私は東宝特撮映画はだいたいどれもおもしろいと思っていますが、昭和に製作された作品の中では本多猪四郎さんが監督、円谷英二さんが特技監督の作品が一番と思っていました。
しかし最近になって思うのは福田純さんと中野昭慶さんのタッグの作品もまた味があるんですね。
とりわけ特撮シーンに関しては円谷作品のような視界に溶け込むような繊細なミニチュアやメカニックの造形はもちろん素晴らしいのですが、中野作品に登場する、よりコミカルなメカニックもそれはそれで好きだったりします。
この辺りはゴジラ作品で言えば福田・中野タッグの『ゴジラ対メカゴジラ』とその続編で本多・円谷タッグで製作された『メカゴジラの逆襲』を観たときに見比べやすいかと思います。
そして福田・中野タッグの作品でゴジラ以外の特撮作品で私が好きになってしまった作品が『惑星大戦争』です。
『惑星大戦争』(1977年 監督:福田純 特技監督:中野昭慶 出演:森田健作、浅野ゆう子、沖雅也、池部良 他)
【あらすじ】――1988年、世界各地でUFO騒動と大規模な通信障害が発生し、国連宇宙局・日本支部では宇宙ステーション「テラ」との通信が途絶えていた。
一方、建造が中止されていた宇宙防衛艦「轟天」の建造を再開するべく、三好孝次(森田健作)は日本に帰国し、宇宙工学博士の滝川正人(池部良)を説得する。
テラとの通信が回復したのも束の間、何者かにより襲撃されテラは爆発し、再び通信は途絶える。
世界各地が謎のUFOによる襲撃を受け、国防軍の要請により轟天の建造が再開され乗組員が編成される。――
☆海底軍艦から宇宙戦艦になった轟天
本多・円谷タッグの『海底軍艦』は過去に記事に書きましたが、あちらは世界征服を企むムウ帝国に、日本海軍の兵士たちが立ち向かう姿が勇ましい作品です。
その劇中で活躍する轟天号が強すぎて愛おしいメカニックなんです。
その作品が製作された60年代から70年代に移り変わり、地球を侵略する宇宙からの脅威を相手に防衛軍が戦うSF映画として製作されたのが『惑星大戦争』なのですが、ここで登場するのは轟天号ではなく轟天という名の宇宙戦艦です。
艦首にドリルを設けたその基本的な見た目は維持していますが、全体としてよりハイテクな雰囲気になっています。
地球の中での国どうしの戦いではなく、地球外からの侵略者と戦うところが規模の発展を感じさせられます。
本作と同じ年にアメリカでは『スター・ウォーズ』が公開され、日本でも翌年に公開を控えていた時代にこのような宇宙SFの特撮映画が作られたのだと思うとおもしろいですね。
偶然か、艦内の白を基調としたインテリアが妙に『スター・ウォーズ』と似た雰囲気です。
そんな宇宙戦艦・轟天の戦う姿がまた『海底軍艦』の轟天号に負けず愛おしいですね。
地球のあちこちの都市を攻撃する異星人のUFOを航空爆雷で一掃するシーンが気持ちいいです。
★観る目的の半分は浅野ゆう子さん
本作のもう一つの見どころはやっぱり国連宇宙局日本支部員・滝川ジュン役の浅野ゆう子さんですね。
轟天を開発した宇宙工学博士・滝川正人の娘で、国防軍空挺隊員・冬木和夫の婚約者という設定の女性を演じているのですが、美人です!
『ゴジラ対メカゴジラ』で出演していた田島令子さんと並んで美人だと私は思います。
平成や令和になってから活躍している若手の女優にも魅力的な人はいますが、それとは違う、なんか見ていて心が落ち着く昭和の美人女優さんです。
しかし、その浅野ゆう子さんが演じるジュンが恒星ヨミ第三惑星人の捕虜になった際に何故かセクシーなボンテージファッションになっているのが見ていてドキドキしてしまいます。
見事な美脚で、本作を観る目的は半分がこのシーンと言っても過言ではありません。
捕虜になってこんな格好になったのは宇宙人側の趣味か?
いつ着替えたのか?
想像力が沸きます。
なんにせよ、子どもがたくさん観ているであろう特撮映画にあるまじきサービスシーンです。
このボンテージファッションの衣装は浅野ゆう子さん本人の私物だというのだから、これまたけしからん!(いや許す!)
『スター・ウォーズ』ではレイア姫を演じたキャリー・フィッシャーの露出の多い衣装が印象的でしたが、それに負けずセクシーだと私は思います。
☆個性的すぎる宇宙人の描写
本作に登場する、地球を侵略しにくる宇宙人の名前が「恒星ヨミ第三惑星人」とあります。
恒星ヨミというおそらく太陽に相当する星があり、その周りで公転している天体の1つなのでしょう。
それら天体の中で恒星ヨミから3番目に位置するということですね。
『ゴジラ対メカゴジラ』に登場するブラックホール第三惑星人と同じような発想です。
この長ったらしい呼び名、私はけっこう好きです。
私たち地球人の場合は太陽系第三惑星人ということになりますね。
そんな呼び方する人いないでしょうけど。
さてその恒星ヨミ第三惑星人の服装や彼らの乗っている宇宙船のデザインなんですが、これらがまるで古代のヨーロッパ風なのが個性的です。
宇宙船を初めて目撃した宇宙ステーションの乗組員が「ローマ船だ」と叫ぶシーンがある通り、ローマ帝国をイメージしているようです。
宇宙船内部の装飾もやはりそういうデザインで、銀河系をあちこち移動する技術を持った宇宙人の船なのにハイテクな感じがあまりしません。
攻撃してくるUFOのデザインやレーザービームを駆使した攻撃手段は普通にハイテクな宇宙人っぽく、その対比がおもしろいです。
それにしてもみんな顔が青い!
そんな恒星ヨミ第三惑星人の国である銀河帝国の司令官ヘルを演じているのは、『ゴジラ対メカゴジラ』『メカゴジラの逆襲』でブラックホール第三惑星人の司令官を演じていた睦五朗さんなんですね!
青いメイクでしかも兜でほとんど顔が隠れているものの、雰囲気でなんとなく感じていましたが、後で調べたらやっぱりあの俳優さんだとわかりました。
しかし何よりも存在感があるのはジュンが捕虜にされたときに横にいたあの毛むくじゃらの怪物です。
チューバッカとの酷似を指摘されているそうだが、そこまで似ているでしょうか?!
言葉は話さないようですが、レーザーを吸収する切れ味鋭い斧で攻撃してくる、なかなか手強い相手です。
銀河帝国はけっこう多種多様な種族がいるのか?
恒星ヨミ第三惑星人はどこからこのような獣を連れてきたのか?
いろいろ想像してしまいます。
いずれにしても美女と野獣効果で、ジュンがより美しく見えるのに一役買っています。
最終的にはやっぱり浅野ゆう子さんかい!





