入って驚いた。直径3mほどの円筒形のガラス水槽の中で無数のイワシが泳いでいた。中で10%ほどのイワシが、大きく口を開く。泳いでいて時々餌を摂るのだ。イワシ一匹丸飲みできるほどの大口だ。文献を調べるうちに、この水族館ではイワシの周年栽培、周年産卵できることも判った。もともと、このあたりでイワシ漁は重要産業だから研究費も豊富な筈である。
イワシはおよそ年1回産卵する。
ご存じイワシである。
収穫したイワシの年齢分布である。7,8才まで生きる。
Aは卵、Bは孵化直後の稚魚、Cはシラス(「海産魚類の初期生活史を語る」塚本洋一 より)
日本ではイワシは黒潮に乗って北上し、10月頃産卵する。孵化直後は卵黄を吸収するが、2日後には、卵黄は吸収され、自然の餌を摂取しはじめる。ここで重要なことは、稚魚の口の大きさと餌の大きさである。
上の図(J.R.Hunter 1975National Marine Fishery Service La,Jolla)が判りやすい。縦軸がアンチョビの体長、横軸が日齢である。生後4日の稚魚は生後20日まで、渦鞭毛藻だけ与えても生きてはいるが、体長は5mmのまま大きくならない。渦鞭毛藻と小型動物プランクトンを混合して与えると、40日を超えて生存し、さらに大型動物プランクトンを併用すると2カ月以上も生存する。口の大きさに合わせ、身の周り
で口に入るものをどんどん摂取し成長するようである。
微細藻を食べる小魚もクジラのような大物まで、鰓を以て海水中の餌をより分けなんでもどんどん食べるということのようだ。ではあるが、初期餌料としての渦鞭毛藻は必須で、大きすぎて口に入らないでは話しにならない。
ついでにもう一つ、
小さな魚の世界も若肉強食。上の図(イワシと逢えなくなる日 河井智康)はカタクチイワシを動物プランクトンが食べている図である。稚魚の共食いや、孵化前の仲間を食べるなど日常茶飯事である。
結論を急ごう。
稚魚は、その時点で口に入る最大の植物および動物プランクトンを摂取する。
成魚は、マイワシは植物プランクトン(微細藻)から小型動物プランクトンを摂取し、カタクチイワシは動物プランクトンを中心に摂取する。いずれも口を一杯開き、口の中の鰓(えら)で漉しとる。鰓の前方に、鰓耙(さいば)という篩がある。その幅は体の小さいカタクチイワシの方が大きい。
マイワシ成魚はAlgae Eaterである。
(2012-7-11 Yoshi)




