“まるで日本の古き怪談” 悪党どもが『えじき』になるホラー映画 | Blu-ray DVD Amazonビデオ 劇場最新作より、映画の感想・レビュー!

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このジャケットのインパクトにあえて騙されて観ました。

いや!少しばかりの期待も込めつつ観ました。

そして二度だまされました!

1つは、正直言って眠くなりそうな展開。

2つ目は、それでもジワりときて後に残る恐怖!

『えじき』(2004年 監督:アレックス・ターナー 出演:ヘンリー・トーマス、ニッキー・エイコックス、イザイア・ワシントン、マイケル・シャノン、パトリック・フュジット 他)



このホラー映画、どれくらいの人が知っているのでしょうか。

メジャーな作品ではないにしても、そこまでB級な作品でもないのですが──

なんせネットで検索しても作品についてあまり詳しく述べた公式的な情報サイトはパッと見あたりません。。

実際に観た人の個々のブログのほうが詳しく述べられているくらいです。

そんなブログの中には、この作品についてすごく鋭い視点で考察している物もあります。

よって今さら私がここでこの作品について述べる意義はさほど大きくないでしょう。

しかし、この作品がもっと多くの人の目に触れても良いのではと思い、そしてその機会をつくる足しになればと思い、ブログにとりあげてみました。

【あらすじ】──南北戦争時代。

銀行から現金を奪った強盗団はメキシコへの逃亡を企てていた。

途中でとある屋敷へ逃げ込んで泊まろうと向かう一味。



たどり着いたそこは、鬱蒼と生い茂る草むらの先にたたずむ不気味な家だった。

その夜、彼らに得体の知れぬ怪奇現象が襲いかかる。──


☆悪党どもが“えじき”になるという珍しい設定がなぜかコワい!

舞台は南北戦争時代のアメリカ。

人種差別も酷かった荒んだ時代のアメリカを背景に、強盗一味が思わぬ恐怖を味わい犠牲になるという物語です。

大抵のホラー映画というと、何か問題を抱えて引っ越してきた一家や学生、たまたま訪れた旅人が主人公だったりします。

しかしこの作品に登場する主人公たちは、「ついさっき悪事を働いてきましたよ」という悪党どもです。

同情、感傷の余地もない者たちが恐ろしい目にあうという意味ではザまぁ見ろ!といったところです。

こういう設定になぜかゾッとさせられるのは、“自らが犯した罪が災いとなって返ってくる”と言わんばかりの古典的な道徳観念に触れる構図だからでしょうか。

それまでのホラー映画で知る限り見たことないこの設定は、思わぬ恐怖演出の助長になっています。


★“まるで日本のホラー”を通り越して“まるで日本の怪談”

ゾンビや怪物、殺人鬼を中心に過激なスプラッター描写で見せることが多いアメリカのホラー映画ですが、最近はけっこう日本のホラーに近い雰囲気の作品も多いように思えます。

本作はというと、舗装された道がなく埃っぽい、いかにも昔のアメリカらしい景色が冒頭から画面に映ります。

にもかかわらず画面から伝わるなんとも言えない重苦しい~湿度感!

とりわけ例の屋敷に入り込んでからの空気。

『死霊のはらわた』に登場する小屋もここまではなかったかなと思います。

手前の見える部分と奥手の暗闇というカメラワークは『呪怨』のようにも思えます。



しかしそんな日本的なホラー演出という説明に留まらないのは、やはり先ほどからも述べてる、南北戦争という古い時代背景にあります。

古くからある日本の怪談

これではないでしょうか?

南北戦争の時代の話しというのはアメリカで言えば十分に“昔話的”な世界観として成立します。

移動手段は馬。

高層ビルやアスファルトのような現代的な景観はいっさいなし。

そこに軽やかなユーモア表現も冒頭から既になし。

重苦しい~湿度感はここからきているのかもしれません。

更に登場する屋敷の内部は、洋館でありながらどこか日本の古い建物にも似た暗さを感じさせられます。

天井や壁のノッとのしかかるような影──。

明るい日常からの恐怖への暗転ではなく、屋敷のシーンも含め最初から既に暗くてコワい雰囲気でくる。

あの世から何かが襲ってくるというよりは、まるで屋敷そのものが“あの世とこの世の境目なき空間”と化しているようです。

この境目の曖昧さがまた、日本の古くからの怪談を思わせるところです。


☆残虐さはないけど、お粗末な演出

この映画、よくあるスプラッターホラーのような残虐シーンはこれといってありません。

しかし、冒頭で一味が銀行から現金を奪うために、西部劇なみに撃ち殺すわ、そして逃亡しながらの銃撃で無関係な子どもが流れ弾で死ぬわと、やらかしてくれます。

屋敷のシーンでは盗んだ現金が消え、真っ先に仲間の1人である黒人を疑うという、この時代背景らしい人種差別の描写も見受けられます。

どうでもいいようで、なんだかホラー映画という枠とは別の意味での粗末で荒んだ空気がある作品ですね。

しっかりホラーと関係ある枠での表現としては、小屋で休ませた馬がバラバラにされてしまうというシーン。

彼ら動物にはなんの罪もないのにかわいそうです。

移動の足として使っていた大切なモノまで殺られてしまうというところは確かにジワりと、人物たちの精神を蝕む怖さがあります。

生きてる人間の力が及ばぬ怪奇的な力の前では有無も言わさぬと言わんばかりの仕打ち。

そうして目の前で無関係な動物まで無惨な屍をさらすことになるとは…。

ここに住みつく悪霊たちもまたお粗末なんでしょう。

余談ですがこういう表現も、具体例を出すのが難しいのですが、どことなく“日本の怪談”的なテイストを感じます。


──さて、2004年とかなり前に公開されたこのホラー映画。

内容はハッキリ言って地味です!

しかし、なんともゾワゾワッと後にくるような感覚があります。

よくよく吟味すればコワッとなる描き方は評価に値する作品です。

皮を剥がれた人間の死体や、なんなんだありゃ?!となるような生き物が登場し、おかしな余韻と疑問を残すようなラスト。



そう、そしてやはり悪党が得体の知れない恐怖を味わい、殺されていくというホラー映画って、もっと他でもパクってもいい手法だと思います。


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