写真家が手掛ける映画 『フローズン・タイム』と『ヘルタースケルター』 | Blu-ray DVD Amazonビデオ 劇場最新作より、映画の感想・レビュー!

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静止したものを写したり描いたりすれば、それらは写真や絵画という芸術になる。

それを動画にし、ストーリーを吹き込んだ時間芸術なら映画になる。

少し強引な解釈か。

その解釈を体現したような作品─すなわち、写真家が手掛けた作品──。

そんな2作品を紹介します。


まずはこちら。



この意味深げなジャケットで思わず手にした人はどれくらいいるでしょうか?

前から取り上げようとしながらすっかり忘れていた作品。

フローズン・タイム

──失恋したショックから不眠症になった美大生のベンが、深夜の時間を活用して、スーパーマーケットの夜間スタッフのバイトを始める。

不眠症が限界に達したある日、彼の周囲の時間が止まっていく─。

やはり男性なら時間が止まった世界ではそれなりの下心が沸くでしょうか?

女性の服を脱がすシーンは妄想を体現しており、ジャケット期待どおりの展開です。

しかし、画家志望の彼の行動はさすが。

脱がした女性の裸体をデッサンし始めます。

芸術的な美性的な下心のスレスレを行った悩ましい浮遊感の世界へ、観るものをトリップさせてくれます(男性目線ですいません)。

イタズラばかりするコンビ、ブルース・リーおたく、時間恐怖症の女の子、そして傲慢な店長がいい具合に演出を盛り上げてくれ、妙に憎めない。

時間が止まるという非現実的な現象と相まって、スーパーマーケットという日常的な空間自体がアートで美しく描かれています。

途中で話は主人公ベンの幼少時代に遡ります。

──彼が女性の裸体へ興味を持ち、画家を目指すようになったいきさつ─。

この内容がまた観ているこちらまで悩ましい気持ちにさせられ、感情移入させられます。

また男性目線で失礼…、だってねぇ、男の子ってそっちに関心持つの早いから…。

まだ性への知識がない年の頃に──いや知識がないからこそ──こっそりとヌード雑誌を見てしまったときのあの"ドキドキ感…"。

ましてや本物の他人の女性の裸なんか見てしまったらどうなっちゃうんだろう…。

そう、いくら芸術的趣向と言っても、ヌード画というのは結局、男性の"女性の裸体"への関心から来てる物なんだなと──おそらくはやっぱりそうなんだなと──感じさせられます。

そういう目で見てはいけない…いや、芸術なんだからじっくり見ていても誰もとがめない…そんな言い訳のスキをついてこっそりと見る。

狭間にある倒錯的な悩ましさ

子どもの頃の性への関心と、ある程度大人になってからの下心の両方を、芸術というオブラートに包みながら見事に射抜かれた気分にさせられます。

この作品に本当にセクシュアルな絡みのシーンまで入れてしまうと、場合によってはレンタルショップでいう、"エロティック"のコーナーに置かれるんでしょう。

しかし、監督がショーン・エリスというフォトグラファーだけに、最後は(いや最初からか…)やはりアート映画です。

フォトグラファーならではの光の使い方、裸体も含めた被写体への敬意なるものがしっかりと伝わってくる気がします。





脚本もショーン・エリスによるもので、その後は長編2作目『ブロークン』など、他の作品でもメガホンをとっています。

彼はもうただの写真家ではなく映画界の人間といってもいいでしょう。


そして今回の2つ目。

フォトグラファーが監督を務めた映画と言えば日本にも比較的、記憶に新しい作品がありました。

蜷川実花監督

ヘルタースケルター



劇場公開前当時の「一肌脱ぎます」発言どおり、沢尻エリカが裸体を露骨に披露しているだけでなく、窪塚洋介とのアツい絡みのシーンも見られます。
 
ただ、こちらものエロティック映画コーナーに置かれる内容ではないのはもちろんのこと。

話の軸となっているのは、全身整形の女優が後遺症に苦しむ様、芸能界の裏の恐い世界です。

それでいてドロドロしているだけでなく、女性フォトグラファーならではの"かわいらしさ"ともとれるポップでキラキラした映像世界が画面で見受けられます。

派手でカラフルな画面は、正に蜷川実花さんのフォト作品を動画にしたような感覚で、あくまでアーティスティックです。

そのおかげか、沢尻エリカの露骨なヌードや濃厚な絡みのシーンすら不思議とイヤしくありません。

沢尻エリカが演じる主人公、りりこが服用しているピルや、彼女が見る幻覚までもが、フォトグラファーである蜷川実花の世界にある装飾としての役割と化しています。



脚本は蜷川実花によるものではないものの、"彼女の写真の特徴である極彩色"によって、実力派女優である沢尻エリカの演技をはじめとした痛快な人物像やストーリーを、"視覚的刺激"で彩っています。


フォトグラファーが映画界に参入したら…。

必ずしも良いものができるとは限らない。

どうしても映像重視で脚本が軽くなることもあるでしょうし、評価もそれぞれ分かれるところでしょう。

しかしアート重視だからこその、刺激的な1コマひとコマで楽しませてくれる枠組みとして、アリなのではと思います。

なぜなら音楽とは違う──当たり前のことながら映画は"観せる時間芸術"なのだから。


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