ナイジェリアより帰任‐人生を前向きに生きる | フィリピン良いとこ、一度はおいで ~不良ジジイのフィリピン日記~

フィリピン良いとこ、一度はおいで ~不良ジジイのフィリピン日記~

フィリピンは住めば住むほど人生気楽になるよ、まずは僕の話を聞いてから一度遊びにいらっしゃい。

僕はナイジェリアで仕事を3年間やってきたがその間に若い同僚がマラリアで亡くなり、また先輩もマラリアが原因で肝臓を悪くして帰らぬ人となった。アビジャン駐在の日本大使もマラリアで倒れたのを見て来て、アフリカ駐在が如何に厳しい物かを実感した。

僕は‘人間は環境の動物で何処でも馴染んでくる’と書いたが、それでもストレス、プレッシャーに晒され続けていると誰でもが知らない内に短命と成ると言う冷徹な現実にも目を向けなければならない事を知った。

駐在3年後に帰任の辞令を受け取って帰国した時には僕の明るさは可なり失われていた。東京本社での多忙な生活に戻ったが、どのような事を言われてもアフリカには二度と戻りたくなくなっていた。

英国人や米国人も数多くナイジェリアに駐在していた。お互いにある程度親しくなってくると、ナイジェリアの話になり、ナイジェリアへの不満が一気に噴出して、いつもさんざん悪口を言ったものだ。

彼等が帰任する時いつもこうして帰国するのだと僕に話してくれた。本国への帰任者は帰国便のタラップを上がる時に思いっきり地面につばを吐きつけて‘この野郎、二度とこんな国の土は踏まねーぞ’と心の中で叫ぶそうだ。

僕は此の言葉に納得した、僕みたいに環境に慣れる男でも最後まで凄いストレスに晒されていて限界に近い状態で帰国したからだ。

ナイジェリアの駐在員の寮で有るが、セキュリティ含めて徹底的な安全を図っている。それでも強盗団にいつ襲われるか分らない恐怖の中で暮らしていたのだ。

僕の部屋にはバストイレが付いていて大きな冷蔵庫まであった。見た目は快適で有ったが全ての窓にはがっしりとした鉄格子がはめられていた。この鉄格子は窓枠に深く埋め込まれていて、絶対に抜けない構造と成っている。また寮生の寝室は全て2階に有って、階段の下には分厚い鉄の扉が付いており内側に頑丈な錠前がつけられているのだ。従って万が一強盗団が階下に踏み込んでも2階に侵入できないような構造と成っている。

このように説明するとそれなら安全だと一般的には思うだろう。然し住人からするなら牢獄に入れられているようなものである。もし火事が起きたら絶対に逃げられない。

僕は火事になったらどうするかを考えた。階下より脱出する時間は如何見ても無い、部屋の全ての窓はびくともしない鉄格子と成って居る、如何見たってバーベキューと成る以外ないと気が付くだけだ。こんな所で3年間も寝起きしていたのだ、ストレスを感じなかったら人間と呼べないような状況である。

他社の駐在員も全て同じような状況で有った。或る日、協力会社の駐在員寮が強盗団に襲われた、寝室は2階で有ったので安全で有ったが運が悪い事に一人が強盗団に踏み込まれた時まだ階下で飲んでいたのだ、他の駐在員たちは階下の様子がおかしいので直ちに二階に通じる鉄の扉をロックした。

強盗団は残された一人を袋叩きにして、血みどろになった駐在員を階段下に引きずり出し‘おい、扉を開けろ、開けねーとこいつはあの世行きだ’と脅してきた。開けたら最後で有る、階上にいる全員から有り金をかき集めて格子戸より差し出して強盗団に何とかお引き取り願った。袋叩きに遭った駐在員は何とか一命を取り留めたが即刻帰国となった。

要するにナイジェリアはかくも危険な所だったのだ、僕が一人きりでナイジェリアの各地を歩きまわってこう言った目に合わなかったのは奇跡に近い事なのだ。

僕は、ナイジェリアに駐在を始めた頃から、自分の人生を前向きにしかも良い事ばかりを頭に描いて行動するようになった。

聖書に‘汝思うが故に汝有り’と言う言葉が有る。

僕は此の言葉を、人間は自分が思った通りに成る、即ち‘良い事を考えればよい事が起こる、悪い事を考えれば悪い事が起こる’と確信したのだ。そこでいつも安全であると思って此の安全を下さった神への感謝を捧げて旅に出た。

僕のやり方は‘旅を安全にして下さい’と祈るのではなく既に‘安全な旅を与えて頂いた’と解釈して神への感謝を捧げて旅に出た訳だ。この祈りを捧げて旅行する事で自分は安全なのだと納得させていた。

僕は或る日何気なしに人間の人生が長いのか短いのかと考えた。人生80年の時代だ、‘思ったより長いな’と思った。その内に宇宙の事を考え始めた、‘地球が創世して46億年か’とぼんやり考えていたんだ。ふと思った、もし地球が今一年目だったら100歳の人間は何秒くらいの命なんだろうと。バカバカしい限りだが計算したら約0.7秒で有った。

僕は暫く考え込んだ、宇宙の年月を考えたら感覚的には人間の命なんてのは何万分の1秒にもならないのだなと。人間はまたたくひまもないぐらいの短い期間を生かされているのだと悟ったような気分に包まれた。不思議な一瞬だったが、今此の時でもこの気持が続いている。

僕は以来いつも‘前向きに、前向きに、そして思いっきり素晴らしい人生を’と自分に言い聞かせている。

ナイジェリアから帰国した僕は使い物にならないくらいげっそりしていたんだ。或る日そんな僕を見て専務が‘少し休養しろ’と言ってくれた。専務の言葉で僕は東南アジアへのリハビリ旅行に出る事になった。此の旅行がその後の僕の人生を変え、マニラで永住する事を決意させる動機となった。


次回からはマニラの駐在記及び現在までの事を書いてみたい。




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