先に、カリフォルニア大学のオズワルド先生が、1930年代に微細藻を使って排水処理をしたと書いた。
排水中に窒素やリンが含まれているから、海に放流する前に、窒素やリンを取り除こうというのだが、微細藻を作って排水処理できる理屈だ。アメリカには微細藻を使った排水処理設備が5,000基稼働している(Lundquist, Algae WWT)。
下図はカリフォルニア州サニーベール市の排水処理設備である。
サンフランシスコ湾の南奥(上の図では右が南)にサニーベールと言う町がある。水色の濃いところが深く、薄いところは浅い。塩田後で、周りを土手で囲んだ池のようなところだ。赤い矢印の根元の部分を拡大し、右上に示した。2つ有る内、大きい方は180haある。1haが10,000m2だから大きなものだ。
排水処理の目的は、排水中の、窒素・リン・COD(排水中に含まれる有機物などの量を規定する指数でこの有機物を化学的に酸化分解するのに必要な酸素量)を排出基準にまで下げることでえある。実際日本で実施している方法は、活性汚泥法であるが、廃汚泥焼却炉から炭酸ガスが出るなど問題も多い。
微細藻による方法は、微細藻池で、窒素・リンを使って光合成によって微細藻を増やし、その際発生する、活性の高い微粒の酸素で、CODも同時に行うものである。
この方法は元来、人間を含む自然界が、川や、池で長年実施してきた方法であるが、都市などに人間が集中し、自然の浄化能力が、人間起原の汚染の増加に追いつかなくなり、先に述べた宍道湖の汚染にまで至った所以の部分である。アメリカは広いので、三フランシスコでも微細藻による浄化で間に合っているということだ。池には緑微細藻が育ち、排水が浄化される。
先に述べたスピルリナやヘマトコッカスの池との違いは、先の例では、其々単一種(スピルリナ)の微細藻のみを決まった量生産するところ、排水処理では、どんな種類の藻でも構わないし、何種類の微細藻が混合しても構わないし、生産量は、排水の汚れ具合で、日々変化する所である。何日も雨が続けば処理能力も低下する。
生産された微細藻はメタン発酵し、エネルギーとして使用されている。
微細藻池の拡大図を見ていただきたい。
図の下が処理場建屋で、右下二つの緑色池の合流点が排水の取り入れポイントで、ここにポンプが設置され、排水が池に入る。といっても、ドーッと一点に入るのではなく、3本の側溝に入り、ぐるっと池を巡る側溝から、数十か所に小分けして池に入る。池を攪拌し、池中の微細藻濃度を均一に保つよう配慮している。水中の酸素濃度、炭酸ガス濃度、窒素・リン、全てを均一にする工夫である。
日本国内で、色んなところを旅したが、湖水の流れをエンジニアリングした話しはあまり聞かない。宍道湖など湖の90%がヘドロで覆われているところ、米子近くの中海のヘドロ、ハマグリが居なくなった伊勢湾・東京湾・霞ヶ浦など数えればきりがない。
岸の白鳥が印象的だった。
(2012-2-25 Yoshi)