2012-04-04 13:45:31 の記事)

これまで、オウム真理教の事件の原因を解明して、オウム問題を解決し、
それを二度と繰り返さないようにするために、

「麻原とは、いったいどういった人物だったのか」を
科学的に分析することが必要不可欠である


という視点から、分析を行ってきましたが、今回がまとめとなります。

麻原の人格・欠点・能力を科学的に理解するために、
心理学の人格障害の中で、「誇大自己」「空想虚言」といった概念に
照らし合わせてみる試みです。

これまで、以下の記事を掲載しました。

1 オウム問題の解決のために必要な、麻原の人格分析

2 「空想虚言症」の特徴と、その特徴に符合する麻原

3 「誇大自己症候群」に基づく、麻原の人格分析 

4 「誇大自己症候群」の特質と麻原の言動の比較検討 その1
    同 その2
    同 その3  


◎麻原の妄想的な信仰を「誇大自己症候群」の一部として理解する

「誇大自己症候群」に基づいて考えると、
麻原は、青年期を過ぎても、等身大の自分を受け入れて、
社会における現実的な自分の活かし方を見つけて、
健全・建設的な自尊心をもって生きることができず、
繰り返し、「誇大妄想」に基づく挑戦をし続け、破綻を繰り返しながら、
最後に破滅した、ということができます。

子どものころから、大人になるまで、その「誇大な欲求」は絶えることなく、
むしろ、何かにつまずいて破綻するたびに、ますます大きくなって、
さらに大きな破綻をして、
そのたびに、違法行為の度合いも大きくなっていきました。

 具体的には、

① 人徳もなく生徒会長になろうとして落選し、

② 学力もなく「国立の医学部に入学し医者になる」とか、
 「東大の法学部に入学して総理大臣になる」と主張し失敗し、

③ 薬局を開いてからは、知り合いの医師を騙して、
 保険金の不正請求を犯して返還請求をされて事業が破綻し、

④ 高額な漢方薬を売りまくって、薬事法違反を犯して逮捕され、
 刑罰を受け(略式起訴)、

⑤ 宗教団体(オウム真理教)を開いてからは、
 民主的に政権をとろうと考えて、選挙に出て惨敗し、

⑥ その後は、教団武装化=軍事力によって、日本・世界の王になろうとして、

⑦ 95年をきっかけに、一連の事件が発覚して、破滅した、

 という経緯です。

こうして、彼は、最後まで、

「自分が、とてつもなく偉大な存在になる」

という欲求を持ち続けました。

そして、ヨーガ修行の道に入った段階で、麻原は、
その自分の願望を満たす存在を見つけます。

それは、麻原の内的世界に現れていた「神(特にシヴァ大神)」でした。


◎現実の先輩修行者たちには、反発・反抗し続ける

そして、「シヴァ大神」に「理想化された親のイマーゴ※」を
見いだした後の彼は、現実の世界の先輩修行者について、
それを本当の意味での尊重・尊敬の対象とすることはなく、
次々と否定していきました。

※「理想化された親のイマーゴ」とは
 人間が、自己愛が発達・成熟していく過程において、発達させる心理学の概念の一つで、
 自分を支配し、願望をかなえてくれる「神」のような親の理想像のことを指します。
 しかし、何か不幸な事情で、親や周囲の大人が、「理想化されたイマーゴ」としての役割を
 果たせず、本人の期待をひどく裏切ったり、本人に対して支配的すぎたりすると、
 本来の育むべき理想や自立心が育たないままに、親のイマーゴばかりが、
 「過度に膨らんだもの」として、本人の心の中に、居座り続けることになるとされています。

例えば、

雨宮師、
パイロットババ師、
カル・リンポチェ師、
ダライ・ラマ法王

などが現れますが、最初は、高く彼らを評価しながら、少し付き合うと、
すぐに「自分よりも下の存在」と位置づけました。


◎「妄想的な予言」に見られる麻原の誇大妄想と被害妄想

そして、その後の宗教活動では、社会から不当に弾圧されているという
「被害妄想」を生じさせるとともに、
自分がコントロールできる幻想の世界の中で、
自分が絶対者であるという「自己万能感」に浸ろうとして、
「予言に基づいた教団活動」の世界にのめり込んでいったのではないか、
と思われます。

麻原と社会の関係は、麻原の妄想的な過激な言動に、社会が反発し、
その社会の反発を麻原が自己の誇大妄想を増大させるために再度利用する、
といった、一種の「悪循環」があったのではないか、と思います。

このような仕組みによって、

「世界征服をたくらむ影の組織フリーメーソンが、
 教団を攻撃してくるのであり、
 自分たちは予言された救世主の団体である」

という幻想世界を突き進み、それに弟子たちを巻き込んでいったのでした。


◎時代全体にあった(妄想的な)予言の流行

なお、このような彼の妄想的な予言への傾斜は、
広い意味では、時代の潮流の一部であったように思われます。

例えば、「ノストラダムスの予言」については、
1973年の五島勉氏の『ノストラダムスの大予言』(祥伝社)がベストセラー
になりましたが、麻原も、その存在を知ったことでしょう。

その後、麻原が入信した阿含宗でも、桐山氏が
『1999年カルマと霊障からの脱出』(桐山靖雄、平河出版社)という本を
1981年に出してもいるので、さらに興味が増していったと判断できます
(麻原は1980年夏に阿含宗に入信している)。

その他にも、ヒトラー、エドガー・ケーシー、ジーン・ディクソン、出口王仁三郎
と、破局の予言をしている人は大勢いました。

そのような時代の潮流に乗った上で、麻原は、それらの予言よりも、
さらに妄想的な「自己の予言」に傾斜していったのです。


※より詳しい内容が以下に書かれていますのでご覧ください。
【5】麻原の妄想的な信仰と「誇大自己症候群」
http://hikarinowa.net/kyokun/generalization2/psychology2/04-5.html