『ギミー・ヘブン』──江口洋介と宮崎あおいによる悲しくも美しい余韻 | Blu-ray DVD Amazonビデオ 劇場最新作より、映画の感想・レビュー!

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ってな具合に再生しながら思わず音量を上げちゃいました。

なにせ始めの方から台詞が聞こえなくて、なに言ってるのかわからない!

まあ、こういうのは今回取りあげる本作に限らず、邦画にはよくあることなんですが…

その本題に入る前に──

皆さんは共感覚をご存知ですか?

これは、ある刺激に対して通常の感覚とは別に異なる感覚を持つことを指す言葉です。

例えば数字や音に色を感じたり、「この香りは丸い」といった具合に匂いに形を感じたりする人が希にいます。

実は私も小さい頃から数字に色を感じます。

最初に音量の数字を書きましたが、そこに付けた色は、私がそれぞれその数字に感じる色です。

(数字に色を感じる人が皆それぞれ、その数字に同じ色を感じているわけではありません。)

それにしても、今回取りあげるこの作品の人物が持つ共感覚はそれどころのレベルではありません。

『ギミー・ヘブン』(2006年 監督:松浦徹 出演:江口洋介、安藤政信、宮崎あおい、石田ゆり子、北見敏之、松田龍平、鳥肌実 他)


【あらすじ】──共感覚を持ち、誰にも理解されない孤独を感じていた麻里(宮崎あおい)。

ある日、彼女の養父が殺され、現場には謎のマークが残されていた。

麻里は幼少期に両親を亡くし、彼女を受け入れてきた養父母も次々と不審死をとげている。

一方、共感覚を持っていることを胸にしまい、ヤクザの下請けで盗撮サイトを運営する葉山新介(江口洋介)と相棒の野原貴史(安藤政信)。

彼らのサイトのカメラを設置している部屋の女性が失踪し、そこには謎のマークが残されていた。

それは麻里の養父の殺人現場と同じマークであった。──



☆やっぱカッコいい江口洋介

テレビドラマで演じる江口洋介はアツいイメージがありますが、やはり映画でもアツいですね。


しかし、その彼がサイコサスペンス映画なんぞに出演すると、ただアツいだけでないカルトな映え方をするんです。


テレビ向けとは違う、映画の中でもどちらかといえば一般の大衆にウケるのとは違うジャンルでこそ魅力が発揮されているというようなことは、以前の『アナザヘヴン』や『脳男』についてのブログでも述べました。

本作『ギミー・ヘブン』では、数字に色を感じたり、匂いに触感を感じたりというだけでなく、ある形を見るとそこに言葉を感じるという、これまたスゴい共感覚を持つ主人公の役です。

そしてデザイナーをする傍ら、ヤクザの下請けで盗撮サイトを運営しているという設定がまた風変わりな役柄です。

画面が彼に切り替わるたびにタバコをスパスパ吸っていて、眉間にシワを寄せながら周囲に理解されない感覚を語る様。

ここが、アツいだけではない内面的な苦悩を感じさせる人物の描写が、江口洋介の演技で表現されてる良い例です!

加えて、得体の知れない何者かに翻弄され苦悩しながら戦うクタクタな感じもまた彼の魅力です。

だからこそ(ここはカッコいいかどうかは別にして)ロングヘアーやボサボサの髪型が合ってるのだと思います。

で、ハイ、やっぱり本作の劇中は眉間にシワを寄せていないときはないんじゃないかという表情。

これが違う方向で活かされたのが『孤狼の血』でのヤクザの役だったのでしょう。


★台詞さえ聞き取れたらわかりやすいストーリー

正直、本作は1回目再生させて観て、意味がわからなくて途中で観るのを止めました。

そして2回目、最後まで観て概要はつかめたのですが、まだよくわからない部分もあり、3回観ちゃいました。

そうまでなったのは、なにぶんにも冒頭からの北見敏之や石田ゆり子の台詞がよく聞こえないことにあります。

邦画にはよくあることなのですが、そのあとすぐに登場する江口洋介や安藤政信、鳥肌実の台詞はだいたいちゃんと聞き取れるんですよね。




もうこの3人(+宮崎あおい)の台詞が聞けたら良いかというとそうでもなく…

やはり松田龍平が演じる「ピカソ」を名乗る人物が結局何者なのかを知るには、事件を捜査する刑事役の石田ゆり子の台詞も重要だったりします。



そうやって音量上げながら3回目観てようやく内容をじっくりとつかめたかなと言ったところです。

わかってしまえばストーリー自体はシンプルなものです。

それでも今いったい何がどうなったの?ってな演出もあって、ある意味風変わりな映画です。

あとはやはり江口洋介、安藤政信、鳥肌実のやり取りが所々おかしくて笑えたり、要所要所のストーリーを理解するために重要な箇所さえつかめば「ああ、そういうことか」と納得できておもしろい作品です。

残念なのは、共感覚という興味深いテーマを持ち出しつつ、最終的にはとある目的で人を操って殺していく「ピカソ」の動向や正体がストーリーの軸であって、共感覚そのものの扱いが浅いところです。




☆ラストの感動のためにこそある"共感覚"というテーマ

というわけで、テーマとして扱われている"共感覚"が作品のどの部分で活きているのかと言えば、それは江口洋介と宮崎あおいによるラストシーンでしょう。


なるほど!最後にはそういうことが言いたかったのか!

と、なるにはなるのですが、予想ができそうと言えばできそうでもあります。

真にすばらしいのは、切なく悲しいラストであるところです。

このまま意味がわからなくてホントにつまらなければそれまでだったでしょう。

しかし、人物たちの台詞のやり取りは軽やかで、淡々と話が進んでいく作品なのに、ラストまで観た後に何とも言えない余韻があります。


私が3回繰り返して観てしまった本当の理由は実はこういうところにもあります。

にしても!石田ゆり子がたたずむ姿を映したあのアングルで、ウソ!やっぱりそうなるわけ?

と思わせつつ、そこからのあのエンディングの映像。

あれは観るものに解釈が委ねられているということなのでしょうか。

やはり1つひとつのシーンの意味が所々はっきりしない作品です。


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