弘兼流 70歳からのゆうゆう人生(弘兼憲史)中公新書ラクレ

 

弘兼憲史は1947年生まれ。漫画家。早稲田大学法学部卒業後、松下電気産業勤務を経て、74年漫画家としてデビュー。「課長 島耕作」「黄昏流星群」など。

 

読んでみて、意外と平凡で堅実な人生論だな、と思った。漫画家というから、おかしな奇抜なことが書いてあるのかと思ったら、この人、手堅い思想の持ち主だ。

 

特に仕事論、職業観が私の胸を打った。

 

「有名大学の学生であるというアイデンティティだけで満足しているとしたら、人間的魅力を感じられない人物になる。」その通りだが、耳が痛い。

 

「タフに見える人は、自分の立場や地位に満足している人ではなくて、仕事そのものに満足したいと思っている人」

 

「結局、日々どのように生きるか、そのプロセスを大事にしている人こそ、人生の醍醐味がある」

 

「一見、どんな些細な仕事であっても、自分の目の前にある仕事に対して誠実に一生懸命臨むという姿勢が大事」

 

「肩書きやブランドばかり気にしてしまうのは、自分の存在、仕事に自信がないことの裏返し」

 

「仕事の関係性というのはギブ&テイクであり、人対人です。一方的に自分が得をするのではなくて、相手にもきちんと喜んでもらえる関係を大事にしていれば、お金も回ってまた自分に戻ってくる」

 

「初めから好きな仕事などありません。続けることで好きになるものです」

 

「新しい会社や組織で人間関係をうまくやっていこうと思ったら、始めは『相手をたてる』ことです」

 

「大切なのは話し上手ではなくて聞き上手。会話上手は『なるほど』『その通りですね』『よくわかります』といった肯定的な相槌をふんだんに行う」

 

「忘れっぽくなったら必ずメモする習慣をつける」

 

「何をするにも、自分のことは自分でやる」「妻の行動に干渉しない」

 

「人生は楽しんだもん勝ち。自分の可能な範囲で積極的に楽しいことを見つけよう」

 

(感想)

弘兼憲史という人は、やはり苦労人なのだ。サラリーマン生活は3年半しかなく、あとは筆一本で生きてきたから厳しい目で人生を見つめている。

私のように一流大学を出て、一流会社に勤務し、しかし出世もせずモヤモヤとした気持ちで会社人生を送った人間には、弘兼の言葉は耳に痛い。

せめて定年後の生活では、自分の心の声に忠実に生きたいと教えられた。