【前回までのあらすじ】


 真の実力を知らしめるために!ファミコンへの愛情を証明するために!世紀の一大イベント「ファミ詣」のファミコン大会にエントリーしたアレックさん。
 まずは一次予選のスーパーマリオ、二次予選のボンバーマン2をたてつづけに撃破。そして三次予選のスペランカーにいたっては 堂々第1位の成績でクリアしてしまった!
 これによって、ベスト8に名を連ねると同時に 本戦への進出を決めたアレックさん。最後に真の栄光を掴むことができるのか・・・・・・果たして !?

(2/7付ブログ・第5話 『戦慄。 』参照)


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[ 第6話 ]


 ついに出揃った本戦進出者・ベスト8。ファミコン大会はここからが本当の勝負。



 ・・・準々決勝を目の前にして、ステージ上のアレックさんは思い返していた。これまでの道のりを。スーパーマリオ、ボンバーマン、スペランカー。どれもこれも すべてが完勝だった。
 最初80人だった参加者が いまでは8人。10倍の倍率。この高倍率競争をアレックさんは いとも簡単に勝ち上がってしまった。しかも 圧倒的な成績で。


 故にアレックさんは悟った。このままいくとアレックさんは・・・・・・本当に優勝してしまうかもしんない!ムキー!
 ジュルッ・・・・・・おっと ハナが垂れた。


 もちろん優勝は最初から狙っていた。でも日本中の猛者が集結するファミコン大会だ。いくら自信があるとか言っても、そう簡単にうまくいくはずはなかろう。なんやかんやつまずいてしまうもんだと思っていた。普通に考えれば 誰だってそう思う。


 しかし まったくつまずかない!つまずく気配もありゃしない!


 「井の中の蛙 大海を知らず」という言葉があるが、まさにそうなると思っていた。奈良という井戸では通用しても、東京という大海では通用しない。現実という壁にボヨ~ンと跳ね返されてしまうんだ。第1話の冒頭で熱い意気込みを見せていたくせに、実のところ 本音のホンネはそんな感じだったのだ。


 しかし つまずかない! しかし つまずかない !!


 まさか自分の力がこれほどまでにすごいとは。信じられん。修行から帰ってきた悟空みたいな気分だ。界王拳何倍でもできそうだ。
 アレックさんのファミコンさばきは全国レベルでも充分通用するということが、通用するどころか圧倒してしまうということが、もうこの時点でハッキリしたよ。
 そうか アレックさんは本当に優勝してしまうんだな。こんなにうまいのに優勝しなかったら逆に不自然だもんな。予選1位でステージに上がった瞬間はかなり恥ずかしかったけれど、もう覚悟は決まった。胸を張って優勝するとしよう。ドンと来い。


 たぶん優勝したら 司会のDJが、「いまの気持ちをヒトコト!」みたいな感じでマイクをフってくるんだろうな。なんて言おうかな。
 「このような大会に優勝できて光栄です!」って 爽やかに言おうか。
 それとも、「どいつもこいつも弱すぎるんだよ!」って 敢えて毒づいてみようか。
 いやいや それよりも、ここに集まってる皆さんのノリなら どんなこと言ったって盛り上がってくれそうだから、その場のアドリブでしゃべっちゃうのが一番いいかもしれないな。


 ・・・・・・そんなことまで考えていた。そのとき・・・!
 「準々決勝は ツインビー対決ーっ !! 」


 おー ビックリしたー !! ボーッとしてましたよ DJさーん。
 そっかー ツインビーかー。ツインビーはアレックさん持ってないし、やったこともあんまりないなー。どうせならグラディウスの方が良かったんだけど、でもまぁ・・・・・・勝てるだろ。


 ・・・ん?なんだと?ツインビーは持ってないし やったこともあまりない。にもかかわらず勝てるだと?なんだ そのあっけらかんとした自信は。気でもフれちまったのか アレックさん!しっかりしろ アレックさん!


 はっはっは、なに言ってんだ。気なんかフれてないさ。もうな、やったことあるとかないとか、得意だとか不得意だとか、そういう問題じゃないんだよ。
 これまでの戦い見てきてわかったろ。なんやかんや不安視しても、終わってみればすべて圧勝。ツインビーだって やればきっと勝っちゃうよ。アレックさんの実力は もう次元からして他とは違うんだよー!シャ~ッシャッシャ~ッ!



 優勝への確かな自信。しかし その過剰なまでの自信により、アレックさんの勝利への方程式は少しづつ崩れだしていた・・・・・・。

(つづく)