本当は怖い?アレクサンダー・テクニーク(笑) | アレクサンダー・テクニークってなんだろう?

アレクサンダー・テクニークってなんだろう?

ATとその周辺について、思ったことを時々書いています。

アレクサンダー・テクニークが音楽、スポーツ、日常生活、肩こり腰痛などに幅広く応用できるという話はあちこちのホームページなどでもよく目にすると思いますが、今日は、アレクサンダー・テクニークをより深く応用するということについて書いてみたいと思います。

みなさんは「自分とは何だと思いますか?」 または 「何を自分だと思っているのでしょうか?」と聞かれたらなんと答えますか?

「自分は自分でしょ、そんなこと聞かれても困る。」という方が多いと思います。

実は、多くの人が習慣を自分自身だと思っています。

父親、母親というモデルを見てまねしたこと、幼い頃に家族という環境のなかで生き残ってくるために取った戦略、どのように育てられたか。幼稚園、学校で学んだこと、テレビやマスコミからの情報、童話や絵本の世界観などなど、成長の過程で受け取った様々な規範や考え方が自分を形作っています。

習慣の中には上記のようなその人のアイデンティティーとなっているものがたくさんあります。そして、それらの習慣は無意識のうちにその人の振る舞いをコントロールしています。

不必要な習慣をやめるということを深く探求していくと、自分のアイデンティティーを手放さなくてはならないということに気付く瞬間がやってきます。今まで自分が自分自身だと思って大事にしてきたものを手放すのですから難しいとか怖いと感じることがあるのです。

ちなみに、上述の習慣は信念とか考え方、こころの問題だと思われるかもしれませんが、アレクサンダー・テクニークではこころとからだは一つと捉えているので、こころの習慣も筋の緊張、動き方、姿勢として捉えています。

実際にレッスンを見るとからだにアプローチしているように見えるのですが、実はこころの習慣にも同時にアプローチしています。

そういう意味でアレクサンダー・テクニークはボディワークではないし、メンタルワークでもないし、人間全体を対象にしたホリスティックなワークだと言えると思います。

では、次に習慣にコントロールされて生きることで起きる問題について書いていきたいと思います。

無意識に習慣に支配されて生きることは何が悪いのでしょう?

「とりあえず今はこの痛みを我慢できないほどじゃないし、変わる必要性なんか感じないな。」もちろん、それでもOKです。

しかし、人生を長いスパンでみると次のような問題が見えてきます。

それは、こころとからだが本当に望んでいることに蓋をしてしまうということです。

自分の本当の望みに蓋をして生きていると、気付かないうちに不満や怒りを溜め込んでいくということが起こります。

そして、不満や怒りに導かれているうちに人生が暗い方向に流れていき、同じ過ちを繰り返すという負のスパイラルに陥ってしまいます。

こういう人の身体をみると頭を胴体に押し付けて身体にものすごい緊張を溜め込んでそれが姿勢となっていて、ほとんど柔軟性が失われていたりします。

次に、もう少し大きな問題を挙げたいと思います。例えば、世の中がある方向に流れていった時に、本当にみんな自分でそれを望んでついていったのかという問題があります。

歴史をみてみると様々な例が見られると思います。というより世界中で同じ過ちを繰り返してきているように見えます。我々はそろそろ新しい選択をしなくてはいけないのではないかと思います。

それでは、まとめに入りたいと思います。

今の世の中を見回してみると、みんな自由を享受しているようにみえます。

しかし、本当の意味で自由になるということは、無意識の習慣に支配されて生きるのではなく、その瞬間の自分の望みに気付いて意識的に選択することができるということです。

「椅子から立ち上がる」などの簡単な日常動作において、“自分を痛めるような習慣的なやり方” or “新しいやり方” を意識的に選ぶことを練習していくと様々な状況でもっと強い刺激を受けたときにも、刺激に対して習慣的に反応するのではなく意識的に対処することができるようになります。

これが、アレクサンダー・テクニークを自分の生き方に応用するということの一例です。

ここまで読まれた方の中にはアレクサンダー・テクニークは敷居が高いと思われる方も多いかと思いますが、これはかなり深く探求していくと見えてくる世界です。

10回~20回ほどレッスンを受けて自分の動作を改善したい・痛みを解消したいというレベルで使うこともできるし、何年も探求を続けて、“いつも意識的に生きる”ことを目指すこともできます。

何十年も探求を続けているベテラン教師達の所作は日本の伝統芸能の名人や達人達のような佇まいです。僕もいつかはあのように美しく存在したいなーと思いながら日々実践しております。

アレクサンダー・テクニーク自体は単なるスキルです。使えるようになるのはそれほど難しくはありません。それをどのように応用するか、どこまで探求するかで難易度が変わります。そして、それを選ぶのはあなたです。

僕自身は、スポーツの動作の改善というところで使うことにも、人生に応用して深く探求することにも興味があります。

レッスンでは生徒の望みに沿って教えることを重視しています。無理矢理、望んでもいないような世界に連れて行くことはないので(できないので)安心してレッスンにお越し下さい。

最近体験レッスンの後で質問されることが多いので、続けるとこんな世界もあるということを知っていただきたくて記事にしてみました。

自分ひとりで乗り越えるのが難しいところをサポートするのが我々教師の役目です。「変わりたい。」という望みがある方はぜひ体験してみてください。