「ここは本当に京都なのか?」
開口一番、ボクはそう言ってしまった。
5月5日、ゴールデンウィーク3日目。
まだまだ世間は大型連休の真っ最中、京都各地の観光スポットは賑わいを見せ、洛中には観光客があふれかえっています。
にもかかわらず、この日ボクが訪れた場所はシンと静まり返り、人影もまばらであった。
この日ボクが訪れた場所、そこは加茂であった。
“京都府相楽郡加茂町”、これが加茂の正式名称らしい。
奈良県との県境付近にある極めてのどかな街である。
加茂駅の駅前には人もほとんどいない状態で、バスも1時間に1本しか走っていないという塩梅だ。
ハッキリ言ってお世辞にも発展した街とは言い切れない場所である。
なぜボクはこんなところに来たのだろう?
「加茂は歴史マニアは必ず訪れる名所ォ!」
加茂出身のYさんは鼻息を荒くして、度々そうおっしゃられていた。
たしかに加茂は平安京以前は数年間、“恭仁京”との名の下に都だった時期がある。5年ほどですが。
そのため、それに関する遺跡も残っているらしい。
なるほど、歴史好きを公言して憚らない厚顔無恥な俗物には、魅力的な街かもしれない。
天気も非常に良く、行き先決定に窮していたので、この日は加茂に行ってみようと思いました。
加茂出身のYさんを水先案内人に加茂に遠征してきたわけですが、話に聞いていた以上に田舎で少々驚きました。
さんざんボクの故郷は田舎だ!とののしっていたが、加茂人に言われるのは心外だな・・・と感じましたね。
JR奈良線に乗り、昼過ぎに加茂駅に到着、そこからバスに乗り岩船寺へ。
バスは乗客もほとんどいない状態で、イニシャルDを彷彿とさせる峠道をグングン登っていく。
そしてまずは岩船寺に到着、朱色の三重の塔と本堂の四天王像を拝観。
のどかで混んでいないのでゆっくり見ることができた。
雰囲気もいい感じで、非常にワビサビのある名所であった。
岩船寺を見学した後、浄瑠璃寺を目指し歩き出す。
どうやらこの付近はハイキングコースらしく、舗装もされていない山道をひたすら歩き回りました。
天気が良く、木々の青々とした姿がマイナスイオンをこれでもかというくらいに発散していた。
ああ、癒される・・・
岩船寺から歩いて小一時間、浄瑠璃時に到着。
浄瑠璃寺は中央に池、右に本堂、左に三重塔を配置していて見た目にも美しい寺であった。
紅葉の季節に来たらば、さぞかし美しいのだろうな・・・
本堂内では四天王や不動明王、阿弥陀如来などが安置されていた。
本堂内は、障子から差す薄明かりとロウソクの頼りない明かりで、堂内はほの暗く空気もヒンヤリとしていて、静かで独特な雰囲気であった。
そういったところで見る仏像は、非常に迫力があり荘厳である。
ボクはそういう荘厳であったりワビサビを感じるものが大好きだ。
これだから寺巡りはやめられない。
浄瑠璃寺を出ると夕方も近くなり、バスも終わってしまうので早めに帰ることになりました。
帰りの電車、晴れた山の中をひたすら歩き、花粉を大量に吸ったためか鼻水が止めどなく流れて往生しました。
今年はほとんど花粉で苦しまずに済んでいたのに今更・・・
私もよくよく運のない男だな。