青春の蹉跌(石川達三) 新潮文庫

 

50年来読み返したいと思っていた本をやっと読んだ。初出は昭和43年に毎日新聞に連載されたもの。私は、当時これを読んで強く印象に残っていた。

 

法科の学生たる主人公が、司法試験に挑戦しながらも恋愛問題の煩悩からも逃れられず、試験に合格して前途が開かれてきたとき、資産家の令嬢との結婚話が生じて、打算的な主人公は昔から付き合っていた貧乏な恋人を捨て去るというストーリーが身につまされた。

 

私も法学部の学生であっったし、司法試験も目指していた。それなりに恋愛もした(私は司法試験には受からなかったが)。己の出世のために、貧乏な恋人を捨て去るエゴイスチックなこの小説の主人公に反発しながらも、自分もエゴイストである面を感じ悩んでいた若かりし日の自分を思い出し、複雑な心境である。