ヒトが近付く気配を感じ、芳しい香気を発散し、食べて貰う時、一番幸せかも知れない。なぜなら、トマトの体の中に、外へ出て、次世代を担う種子が居るからである。


Yoshiのブログ-トマト                      

ヒトは安らぎを求めて森に入るものとしよう。森にはフィトンチッドがあってこれを浴びることを森林浴という。これもかと思いちょっと調べた。

抗生物質の研究で知られるワクスマン(Waksman1947)は、フィトンチッドを「高等植物によって生産され、微生物に作用する物質に与える名称」と説明した。

友人と北カリフォルニアを旅した。彼は、「 Yoshi, お前は今日、今日まで生きて見た樹木より多くの樹木を見るだろう。」と言った。サンフランシスコからファーンデールに至る海岸沿いの道は、車が根っこの洞穴を通り抜けできるレッドウッドの巨木を含め、巨大な森だった。「巨木がヒトに語りかけることを知っているか?」と聞かれたのもこの時だ。以来、森林を歩くときいつも気にかけている。

稙物の揮発性物質が微生物や植物に及ぼす影響については、ロシアの研究者によってフィトンチッドとして研究が進められたが、ほぼ同時代の、モーリッシュのアレロパシー(他感作用:稙物が出す物質の作用)に統一された。

稙物が一方的に物質を出し、他の稙物(昆虫、微生物、小動物、ひいては人間も)が影響を受けると言うのでは会話にはならない。そこに何らかの相互作用が無いかに注目し、話を進めることにした。

稙物が物質を出す経路は4つ有り、葉や花からの揮散、根からの滲みだし、葉からの溶脱、落ち葉などが、自然にあるいは微生物などによって分解される物質による作用が考えられている。

花の色が気になってきた。

花の色

なぜ、異なった色の花があるのか? 調べてみると、昆虫との関係で花の色を語っているものに行き当たった。曰く、地球の歴史で、昆虫は餌を求めて、色々な花の間を飛び回った。花にとっては昆虫は受粉をしてくれる有りがたい存在であり、昆虫の出現で従来の風による受粉が効率よくなり稙物が増えるのに役立ったとある。ではあるが、昆虫と植物とでは昆虫の出現が数億年早いとも書いてある。昆虫によって好む色も違うらしい。

花粉の運搬も重要だが、花そのものは、受粉と同等、いや同等以上に重要ではなかろうか。なでなら、花が無ければ受粉は無いからである。稙物は自分にとって一番大切な部分に色を付けるのではないだろうか、花は常に太陽に向いているから、強力な太陽光線に接することになる。

光合成色素は稙物にとって重要だが、光合成と強光阻害は相反する要素である。花は必死に光合成の産物たる酸素に対し、抗酸化物を蓄える。海で鮭が、アスタキサンチンを求めるように、花は体内で抗酸化剤を生産している。マリゴールドはルテイン、トマトはリコピン、ついでに、微細藻まで仲間に入れると、ヘマトコッカスはアスタキサンチン、ドナリエラはβ-カロチンなどなどである。それぞれが、多彩な色彩を持っている。昆虫のために色を付けるのではなく、光合成をする側が色を準備し、後付けで昆虫が乗った(?)ような気がする。ついでに、色の成分には窒素の含まれているものも多く、もっと調べてみたい気持ちに駆られる課題である。

話をアレロパシーに戻すと、

葉や花からの揮散:テルペン類で、リモネン(レモンの香り)、フェランドレン(トマトの香り)、タイム、コリアンダーなど。

根からの滲みだし:ゴム稙物の根から滲みだすケイ皮酸が知られているが、エンドウの根から滲みだすアデノシン1リン酸(AMP)などがある。

葉からの溶脱:森林の樹木の葉からはテルペン類が溶脱する。

最新の研究(藤井義晴、2004)の中から,期待していた報告を見つけた。「アレロパシー物質の作用機構としては、

1)細胞分裂、生長に作用、


2)稙物ホルモンの作用に影響、

3)膜の浸透性に影響、

4)養分吸収に関与、

5)光合成に影響、

6)呼吸やエネルギー代謝に影響、

7)一次代謝物の合成に影響、

8)特定の酵素の阻害など、

が報告されている。殆どの生化学反応に関与している。アレロパシーの候補物質は、OH基、C=O基、あるいはSO基を持ち、分子内に酸素原子を多く含むものと、励起されやすい二重結合や三重結合を持つものが多い。例えば、クマリン、スコポレチン、ソラーレンなどのクマリン類や、プロトアネモニンやパツリンなどはα、β-不飽和ラクトンを持つ物質であるが、これらの化合物はMichael反応の受容体であり、SH基と反応し、SH基を活性発現に必要とする酵素反応を阻害すると想定される。

一方、ドーパ、ミモシン、NDGA,カフェー酸、ジユグロン、カテコール、カフェインなどのグループは、キノンになりやすい物質であり、励起されやすいπ電子系を持ち、酸化還元反応や光増感反応に関与している。」とある。


ドーパは人間の体内に遊離型で存在し、脳の中でドーパミンに転換する。トマトが揮散するドーパをヒトの脳が受ければ、まさしく、稙物とヒトとの会話であろうと興奮する。

2012-2-13 Yoshi