ハンドマッサージ・セラピーのボランティアとして月に1,2回
伺う横浜のとある施設に、その方はいます。
初めてお会いした時、骨と皮ほどに痩せ細った体で寝台に
横たわるその姿を見て、正直、触るのが怖い、と思いました。
骨が折れてしまったらどうしよう?
まるで、骸骨のようにこんなに痩せてしまって、
大丈夫なのかしら。
でも、マッサージをするうちに、まったく表情のないその寝顔
に少しづつ笑みが浮かんだような気がして、
安堵の気持ちで、15分ほどの両腕のマッサージを終えました。
先日伺うとその方は、同じように寝台に横たわっていましたが、
穏やかな笑顔で目覚めていました。
お年のころ80歳代後半でしょうか。
お若い頃の美しさを髣髴とさせる、色白のお上品な顔立ちの
婦人です。
もので、ほのかなバラの香りが漂います。
しばらくして、その方の細い指先がテーブルの上のオイル瓶
の方に伸びたので
「バラの香りですよ。バラはお好きですか?」と
話しかけながら、香りをかいでいただくと、
「バラ、よい香り、、、。」とにっこりと、穏やかな笑顔を返して
くれました。
この香がお好きなのかしら、とティッシュにオイルを含ませて
お渡しすると、それを細い指先で折りたたみ、ご自分で
パジャマの胸元へそっと忍ばせたのです。
「今日は良いお天気ですよ。バラの季節になりましたね。」
と寝台を窓のほうに向けて差し上げると
「バラの季節、、良いお天気、、」
と静かに、にっこりとほほ笑んでくれました。
終わりのご挨拶をすると、「カサカサ、、、」といって
ご自分の頬に手をやるので、一瞬、どうしようかしら、、
と戸惑ったのですが思い切って、オイルでそっと、そっと
お顔をマッサージ.してみました。
すると、白い頬がほんのりバラ色に上気して私も施設の方も
感激してしまい「なんて綺麗なんでしょう!」と
全員がバラが咲いたような笑顔になりました。
まるで、この方の、長い年月の美しい記憶が甦った瞬間に
立ち会えたようです。
また、幸せをいただきました。


