三井先生のこと
自然界からどのようにして微細藻を収集するか、マイアミ大学の例をお話ししよう。
マイアミは北緯26°に位置する。先に述べたシャーク湾は南緯26°であり、微細藻が自生できる水域である。西インド諸島に近く、浅い海、深い海、陸から流れ込む川も多い。エバーグレ-ズ湿地帯、インディアンリバーの汽水域など、水温、海水濃度、pHなどの点で、多様である。多様な微細藻を収集する上で
格好の立地である。大学に調査船も持ち、多くの微細藻を収集した。
東京大学、カリフォルニア大学バークレイ校などで微生物の研究をされ、マイアミ大学(School of Marine and Atmospheric Science)の教授に就任されたのは、1972年のことである。
微細藻で年産数十トン以上の大量培養可能なものは5種類だけと話したが、研究の場で収集された微細藻の数は膨大である。三井先生は、マイアミを中心に海産藍藻(別名シアノバクテリア)を収集・研究されたが、その数は、3,000種を超えるとの事だった。
上の写真は、コレクションである。
船を出し、プランクトンネットを引き、藍藻を1個、1個識別し、試験管レベルで培養し、次いで下のフラスコレベル、さらには上の写真で先生の横に並んでいるレベルの培養を実施、後々規模を拡大して培養できる目途が立ち、成分分析や培養条件を調べた上でコ0レクションとして登録保管することになる。
コレクションには、微細藻の識別番号、採取場所、時間なども記録されるが、問題は、次にその場所に出掛けても同じ微細藻が採取できるとは限らない。当然のこととして上の写真の様に、光を照射した状態で微細藻自体を保管することになる。保管と言っても容易なことではない、生き物であるから、光を照てると増殖する。一定濃度を超えると、10%ほどを残して廃却し、培地(栄養塩を入れた培養液)を加えて保管を続ける。気の遠くなるような作業が必要になる。この様にして微細藻のコレクションが維持されることを考えるとただ感謝、感謝である。
最後の写真は、三井先生の採取された藍藻のみを餌として30cmぐらいにまで育った大型魚である。観賞用の熱帯性海産魚や、写真の食用魚など、食物連鎖の一次捕食者でそのまま付加価値のあるものを育てていくことは、先の二枚貝同様大変重要である。
三井先生が、マイアミのご自宅で、骨折事故にあわれ、それが原因てお亡くなりになったのは1994年のことであり、本当に残念なことであった。合掌
(2011-11-10 Yoshi)