『ヒトラーの忘れもの』──忘れてはならない戦後史 | Blu-ray DVD Amazonビデオ 劇場最新作より、映画の感想・レビュー!

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第二次大戦時代のドイツやヒトラーをテーマにした映画、また戦後にナチスの幹部を追い詰めた歴史の映画は新旧問わずよく見かけます。

端っからナチスを目の敵にしたような映画ともなれば、『イングロリアス・バスターズ』のように、ややパロディがかった作品まで──。

そんな中で、私が劇場公開のときからちょっと気になっていた作品がこちらです。

『ヒトラーの忘れもの』(2015年 監督・脚本:マーチン・サントフリート 出演:ローランド・ムーラー、ミケル・ボー・フォルスゴー、ルイス・ホフマン 他)



【あらすじ】──第二次世界大戦終結後のデンマークでは、ドイツ軍が埋めた地雷の撤去のために、捕虜であるドイツの少年兵たちが投入された。

ナチスドイツに強い憎しみを抱くラスムスン軍曹(ローランド・ムーラー)は、少年兵たちに地雷撤去作業の厳格な指揮を行う。

しかし、かつては憎しみの対象であった彼らとの距離が縮まる中で、軍曹は苦悩する。──


☆半数が死傷した終戦後の地雷撤去の真実

2000人以上のドイツ兵がデンマークで地雷撤去を強要され、そのうち死亡したり重傷を負った者は約半数と言われています。

本作からは、そんな史実を基にした作品であるがゆえの痛々しさが伝わります。





地雷撤去の経験者でもない少年兵たちをまずは訓練させ、本物の地雷を使っての実践的な訓練にさしかかるところからの緊張感。



観ているこちらはハラハラさせられてたまりません!

ナチスに苦しめられてきた国の者たちにとってはさぞかし、ナチスが憎かったであろう。

それでも、その憎しみというのが人間たちにこうも残酷な行動に走らせるのだということを思い知らされます。





海岸に埋められた数万もの地雷は少年兵たちの自国が埋めた物。

それだけの理由で命がけの作業を強いられる様は“冷徹”の一言です。

砂浜を這いながら慎重に掘り起こしては、信管を解除するシーンを見ているうちに、普通に地面を歩けることの尊さが頭の中で沸き上がってきます。



いつ誰が失敗して犠牲になるのか、恐ろしくて正視できない緊張が、静かな海岸を背景に画面を覆いつくします。


★軍曹と少年兵たちとの悲しくも美しい心の変化

互いに憎しみの対象でしかなかったはずのデンマーク軍の軍曹とドイツ軍の少年兵たち。

しかし、これだけ行動をともにするとやはり情がうつるものなのでしょう。

ラスムスン軍曹は少年たちの言葉に耳を傾けるようになります。

憎しみの思いを叩きつけんばかりに地雷撤去を指揮していたはずの軍曹の目が、物語が進んでいく中で変わっていく様子がよく伺えます。

「撤去が終われば国に返す約束だ」

厳格な軍曹も軍の中では従属する側でしかありません。

上からの命令と少年たちを守りたいという感情の揺れが、少年たちと絆が深まるほど悲しく映ります。

そこには“敵国どうし”ではなく、純粋な“人間と人間”という構図ができあがり、地雷の恐怖を映し出した前半とは違った印象をいつの間にか観る者に与えています。

ただの残酷な戦史ドラマではない心温まる人間ドラマを、過酷な運命に翻弄された少年兵たちを通して見ることができるこの作品。

鑑賞後には決して悪い後味を残すことはありません。


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