先にサニーベールの巨大な微細藻を使った排水処理設備を紹介したが、サンフランシスコ湾の塩田跡を利用した粗放的なものだった。

ホーリスター

 

写真は、サンフランシスコ近郊、ホリスターの排水処理設備である。微細藻の高効率培養池(High Rate Pond)でスネークポンドと呼んでいる。同じタイプの池が、サンディエゴではスピルリナの培養に用いられている。上の池は、6.4ヘクタールの大きさで、単一培養池では世界最大である。大きさは処理量によって決まるものであるから、先のサニーベールのものと比べどちらが効率が良いか比較するには、種々検討をしなければならない。将来バイオジーゼルなどの生産が必要となる時、1,000ヘクタールを超える大きさの微細藻池が必要になり、この様な池が多数必要になるので、今後スネークポンドが注目されることは必定である。

高効率池の定義は、「同じ量の排水を処理するのに必要な微細藻培養面積を最小にすること。」であるが、もう少し噛み砕いて再定義すると、「排水中に含まれるCOD,窒素、リンを排水基準以下にするために必要な微細藻培養面積となる。」

そのために

その1:どうやってCOD,窒素、リンを減らすか?
その2:どんな形の池が良いか?
が課題だ。

WWT

 

(T. J. Lundquist, Cal.Poly.資料より)

(


その1:どうやってCOD,窒素、リンを減らすか?

排水中に含まれる炭酸ガス(CO2)と大気中の炭酸ガスが、窒素(N)とリン(P)とを肥料として光合成し、微細藻(Algae)となり、N,Pが減り、微細藻ができる。その際、光合成で酸素(O2)発生する。さらに、排水中の有機物(Organics = COD)は、バクテリアによって分解され、有機物中のN,Pは分解され微細藻になるり、有機物(Organics = COD)は減少する。

その2:どんな形の池が良いか?

排水中のCOD,窒素、リンは排水中のいたるところにあるが、光合成は水面近くで起きるから、排水をよく混ぜる必要がある。大きな池ではどうしても淀みができるが、水底の淀みに入ったCOD,窒素、リンは反応しない。水面に順序よく下から上がってきて、反応した微細藻は直ちに取り除かれるのが一番よいが、大きな池と水車付きの流れのある池(レースウエイ)では後者に軍配があがる。


その3:他に工夫はないか?

排水中のN,Pが全て微細藻になるために必要なCOと水中のCOとはバランス見合っているか?

通常、微細藻中の炭素(),窒素(N),リン(P)の重量比は

C:N:P = 50:8:1

である。一方、排水中の炭素(),窒素(N),リン(P)の重量比は

C:N:P = 20:8:1

である。すなわち、排水中に溶けているCだけを使ったのでは、炭素が制限因子となって、必要な炭素50の内、20分しか微細藻にならない。そこで、高効率微細藻培養池では炭酸ガスを供給する必要がある。先に述べたスピルリナ培養池でも炭酸ガスを供給している。

HighRate

上の写真はカリフォルニアの高効率排水処理設備のものだが、水車前方で炭酸ガスを注入している。このような設備で作られた微細藻は、収穫し、近隣のアーモンド畑の肥料にしたり、メタン発酵してエネルギーを回収したりする。炭酸ガスを注入することは言い換えれば炭酸ガスを固定していることであり、地球温暖化防止に寄与していることも明らかである。

 

汚染物質の分散と集中

人間生活で排出された汚染物質は、通常排水となって、河川経由で湖沼・海に排出され世界中にばらまかれる。言い換えれば分散される。一旦分散されると、これらを回収するのは至難の業である。自然界で、亜硫酸ガス、酸化窒素の大気汚染の例を引き合いに出すまでもない。河川・湖沼の汚染も同じであるが、過去汚染があまり問題になっていなかった時には、自然の循環の中で微細藻月これらの物質を吸収してきた。微細藻はその小ささゆえの莫大な表面積によって吸収し、処理してきたのである。自然界の集中は全て微細藻やバクテリアが引き受けてきたのである。

今も、TVが福島の原発から排出されたセシウムにつき声高に議論をしているが、発電所の地下。うの莫大な排水の処理は微細藻に頼る以外に方法はないと考えている。

(2012-3-10    Yoshi)