【→同内容の記事をFC2にてリンク付きのブログとして公開しています】
「霊能力を身に付けさせるため」
などと言って、女子高生に暴行を加えた母親と自称霊能力者を逮捕──
時々、ニュースで目や耳にする、オカルトな信者の過剰な行動という類いの事件です。
幽霊や悪魔、神を信じるか否かは人それぞれあるし、それらを信じる人すべてがそこまで狂気かと言えば決してそうではありません。
では、実話を基にして作られた"ホラーにして法廷サスペンス"のこの映画をあなたはどうとらえるでしょうか?
『エミリー・ローズ』(2005年 監督:スコット・デリクソン 出演:ジェニファー・カーペンター、ローラ・リニー、トム・ウィルキンソン 他)
【あらすじ】──大学に進学し、安定した学生生活を送っていた19歳のエミリー・ローズ(ジェニファー・カーペンター)。
しかしある晩、大学寮で眠っていたところを奇妙な現象に襲われる。
幻覚や幻聴が起きるようになった彼女は医学的な治療によっても治る兆しがなく、ムーア神父(トム・ウィルキンソン)に助けを求める。
症状の原因は「悪魔憑き」として、悪魔払いを試みるムーア神父であったが、途中でエミリーは死亡する。
死亡の原因は神父による過失であるとして、裁判で裁かれることになったムーア神父。
弁護士のエリン・ブルナー(ローラ・リニー)は彼を救うべく、事件を担当することになるが…。──
実話が基に、悪魔に憑かれた少女を神父が助けるところだけ聞くと『エクソシスト』のような映画を思い浮かべるかもしれませんが、ストーリーの軸はほとんど裁判のシーンです。
TSUTAYAには「ホラー」の棚に置かれていたのですが、実のところそこまで怖さは期待しないほうがいいでしょう。
どちらかというと『ア・フュー・グッドメン』のようなガッツリ法廷サスペンスとして観られるところが大きいです。
とはいえ興味深いのが、その裁判の争点。
「死亡の原因は神父の過失なのか、それとも本当に悪魔の憑依なのか」
こんなことを裁判で真剣に争われること自体がすごい話しなわけですが、それが実際にあったことなのです。
キリスト教信者が多い欧米諸国ならともかく、無神論者が大半を占める日本であれば、バカバカしいの一言。
世間の目は、ほぼ確実に神父の頭がおかしいに決まってると見るでしょう。
しかし少なくともこの劇中で見る限り神父は誠実で、とても悪意があったとは思えません。
悪魔の存在を否定する検察側と、それに対抗するブルナー弁護士の両方の言い分それぞれにうなずけるものがあります。
いや、ブルナー自身も決して「悪魔のせいだ」なんて声を大にして言うつもりではないのでしょうけど…。
ここは飽くまで弁護士としての責務を果たそうと奔走しているにすぎません。
さてこの裁判、どう見たって弁護側が不利です。
ブルナー弁護士が以前に取り扱った事件の犯人が再犯というニュースを目にし、更に彼女の精神を追い詰めます。
それでも神父を無罪にするべく、あれやこれやと捜査を続ける彼女を心の中で応援したくなるのは、映画として描かれているからでしょう。
現実ならこうはいきません。
確かに世の中では未だ科学では説明しがたい現象は存在するもの。
劇中では彼女の前でも怪奇現象と思わせる現象が起きますが、これは映画ならではの脚色でしょうか。
前代未聞であろう争点。
それでも答えを出さなくてはいけない法廷という場。
「罪」というものの概念を改めて考えさせられるラストの判決にあなたは納得できるでしょうか。
【→FC2ブログもよろしく!】
【→ツイッターにて映画についてつぶやいています!】