米国NewYork州の西にジェームズタウン(JamesTown)と言う小さな町がある。ここに町にランプに変る照明用の石炭焚き発電所が出来たのは1891年のことだ。今から120年前であった。爾来このプラントは自治体が所有するNewYork州最大の発電所として今日まで稼働してきた。

この発電所に最近、存続の可否を巡る問題が沸き起こった。というのは、建設してから120年も経って随分古ぼけてきたこと、豊富な水力発電能力を持つカナダに近く、幾らでも買電できる状況になったこと、などが主な理由だが、町は巨大な石炭炭鉱の上にあり、石炭事業は町の雇用と収入の源であること、発電所は長年町の誇りであったこと、など色々事情があり町を2分する議論が行われてきたが、推進派の一人が、この規模の発電所は新しい工夫をして、最先端の設備に作り変えたら面白いことになるのではないかと思い付き、ともかく革新的開発案を作り、経済試算しようということになった。2007年の事だ。

そこで考えたシステムが、従来の石炭焚き発電所を酸素焚き流動床発電とすることであったがこの時期環境問題が重要で、改築する発電所から炭酸ガスが放出されるのは絶対反対の環境団体からのクレームが起き、吾輩の所に御鉢が回ってきた。発電所から出る炭酸ガスは微細藻で固定し、微細藻による炭酸ガス固定付き酸素焚き流動層発電であった。

日本から3人が現地に赴き、サミエル市長とも親しくお話そた。


Yoshiのブログ-BPU

左の写真が現在の姿。右が改造後の予想図である。

現状改善に当たって社会ニーズとそのための技術は、次の通り;

(社会ニーズ)炭酸ガスを出さないこと、NOX/SOXを放出しないこと

(その為の技術)脱硫技術、脱硝技術、炭酸ガス固定


当時火力発電所の排ガスを微細藻で固定する実験は、日本を除いてどこでも実施されておらず。発電所排ガスからの炭酸ガス固定の部分の検討が吾輩の所に回ってきた。


Yoshiのブログ-プロセス

提案されたシステムは上図の通りである。燃料の石炭(Coal)がCFB(循環流動層ボイラ)に入る。ASU(空気分離装置)から純粋酸素がCFBに供給される。純粋酸素で燃焼すると排ガスは炭酸ガスで窒素は含まれず、そのままAB(Algae Biofixation: 微細藻によるバイオ炭酸ガス固定)に運ばれる。

ABが吾輩の担当である。(Algae Biofixation:微細藻炭酸ガス固定)

 純粋酸素で燃焼するCFBはまだ実施例はないが、超高温燃焼を可能とし、炭酸ガス分離設備が必要ない)システムは、全ての技術者が目指す高効率発電を可能にするものである。ABは炭酸ガスを放出しない

技術の代表である。

 生産された微細藻は、Holding Pond(微細藻池)に一次貯蔵され、Algae Slurry(微細藻スラリー)からWet Algae(湿潤微細藻)として、CFBに循環される。技術的困難さはあるが、微細藻を処理する上で、究極の技術革新である。

N/P in River Waterとあるのは、微細藻栽培に必要な窒素/リンは河川に含まれるものを可能な限り利用しようとするものである。五大湖であるエリー湖から流れ出るチャタヌガリバーが近傍を流れている。


 費用の一部をニューヨーク州が出すことが決まったところで、米国の資金不足で、自治体、州政府、連邦政府の出資のうち、国の出資が棚上げとなった。


オバマか? リーマンショックか? 革新技術の棚上げは残念の極みであった。

(2012-6-27 Yoshi)