日本のN(窒素)バランス
ヒト起原のNが地球のNバランス(収支)を狂わせている。別の言い方をすると、Nが河川・湖沼を経て、最後には、ヘドロで海を汚している。大気中の炭酸ガスに依る地球温暖化の次の問題は海水中の窒素だとかねて考えているが、手始めに日本のNバランスを計算して見た。
以前にお見せしたものと同じ図だが、この図を見ながら聞いて欲しい。
日本の食糧自給率は45%である。(出典:SAI 92)すなわち、
食料生産は7,100万トン/年(内、N:497万トン/年)
食料輸入は5,800万トン/年(内、N:406万トン/年、2001年)
飼料輸入は1,600万トン/年(内、N:112万トン/年)
食料合計は14,500万トン/年(内、N:1,015万トン/年)
上の数値の意味するところは、ヒトと家畜が、年間1億4,500万トンを食べ、およそ1,015万トンの窒素(N)を海へ流す計算だ。驚くことは、1,015万トン流すNの内、518万トンは、輸入しているということだ。世界中から食料・飼料、別の言い方をすれば、世界中から518万トンもの窒素を毎年輸入して、世界中の海へ日本から放流して、海のヘドロ化に貢献しているという事だ。
昨今の話題は、食料生産には、多量の淡水を必要とする。人口が増加する今世紀、水は大変貴重な資源であるが、食料を輸入することは、食料生産に必要な水(仮想水:virtual water)をも輸入していると非難されている。
世界中に迷惑をかけて作ってもらった食料・飼料を買って、挙句のはてに、集めてきたNを海に撒いて海を汚染させるのは何とも情けないではないか、せめて世界のNを集めることだけでも止める訳にはいかないものか。この点からも食料自給率を上げるべきだと思う。
以上は、日本に入ってくるNを減らす工夫だ。入るを減らし、海に撒くNを減らす工夫だ。
日本で最大の未利用資源はNだ。
ところで、これからが吾輩の出番だ。
例えば、水田を例にとれば、肥料として水田に供給されたNは、稙物に40%移行し、土壌や排水中に40%が流出、残り20%は、大気中に揮散する。一方、吾輩のように、閉鎖系の池で生産される稙物の場合は、供給する肥料は全量稙物に移行する。土壌や排水からの肥料の流出ななくなり、必要な40%相当分を供給すればよい。同じ作物でも微細藻や水耕栽培では肥料の利用効率が大きく改善されることは、重要なことだ。空気中のNも固定できるとすればなおさらだ。
上の試算で、日本では、毎年、14,500万トンをヒトと家畜が消費し、1,015万トンのNを海へ排出するが、これは大変な資源の浪費だ。これを微細藻で回収すればどうなるか。80%を微細藻で回収するとしても、11,600万トン/年(=14,500万トン/年/0.8)の微細藻が生産できる理屈だ。
吾輩の計算によると、この量を生産するのに必要な耕地面積は、およそ20万haで我が国の休耕田の20%に相当する。ここで固定できる炭酸ガスは日本で排出する炭酸ガスの20%に相当する。
湖底土壌のボーリング試験によれば、湖沼の堆積速度は、海底土壌の堆積速度の10倍だそうだ。日本各地で湖沼のヘドロ化が著しいが、10分の1の速度で海の汚染が進むとすれば由々しきことだ。地球のNバランス調査が課題だ。
農業における化学肥料の削減にどのように、微細藻が利用できるかなど、項を改めて議論したい。
(2012-3-16 Yoshi)