前回の記事で、アレクサンダー・テクニークで扱っている心身の使い方には
①頭と背骨が縮む傾向の使い方
②頭と背骨が伸びる(拡がる)傾向の使い方
の2種類があると述べました。
実は、この方向性というのは我々が微生物だった頃から脈々と続いているものではないかというのが今日のお話です。
微生物は 快、不快 によって行動が変化します。
食べ物、日光など必要な物、心地よいものがあると、その方向に進んでいこうとします。
逆に危険なものがあると反対方向に逃げようとします。
なんとなく僕の言いたい事が分かってきましたか?
そうです。その後、生物が進化するにつれて口のある方の端に目、鼻、耳などの感覚器官ができ、その反対の端にしっぽだったりヒレだったり、足だったりが出来ていきました。
そして、快・不快の反応は現在も残っていて、快の感情、例えば、安心、楽しい、好奇心をそそられる、愛されている、、、などの感情を感じると、背骨は伸びる、拡がる方向に動きます。
逆に、不快な感情、例えば、怖い、危険、憂鬱、不安などを感じると縮む方向に反応します。
一番分かりやすいのが恐怖反射、びっくり反射です。人は怖いと感じた瞬間に首をぎゅっと縮めて急所を守る体勢に入ります。
そして、安心、安全を感じると身体(頭と脊椎)が緩んでリラックスを感じます。
これは、同僚のアレクサンダー・テクニーク教師の田中千佐子さんから教えてもらった生物の進化を追体験するダート・プロシージャーなどをヒントに考えた仮説ですが、多分、そうなんじゃないかと思います。
我々の背骨に太古の昔、微生物の時代からの仕組みが組み込まれているなんてロマンを感じますね。
ということは、頭と背骨が拡がったり、縮まったりするのは自然な反応といえます。
ですので、自分の頭と背骨が縮んでいるからといって、すぐにそれを悪い事と受け取る必要はありません。
ただ、長期間それを続けると確実に不具合が生じますが(苦笑)
自然の中では長期間、縮め続けるということはほとんどないと思います。
危機が去って逃げれるか、食べられるかどちらかですからね。これはこれで厳しいか(笑)
一方、現代人で辛いのが、背骨を縮めた状況から逃げられないことが多いということです。
一日中座ってのPC作業、いつも時間に追われている、人間関係のプレッシャー、環境からのストレスなどなど
その場で命を取られるほどの恐怖ではないですが、本能レベルで不快、逃げたいなどの感情を生じさせるのに充分な刺激で溢れています。
いやー、いっそのこと全部放り出して、田舎でのんびり暮らせたらいいんですけどねー!
でも、そういう訳には行かない人が多いと思うので、意識的に頭と背骨が縮んでいるところから抜け出してみようというのがアレクサンダー・テクニークなわけです。
これは脳の一番新しく発達した大脳新皮質にある前頭前野の抑制機能のお仕事になります。意識的にやめるということを可能にしている部分です。
前頭前野が発達したおかげで文明が発達したんだけど、それによってストレス一杯の社会を作り出して、そこで上手くやるために前頭前野の抑制機能を使おうとしている。
うーむ、進化の最前線にいる?人間って面白い存在ですね(笑)