憧れのミュージシャンがいた。
夢や希望を、そして愛を。
時には激しく、時には優しく
。ギターをかきならしながら、爪弾きながら。
ひとつの音さえも聞き逃さないように、毎日毎日夢中になって聴いていた。
いつしか…自分も、あのミュージシャンのように歌いたい。
ギターを弾きたい。
何かを伝えたい。
仲間と同じ音を出してみたい。
そんな気持ちが芽生えてきた。元々楽器には全く触れて来なかった訳ではなかった。音を奏でる楽しさは知っていた。
むしろやりたかった。
小学生の頃、音楽の授業が大嫌いだった。
リコーダーと鍵盤ハーモニカ。どちらも退屈で。
その原因は…単純に楽譜が読めなかったって理由だったのかもしれない。
6年生になると、運動会で組体操をするのが慣習だったが、いつしか鼓笛隊を組んで演奏に変わっていった。音楽クラブの数人は金管楽器に打楽器。バトン部は踊り。その他8割はリコーダーに鍵盤ハーモニカ。嫌で嫌で堪らなかった。
すると…クラスで2名だけ打楽器のメンバーを出さなければならなくなった。
そこに飛びつかない訳がない。なんとなく大太鼓って簡単そうだな…と素人ながらに感じていたので立候補。他に希望者が仲良しのカズシだけ。
めでたくふたりで打楽器をやることに。その日から音楽クラブに参加して、打楽器の練習をする事になった。
ひとつだけ困ったことが…
夏休みは市内の学校対抗の水泳大会が開催されている。
スイミングでそこそこだったので、当然選手として選ばれていた。
ところが、その年は記録的な水不足。水泳大会は中止になった。
運命的と言えば大袈裟かもしれませんが、水不足のお陰で音楽クラブに見事⁇合流できることが決まった。
全部で5組あったので、集められた10名。
やる気のある者ない者ごちゃ混ぜ。
誰ひとりとして、音楽の知識は皆無だったのは言うまでもない。
音楽大好きな音楽クラブのメンバーに、音楽の知識皆無の素人集団が一緒に練習することとなった。