6月13日
旅行最終日。毎朝6時には目が覚める。それからゆっくり朝食の用意をする。といってもシリアルなので簡単だ。あとはブルースが持ってきたエスプレッソメーカーでカプチーノを作る。食べて後片付けをしてそれからパッキングをすると8時をまわっている。
ブルースはまだ体のことをうだうだ言っている割に「あんちゃんは今日どうしたい?」とか聞いてくる。僕はCanyon de chellyの底に行ってみたい。ロッジの広告で渓谷の下に降りるツアーがあったけど8人からとかいてあった。展望台から下に降りるトレックがあったけどガイド無しでは降りてはいけないと書いてあった。ビジターセンターに行けば別のツアーがあるはずだけどブルースは渋っている。まぁ、はっきり言ってツアーは高いからね。
そこでブルースに「僕は下に降りてみたい。でもジープツアーの必要はない。ただちょっと5分か10分くらい底の雰囲気を味わってみたいだけなんだ。」と言った。そうするとブルースも「僕もそうな
んだよ!」と話に乗ってきた。そこで僕は「ビジターセンターにいってガイドなしで歩いて降りられるトレックが無いか聞いてみよう。」と言ったんだけどブルースは「そんなの無いよ~。」とバッサリ否定。とりあえず聞いてみようと押し切る。
ビジターセンターに入るといつもは積極的に受付の人とコミュニケーションをとるブルースがテレビの前の椅子に座り込んでる。とりあえずほっといてガイド無しで徒歩で降りられる場所がないか聞いてみる。そうすると「ホワイトハウス(遺跡の名前)から降りられるよ。ほかはダメだけど。2時間くらいのコースだよ。」と教えてくれた。ほら見ろ、とドヤ顔でブルースに話しかける。
ホワイトハウスは昨日道沿いに看板を見たから場所もわかっている。早速車に乗り込んでホワイトハウスを目指す。駐車場にはまだ数台しか車は止まっていない。今日はカメラを持っていく。もちろん水も。
高さ100メートルの崖を巨大な岩をぬうように降りていく。
目的地は画面左下の更にずっと奥。
ブルースと好子さんの写真
崖の中腹でブルースが大事を取ってリタイヤ。
岩の隙間で僕達を待っているから下まで降りてこいとのこと。
おっさんはほっておいて底を目指す。しかし途中でおっさんは水も車の鍵も持ってないことが判明~!まぁ日陰に入れば涼しいから大丈夫だろう。
底につくと回りは巨大な岩の壁。そこには羊と小屋があり畑もある。今でも生活している人がいるのだ。その横をすり抜け20分ほど歩くと車とテントが見えてきた。近づくと車はツアー客、テントはネイティブアメリカンの露天だった。やっぱり安い。しかもほとんどが売っている人の手作り。日本でバカ高い値段で売っているインディアンジュエリーは何なんだろう? 露天は軽く眺めるに留めて遺跡に向かう。帰りにゆっくり見よう。
遺跡は柵に覆われていて近づくことは出来ない。しかし100メートルの岩の壁の下にできた隙間にある住居跡は不思議な雰囲気を醸し出している。
ここは間違いなく力の集まる場所、日本でパワースポットと呼ばれている場所とは質が違う。
崖の下で座っていると人とは関わりのないスケールのエネルギーが渓谷を満たしているのを感じる。そしてなんとも言えない安心感。
露天で土産を物色。客を待ちながら作品を作っている露天で幾つかの物を買う。ペンダントは鋳物で作られたものを磨いてあるのかと思ったら金属板を糸のこで切り抜き、それを板に貼り付けていた。大した手間だ。しかも裏側も同じように加工してあるから3層の金属板をロウ付けして磨いてある。これが10ドル。そのほか石版に絵を描いたものを買う。ここほど買い物意識が高まる場所はない。帰りの荷物の心配がないのなら有り金全部使っちゃいそうだ。
好子さんとてくてく戻り出す。すると「あ、サングラスがない。」という。落としたらしい。これから6時間ほど運転をしなければいけないのでサングラスは必需品だ。彼女が探しに戻り一人で歩いているとブルースのことを思い出す。「しまった!おっさんのこと忘れてた!」急に心配になり走りだす。
ここは高度が2000メートル。それにクソ重たい撮影機材もあり息が切れる。平地を駆け抜け上に登るトレックに着く頃には口から心臓が飛び出してダンスを踊っているような心地になる。上り坂を駆け上がると頭痛が始まった。ちょっと危険信号。立ち止まって息を整えようとしたが呼吸は落ち着く気配がない。水を飲むと、その瞬間の息を止めている状態でめまいが起きる。しかしブルースが気になるので早足で坂を登る。中腹を超えるとブルースが休んでいるはずの岩の割れ目が見えてきた。もう少し!
近づくとブルースはいない。きっと駐車場に戻ったのだろう。でも鍵は持っていないはずだ。下で好子さんから預かった鍵の束は僕の腰でジャラジャラと音を立てている。また水を一口飲み最上部を目指す。駐車場が見えてきた。あっ!おっさんも見えてきた。こっちに手を降っている。横には車の中で待っているはずのラスティーが見える。きっとラスティーのために開けておいた窓の隙間から手を入れて鍵を開けたのだろう。それなら水も飲めているはずだ。一安心してゆっくりと歩き始める。呼吸もだんだん落ち着いてきた。駐車場でブルースが笑顔で迎えてくれた。「車に秘密の鍵がつけてあるんだ。」なんだと?こっちは心配で走ってきたんだぞ。
「あんちゃんが駆け上がってくるのが見えたよ。きっと心配して走ってくれているんだろうなと思って嬉しくなった。でもちゃんと鍵はあるのさ~。」
そうこうしていると好子さんがのんびりと上がってくるのが見えた。
走って上がってきた僕と大して時間の差がない。多分2~3分。
そんなのありえないだろ!!
教訓
「高地では走るな。」
「急いだって事はたいして進まない。」
とりあえず全員無事に帰路につくことに。ブルースはサンタフェに直接戻るつもりだったが僕の荷物がコヨーテに置いてあるのでコヨーテ経由で帰ることに。6時間の行程。最初は僕が運転。キチガイじみた荒野の中の道をひたすら走る。道の終わりが見えないほど長い直線なのに車が一台も見えない。80マイル(130km)でガンガン距離をかせぐ。2時間ほど走ってシップロックでブルースと運転を交代。ブルースも2時間ほどはしってコヨーテに至る道に入ったところで良子さんと交代。1時間ほどでコヨーテに到着。幾つかの荷物を降ろし、いくつかの荷物を積み込んでブルースの運転でサンタ・フェを目指す。
1時間20分ほどでサンタフェに入る。夕食は「CowGirl」でチキンの手羽先を食べる。
給仕はみんなカウガール、華やかな雰囲気の夕食は街に帰ってきた自覚をもたらしてくれる。ライブ演奏もあって楽し時間をすごした。ちなみにこの店はカウボーイハットを冠っていると割引になる。
食事をしながら旅の思い出を語り合うのは格別だ。その後ブルース宅に戻り荷物を降ろす。洗濯物が山のようにある。車も荷物も全てがホコリだらけだ。明日は洗濯と掃除の日になりそうだ。