旅する力(深夜特急ノート) 沢木耕太郎 (新潮文庫)

 

約3ヶ月前、「深夜特急」全6巻を読了していたので、それがどのようにして書かれたか記した「深夜特急ノート」を読んでみることにした。

 

特に、私は、沢木耕太朗がバックパック一つで1年にも及ぶ旅をした記録を旅行中どのように取っていたのだろう、と興味を持っていた。6巻にもおよぶ大部の本を書くのだから、旅行中に相当なメモをとっていたのだろうと想像していた。そんな大部なノートをリックに入れて持ち運んでいたのだろうか。

 

「旅する力」を読んで分ったことは、沢木は旅行中は、詳細な日々の金銭の記録を書いた大学ノートに、その反対ページに心覚えに単語を書いただけの記録しかとっていなかった。後は、旅先で4人の友に時々書いたエアログラム(これは詳細に記していた)を帰国後集めて本の材料にしたようだ。

 

また、写真もほとんど撮っていなかった。文章だけで、この旅行記を成立させようという意気込みが感じられる。

 

彼がユーラシア横断のバス旅をしたのは、彼が26歳の時。「深夜特急」を書いたのは38歳のとき。いかに、この旅の印象が彼にとって大きかったか分るというものである。

 

沢木は、本の中で、「20代を適齢期とする旅は、やはり20代でしかできない」と振り返っている。さもありなん、と感じる。