シオミズツボワムシ



Yoshiのブログ-ワムシ

シオミズツボワムシって知ってる。知らないのが普通だと思うよ。吾輩にとっては大敵だ。

今、机の上に、厚さ2cmほどの本があり、「初期餌料生物シオミズツボワムシ」とあるから、重要なものらしい。事実重要である。初期餌料とは水産養殖で、卵から孵化直後の稚魚が食べる餌である。水産王国日本だからこの分野は重要な産業である。写真に中の壺の様な形が本体で、下の丸いものは卵である。本体の大きさ(高さ)は150μmぐらい。

餌にとって最も重要なことは、食べる側の魚の口に入る大きさである。稚魚が大きな餌を齧って食べることはない。日本で始めてシオミズツボワムシの大量培養が可能になり、水産養殖が可能になった。このシオミズツボワムシの餌となるのが、吾輩(微細藻)である。海産のナンノクロロプシスが最適であるが、淡水産のクロレラや、先にあげたテトラセルミスなども餌となるが、EPADHAが含まれていないので、別途供給する必要がある。先に微細藻の大量培養を話題にした時、水産餌料を挙げなかったのは、水産餌料は重要ではあるが、真鯛やヒラメなどの稚魚の生産期間は春先に限られており、量も年数トン規模で、現在のバッチ生産で需要が賄えるためである。

最初の写真に戻って、体内で緑色に見えるものが、餌のナンノクロロプシスである。

ナンノクロロプシスとシオミズツボワムシとは食べられるものと捕食者の関係にある。海産珪藻を育てるような沿岸の陸地では、周りの大気環境に、数μmの各種微細藻やらシオミズツボワムシの卵やらが無数に居り、前日まできれいな緑色であった池が、翌日見れば澄んだシオミズツボワムシの池に変っていたなど日常茶飯事であるが、食べられるものと捕食者の関係を別の観点から考えてみたい。

ナンノクロロプシス→シオミズツボワムシ→ヒト

食う物と食われる物の連鎖であるが、これを窒素(タンパク質)の動きについて見、

タンパク質を代表する指標として窒素を考えると、窒素を得る方法は次の3つに限られる。;

その1:空気中の窒素を固定する。

その2:海水中のアンモニアから合成する。

その3:餌から取り込む。

その1

空気中から窒素を取り込むことができるのは、藍藻とある種のバクテリアに限られると判ったが、対象をナンノクロロプシス、シオミズツボワムシ、ヒトに限ると、可能性のあるのはナンノクロロプシスだけだ。

ピコプランクトンのナンノクロロプシスは藍藻とも近く、共生相手も多いことだから可能性は高い。同じ環境でテトラセルミスより、シオミズツボワムシの餌として優れているからなお可能性は高い。

その2.

海水中からアンモニアを取り込めるのは光合成できるナンノクロロプシスだけだ。

その3

餌から取り込む(表現は変かも知れないが)となると、

ナンノクロロプシスの餌は炭酸ガスと水。独立栄養で生きるのはナンノクロロプシスだけだ。力強い限りだ。食物連鎖の一次生産者だけのことはある。

シオミズツボワムシの餌はナンノクロロプシスなのだから、はっきりしている。ナンノクロロプシスに感謝するだけだ。テトラセルミスが餌では良いワムシはできないから、シオミズツボワムシにナンノクロロプシスのタンパク質を上手に取り込む手だてはないようだ。

ヒトが一番厄介だ。

ヒトは従属栄養生物である。空気中の窒素を取り込むことはできない。食事から摂取する。アンモニアは取り込めない。他にもう一つ、体内に細菌を沢山蓄え、食物繊維をタンパク質に変えることだ。必要なタンパク質の少なくとも10%は食物繊維から取り込んでいる。

食餌から摂取すると言ってもヒトは食餌中のタンパク質を直接摂取するのではなく、いったん、アミノ酸に分解し、必要なタンパク質に合成する。一部直接摂取するものもある。(Importance of dietary polyamine in cell regeneration and growth, Bardocz 1995)。食品でポリアミンの多いものは、体内バクテリア(腸内細菌)や、クロストリディウム(酪酸菌)に関係するものである。

(A review of dietary polyamines, Kalac,2004)

最近とみに関心が高まっている食物繊維であるが、腸内細菌は食物繊維を好んで食べ、有用物質(ビタミン他)を作ると言われる。(「腸内革命」藤田紘一郎,2011)。

2000年のノーベル賞で、医学生理学賞を受賞したイギリスのA・カールソン博士の研究対象のドーバミンは「幸せを記憶する物質」として話題を呼んだが,この神経伝達物質も腸内で合成される物質である。

メタボだ、幸せ記憶だなどと色々言われるが、考えてみれば大腸はヒトの器官で一番大きい。食生活とも密接に関わっている。

アメリカ人、日本人、住む所によって腸の長さは、全く異なるらしい。同じ家畜でも、ウシとブタとでは餌が違うのはどういうことだ。消化器官にはまだまだ判らないところが多いと思う。

(2011-1-25 Yoshi)