海産珪藻

微細藻を語る際の主役の一人の登場である。まず海産珪藻が主役たる理由を説明しよう。

微細藻の中で最も量が多いことである。これまで話しをしてきた微細藻は、陸上の河川、湖沼に棲んでいるものである。所で、全地球面の70.8%, 361x106km2(海の生態学、築地書館)である。残りの陸地の中に池も川もあるのだから、海の微細藻の方が多いのは論をまつまい。もう少し推論を進めよう。

光合成の効率は、海洋では0.2%, 陸上では0.4%とされ、地球全体では0.2-0.3%である(海の生態学)つまり、海洋のバイオマス生産量は炭素基準で 6x1010C/年、陸上の森林・草原のバイオマス生産量3.2x1010C/年となる。海洋は、陸上の約2倍の生産性であると言える。

海の一次生産者は微細藻である。鞭毛藻と珪藻である。現在十分研究が進んでいない鞭毛藻を除くと、珪藻である(海の微生物、パーソンズら、1970)。珪藻だけで、1x1010C/年程度あり、陸上の全森林・草原の三分の一ということになる。

食物連鎖

海中に無数の珪藻が浮遊している。彼らは朝夕海中を上下するらしい。詳しくは後ほどご紹介しよう。

まずは下図をご覧頂きたい。


Yoshiのブログ-食物連鎖


海中の炭酸ガスと栄養塩と、太陽とから微細藻が育つ。微細藻は、いわしなどの小魚や、二枚貝や、ワムシやえび・カニ類の幼生の餌である。おおまかに言って、捕食動物は呼吸し、運動し、体重も増えるから、食べた微細藻の十分の一が小魚として残る計算だ。大魚はさらに十分の一。大魚は魚粉となって家畜の餌にもなるだろう。サワラの餌になるより、ハマグリの餌になった方が人間の口に入る量は多いのだが、自然界でそんなことを気にする輩はいない。結果のみが現実として現れる。

論点は海産珪藻は自然界の中で重要な役割を果たしているらしいということだ。スピルリナなどより、影響力大きいことは間違いない。

海水を陸に揚げて、微細藻を育てることは容易ではない。水族館が大変苦労して海水を用意しているのは、ご承知の通り。サンシャイン水族館など、発足以来八丈島から海水を運び続けているということだ(2011/3/22の情報)。そんな訳で、海産珪藻に関する研究開発は遅れており、大量栽培できるものは2種類だけである。

海産珪藻-その1 ハマグリの餌

Joeが海産珪藻をハマグリの餌にしようと考え、ニューメキシコ州ロズウェルのバイオジーゼル研究の場を離れフロリダに移ったのは1990年のことだ。小さな小屋を建て、ハマグリ用の小さなタンクと、珪藻用の透明シリンダーでハマグリの餌の栽培を始めた。1992年には、一応格好がつき、稚貝の生産が始まった。1995年には日本でも二枚貝プロジェクトが始まった。
Yoshiのブログ-ハマグリ

ハマグリは大変おいしい二枚貝である。日本にかって棲んだいたハマグリは、2種類あり、外海性のチョウセンハマグリと内湾性のシナハマグリである。チョウセンハマグリは鹿島灘に生息し、厳重な漁獲量管理のもとに現在も細々と収穫している。外海に棲むので殻が厚くどちらかというと身も固い。昔からハマグリと言われたものはシナハマグリである。古くは大和ハマグリなる日本の固有種が生息していたが、乱獲のためほぼ絶滅し、桑名付近で年産数十トンを収穫するまでこの十年間で増やしたが寂しい限りではある。シナハマグリは元々韓国・中国に生息していたものだが、東京湾、伊勢湾、大分県豊後高田、熊本県八代海などに導入した外来種がわずかに残っているが、工場立地などで棲みかを失い、ほとんどが輸入品に置き換わった。輸入先の北朝鮮、韓国、中国でも、どんどんその数が減り、最近国内で口に入ることは殆どなくなった。たまに、アメリカなどに出張し腹いっぱいハマグリを食べてくるのは情けないことだ。

フロリダでは、一大企業に発展したハマグリ事業は日本では必ずしも成功とは言えなおが、フロリダと日本で同じ海産珪藻が今も連続して生育しており、海産珪藻の大量栽培は16年間続いている。

微細藻を陸上で育てることと、例えばお米を育てることを比較すると、色々なことが判かって面白い。

微細藻の場合には、地上に穴を掘りシートを張って地面と仕切り池を作る。池は外界とは仕切られているから、生育に必要なものは、全て外から入れなければならない。海水、栄養塩、光など。出来上がった微細藻は収穫し、不足分は補って運転を続ける。春夏秋冬、日照は異なるから、収穫量は異なるが、いつまでも運転継続できる。厳密に言うと、微細藻の殻を作るケイ素(Si)から、DNAの元となるリン(P)から、葉緑素のマグネシウムやら何から何まで入れてやらなければならない。ただし必要十分量あれば事足りるので、農業の様に、肥料の利用率を考えて例えば2.5倍投入する必要もない。土壌と切り離すという事は、火山灰の上であろうが、溶岩の上であろうがどこでもよい。イスラエルの砂漠でドナリエラを栽培するようなものである。生産性もべらぼうに高いから、良いことずくめである。ただ一つ欠点もある。微細藻は水に浮遊して生育するから、収穫する時、水も一緒に収穫し、脱水する必要があるがこれには大変なエネルギーを必要とする。ハマグリに収穫してもらえばこれほど楽なことはない。動物が収穫するからバイオハーベスト(バイオ収穫)と名付けた。

これを米作りと対比すると、土を耕して種を植える。シートで仕切ることはないから、畑と米は一体である。肥料(栄養塩)は加えるが、土の中には元々去年の肥料の残りもあるし、水だって田植えの時を除けば、お天気まかせ雨まかせ、土壌が必要量を保水し、多すぎると地下に流れる。収穫にしてもその気になればイネからお米だけを取り外し、残りは埋め戻せば、土の中で発酵し自然に戻る。だいたいが、春田植えし、

秋収穫すれば、運転自体1年周期の回分運転であり、連続運転ではない。細かいことを言えば、土壌にはごまんと微生物が棲んでいて、ミネラルもたっぷり含まれている。(つづく)

2011-11-5 Yoshi