シードル (仏:シードル cidre 、英:サイダー cider、西:シードラ Sidra、バスク語:サガルド Sagardo )とは、林檎を発酵させて造るアルコール飲料で、発泡性であることが多い。

日本では、リンゴ酒とも呼ばれている。




世界各地で造られているリンゴ酒について




フランス



フランスのブルターニュ地方とノルマンディー地方のものが、とくに有名である。

シードルを蒸留すると林檎のブランデーが造られ、それら中でも特に有名なものが「カルヴァドス」である。

また、シードルと類似するものに、梨を原料とした「ペリー」がある。

19世紀末ごろまでは、ヨーロッパでは、衛生上生水を飲むことが大変危険なこととされたので、幼児のうちからこれらを飲んでいたようである。

フランスでは、ワインと同様に、「原産地呼称規制(AOC)」の対象となっている。




スペイン



古くからカンタブリア山脈一帯でシードラが造られてきた。

19世紀以降は、アストゥリアス州、ギプスコア県、ナバラ自治州北西部に生産地が集中している。

これらの地域では、祝祭の行事をする際、シードラは欠かせないものとなっている。

いつしか、地元原産のリンゴ栽培が減少したために、外国産のリンゴ果汁と混ぜてシードラが造られるようになった。

2002年11月より、アストゥリアス州では、地元原産のリンゴ果汁のみを用いたシードラに対して、DOPの「シードラ・デ・アストゥリアス(Sidra de Asturias)」の名称を許可した。

一般的に、アストゥリアス産のシードラは、バスク産シードラよりやや甘口であり、逆に、バスク産シードラは、アストゥリアス産シードラより酸味が強いとされている。




イギリス




イギリスでは、同じくリンゴ酒(多くの場合、発泡性のもの)を指している。

イギリスでは、無名ブランドのものが非常に安価で売られている。

また、口当たりもいいことから、アルコールを飲み始めた10代の労働者階級の子供が飲む最初のアルコールとしてポピュラーである。




北米




植民地時代のアングロアメリカでは、衛生的な飲料水が手に入りにくかったことから、ヨーロッパ人の入植者がリンゴ酒を醸造してよく飲んでいた。

1920年代の禁酒法施行とほぼ時を同じくして、アメリカ合衆国では、「サイダー」というと、通常は発泡性のリンゴジュースのことを指すようだ。

それは、かつてリンゴ酒の代替品の「ノンアルコールサイダー」として宣伝していたマーティネリ社の「マーティネリズ・スパークリング・アップルサイダー」の影響があるみたいだ。

現在でも、アメリカとカナダの一部では、普通、「サイダー」というと、アルコール分を含まない果汁100%の「リンゴジュース」のことを指している。

どうも、それらの性質は地方によって異なっているようだ。

例えば、アメリカのある一部の地域では、濾過や熱加工を施していない果汁100%の「リンゴジュース」のことを指している。

この飲み物は、秋から冬にかけての季節商品であり、褐色をしており、熱処理していないので日持ちしない。

また、時間が経つと濁っるばかりか、自然発酵して、二酸化炭素が発生するので、炭酸飲料のような味になってしまう。

ちなみに、アルコール分が、0.15%を超えるようなサイダーは、「ハードサイダー (hard cider) 」に分類されている。

また、他の地域では、一般的に、無濾過で、未発酵のリンゴジュースのことを指しているようだ。

中でも、ペンシルベニア州の州法では、「アップルサイダー」の定義があり、「リンゴから絞った、琥珀色、不透明、未発酵のアルコール分を全く含まないジュース」と規定されている。

なお、前述のマーティネリ社のスパークリングサイダーは、琥珀色の透明であり、地方によって「サイダー」あるいは「ジュース」という名称で販売されている。

また、日本で販売されている炭酸飲料のことを「サイダー」と言うのは、このサイダー (炭酸が入ったリンゴジュースという意味で) に由来しているようだ。

「ハードサイダー」は、ニューヨーク州とニューイングランド地方が主な産地であり、「サイダージャック (ciderjack) 」と呼ばれることもある。

ケベック州のオルレアン島では、冬季に、リンゴ100個から1本のアイスシードルが作られている。

そして、「サイダー」からは、琥珀色のリンゴ酢(サイダービネガー)が造られる。




ドイツ




ドイツでは、フランクフルトのリンゴ酒が有名だが、こちらは、「アップフェルヴァイン(de:Apfelwein)」と呼ばれている。

フランス産の「シードル(de:Cidre)」とも区別されている。

そして、フランス産のものとは味も異なる飲料である。

特に、発泡の具合がきめの細かいフランス産に対して、こちらは大粒なのが特徴である。





日本




日本では、第二次世界大戦後に、青森県弘前市の吉井酒造がフランス人技術者を招いて醸造したのが最初とされている。










アペラシオン・ドリジーヌ・コントロレ(Appellation d'Origine Contrôlée; AOC)は、フランスの農業製品、ワイン、チーズ、バターなどに対して与えられる認証である。

これは、製造過程及び最終的な品質評価において、特定の条件を満たしたものにのみ付与される品質保証である。

日本語に訳すと、「原産地統制呼称」や「原産地呼称統制」などの意味になるようだ。

フランスの法律では、AOCの基準を満たさないものは、AOCで規制された名称で製品を製造または販売することが違法とされている。

なお、フランスの原産地呼称委員会(Institut National des Appellations d'Origine, INAO)が管理している。

上記の管理において条件が満たされている全てのAOC製品には、ラベルや製品そのものに印刷された証印によって識別されている。

可能な限り、不当表示を防止するために、いかなる場合であっても、AOCの名称を製品のラベルなどには使用出来ないようになっている。

生産者の住所における地名がAOC名称である場合には、5桁の郵便番号を使用して代替させている。

この場合、最初の2桁の番号が県を示している。

この番号は、同じく、自動車のナンバープレートなどにも使われている。

フランスの初等教育では、この県名を示す汎用番号を覚えさせられるため、ほとんどのフランス人は郵便番号だけで、県名や都市名を思い浮かべることが出来るようになっている。





歴史




AOCの原点は、15世紀に、ブルーチーズのロックフォールが議会の布告によって規制されたということに遡るようだ。

直接的には、近代的な法の整備として、AOCの前身となったのは、1905年に制定された「原料の偽装を取り締まる法律」である。

その後、1919年5月6日には、「原産地保護に関する法律」制定された。

これらの法律には、ある特定の品質の製品が、生産されている地域や組織を特定化したものである。

その後、度重なる改訂が試されながら、現在の法律となったようだ。

つまり、1925年には、この法律に基づき、ロックフォールが、チーズとしては、最初のAOCを獲得している。

また、1935年7月30日には、ワインの製造工程を管理する目的で、フランス農林省管轄の組織としてINAOが設立された。

INAOは、生産者・消費者・行政官の3者より構成される組織で、AOCの認定・運用などの業務を行っている。

ローヌ県シャトーヌフ・デュ・パプ(Châteauneuf-du-Pape)のワイン醸造家で、老練な法律家でもあった Pierre Le Roy 男爵は、INAO設立からわずか2年の後の、1937年に、コート・デュ・ローヌ(Côtes du Rhône)の名で、AOCを獲得している。

AOCのマークは、1950年代、60年代、70年代に、それぞれ作られた。

そして、それらのマークは、すべてにおいて、フランスの法律に基づかれ、統制・管理されてきた。

1990年7月2日には、INAOの管轄範囲が、ワインだけではなく、他の農産物にも拡大された。

AOCが規定する項目の最たるものは、農産物の生産場所であるが、その範囲は実に様々である。

様々な気候条件や土壌を含む広大な地域を認めるものもあれば、ごく狭小な範囲(例えば単一の畑)のみを指定する場合もある。

例えば、前述のコート・デュ・ローヌの名称で、そのAOCは、40,000ヘクタールの耕地が指定されている。

そして、シャトー・グリエ(Château Grillet)の名称で、そのAOCは、4ヘクタールに満たない小さな範囲である。




ワインのAOC



AOC製品の印として、ワインのラベルには、必ず、「Appellation Contrôlée」または「Applacion d'Origine(生産地)Contrôlée」の表示を入れる。

生産地の部分には、「Bordeaux(ボルドー)」などの地方名、「Médoc(メドック)」などの地区名、「Margaux(マルゴー)」などの村名が入る。

ブルゴーニュ・ワインの場合は、さらに「Romanée Conti(ロマネ・コンティ)」などの畑名まで入る。

AOC法では、品質を保持し、産地名称を保護するため、ブドウ品種による最低アルコール度数の規定、最大収穫量、栽培法、剪定法、また地方によっては熟成方法なども規制している。

ワインの他、ブランデーやラム酒などにもAOCが制定されている。




AOCの規定の例として




1.生産地域 : その産地内でできたブドウ100%で作られている。


2.品種 : ブドウの品種に関しても使用の可否に規定があるので、それが守られていること。


3.最低アルコール度数 : 収穫期のブドウの糖度にも規定がある。


4.最大収穫量 : 1ha当たりの最大収穫量が規制されている。

ワインの品質は、単位面積当たりの原料ブドウの収穫量が少ないほど高くなる(多いほど低くなる)傾向があるので、面積あたりの生産量を増やしすぎることはワインの品質低下に直結する。

このため、高い品質を維持するには、ブドウの花の開花の段階で調整し結実させる房の数を減らす必要がある。


5.栽培法 : ブドウの樹齢が5年を経過していること、など。


6.剪定法 : ブドウの樹の種類を考慮し、産地によっても異なる。


7.醸造法 : ミュスカデ、ロゼワイン、シャンパーニュなどの発泡ワインには特別に規定がある。

産地によって異なる。


8.熟成法 : ボジョレー・ヌーヴォーの発売日や、発泡ワインの熟成法は特に厳密に定められている。


9.試飲検査 : AOCワインのすべてが、試飲検査を受けなければならない。






醸造酒とは、原料を酵母によりアルコール発酵させて作られた酒である。

蒸留などの作業を経ずに、基本的には、アルコール発酵させたままの状態で飲まれるものを指している。

一般に、蒸留酒に比べると、アルコール度数は低くなる。

これは、アルコール発酵を行う微生物が、自らが作り出したアルコールによって活動を阻害されてしまうことに由来している。

醸造酒は、大きく分けると、単発酵酒と複発酵酒に分けられる。

さらに複発酵酒は、単行複発酵酒と並行複発酵酒に分けられる。




単発酵酒



原料に糖分を多く含んでいる場合、酵母だけでアルコール発酵させることが可能である。

このような種類の酒を単発酵酒と呼んでいる。

糖分を多く含む果実などを原料にした酒を指し、例えば、ワイン(ブドウ酒)やシードル(リンゴ酒)、乳酒などがこれに含まれる。





複発酵酒




これに対して、原料がコメや麦などの穀類の場合には、デンプンを糖に変え、その後、アルコール発酵させることになる。

この場合、糊化(アルファ化)したデンプンをコウジカビなどによって糖化する場合と、穀物を発芽させて(麦芽に変えて)デンプンを糖化する場合の2種類がある。

このように、糖化とアルコール発酵の2つの工程により作られる酒を複発酵酒という。

例えば、ビールや日本酒などがこれに含まれる。



複発酵酒は、更に、単行複発酵酒と並行複発酵酒に分類される。

前者は、デンプンを糖化した工程の後に発酵を行って作られる酒類で、ビールなどがこれにあたる。
後者は、デンプンの糖化とアルコール発酵の2つの工程を同時進行させて作られる酒類で日本酒がこれにあたる。



蒸留酒は、醸造酒を蒸留して作った酒類である。

スピリッツとも呼ばれている。

比較的、アルコール度数が高いアルコール飲料に仕上がる。

世界各国には、地域に応じた様々な蒸留酒が存在している。




蒸留の原理



酒類は、アルコールと水(およびその他の微量成分)の混合物である。

アルコールの沸点は約78.325℃であり、水の沸点は約100℃である。

両者の沸点には、差があるので、蒸留により精製が可能である。

酒類を加熱するとアルコールの方が蒸発しやすい。

この蒸気を集めて液体に戻すと、元の酒よりもアルコール度数の高い酒になる。

つまり、この度数の高い酒が蒸留酒である。

ただし、共沸という現象が発生するので、蒸留による方法では、アルコール度数は、96%までしか出来ない。

結論から言うと、100%のアルコールを蒸留で得ることは不可能となる。

この工程の後、そのまま保存したり、飲んだりすることもある。

また、樽などで、ある一定期間、熟成させたものを飲用することが多い。




各種の蒸留酒(五十音順)



アクアビット
アラック
アルヒ
ウイスキー
ウォッカ
スピリタス
オコレハオ
カシャッサ(ピンガ)
コルン
焼酎
泡盛
シュナップス
ジン
ソジュ
白酒(パイチュウ)
茅台酒
ブランデー
カルヴァドス
グラッパ
シンガニ
ピスコ
メスカル
テキーラ
ラク
ラム酒


日本では、すべてのアルコール分を1%以上含む飲料について、「酒税法(昭和28年2月28日法律第6号)」の適用が課せられる。

つまり、酒税の賦課徴収・酒類の製造及び販売業免許等を定めた法律である。

今日の法律は、1940年に制定された「旧酒税法(昭和15年法律第35号)」を全面改正する形で制定されたものである。

なお、度数90度以上で産業用に使用するアルコールについては、別途、「アルコール事業法」で扱われる。




酒税法の詳細掲載は省略するが、構成について、下記に紹介しておく。



  • 第1章 — 総則(第1条 - 第6条の4)
  • 第2章 — 酒類の製造免許及び酒類の販売業免許等(第7条 - 第21条)
  • 第3章 — 課税標準及び税率(第22条)
  • 第4章 — 免税及び税額控除等(第23条 - 第30条)
  • 第5章 — 申告及び納付等(第30条の2 - 第30条の6)
  • 第6章 — 納税の担保(第31条 - 第36条)
  • 第7章 — 削除(第37条 - 第39条)
  • 第8章 — 雑則(第40条 - 第53条の2)
  • 第9章 — 罰則(第54条 - 第62条)



酒税法上の分類



法律改正により、2006年5月より分類が変更され、一部の定義なども変更されている。



発泡性酒類


ビール
発泡酒
その他の発泡性酒類(アルコールが10度未満で発泡性を有するもの。この定義に当たるものは全て該当)


醸造酒類



清酒
果実酒
その他の醸造酒(どぶろく・黄酒・蜂蜜酒など)



蒸留酒類



連続式蒸留しょうちゅう(焼酎甲種)
単式蒸留しょうちゅう(焼酎乙種)
ウイスキー
ブランデー
原料用アルコール
スピリッツ



混成酒類



合成清酒
みりん
甘味果実酒
リキュール
粉末酒
雑酒(その他の混成酒、みりん類似、灰持酒・百歳酒など)



つまり、この法律に従い、製造や販売が許可されるのである。




広義には、日本酒、ビール、ウイスキー、ワインなどのエチルアルコールを含む飲料全般を指している。

狭義には、特に日本酒(清酒)を指している。

また、欧米では、「Sake」が外来語として日本酒を指す言葉になっている。


ここでは、前者について述べていくことにする。

丁寧な呼び方である「お酒」とは、エタノール(酒精、エチルアルコール)が含まれた飲料のことである。

通常、「酒類」や「アルコール飲料」とも呼ばれている。

また、ソフトドリンクに対して、ハードドリンクとも呼ばれることもある。

なお、西洋では、ワインに相当する語彙が総称として用いられることがある。

また、「アルコール」とは本来、炭化水素の水素原子をヒドロキシ基で置き換えた物質の総称であるが、一般的な会話や文章では、特にエチルアルコールのことを指してアルコールとしている事が多いようだ。

ここでも、特段の断り書きがない場合、アルコールとはエチルアルコールの事を指している。



概説



日本の酒税法では、アルコール分を1%以上含む飲料と定義され、酒税の課税対象となっている。

そのため、アルコールを10%以上も含み、江戸時代には、酒であった「みりん(本みりん)」は、調味料として使用される場合でも、酒税の課税対象となっている。

なお、酒税法では「混成酒類」に分類されている。

製造方法や原料等は多種多様だが、原材料から発酵によって、エチルアルコールを生成することで共通している。

酒の歴史は古く、有史以前からつくられていたと見られている。

宗教ごとにお酒の扱いは異なっており、キリスト教カトリック教会などでは、赤ワインがミサに用いられている。

神道では、お神酒(おみき)は、神への捧げものであり、また身を清め、神との一体感を高めるための飲み物とされている。

宗教によっては、飲酒を禁じているものもある。

世界保健機関(WHO)は、アルコールはガンリスクを増大させるとして警告をおこなっている。

WHO傘下の国際がん研究機関(IARC)では、飲酒は、がんを引き起こす元凶と指摘している。

東アジアの人に多いとされているのが、遺伝的に、アルコール分解の働きの悪い人がいることである。

飲酒量に比例して、食道がんになる危険が、最大12倍にまであるようだ。

アルコールを毎日50g(ビール大瓶2本程度)摂取した人の乳がん発症率は、飲まない人の1.5倍、大腸がんの発症率も飲酒しない人の1.4倍になるなど、多くの健康被害の原因にもなっているようだ。

また、WHOの指摘をはじめ、その他の飲酒による健康への様々な悪影響も指摘されているようだ。

飲酒は社会的に見ると、様々な悪影響を引き起こしているということが明らかになってきている。

このことからも、酒は人々の健康や社会へ及ぼす影響が大きいのかもしれない。

人々の健康や公序良俗を守るために、あるいは、政府の税収を確保するために、酒の製造および流通(販売)は、多くの国において、法律により規制されている。

日本では、酒税法や未成年者飲酒禁止法などがある。

また、近年では、ジュースなどとの誤認を防止するため、果汁を配合したチューハイやカクテルなどの容器の前面に「お酒」と表記されたり、缶入りビールやチューハイなどの上部に、点字で「おさけ」などの表記がされるようになっている。

余談になるが、酒の代金のことは「酒代(さかだい)」といっている。

なお、酒を飲む代金のことは「のみだい」ではなく、「飲み代(のみしろ)」というようだ。


酒の強さ


日本では、「アルコール度数」を含まれるアルコールの容量パーセントで、「度」と表している。

正確には、温度15℃のとき、その中に含まれるエチルアルコールの容量を、パーセントで表した値に「度」をつけて表す。

販売されている酒の多くは、3度(ビール等)~50度前後(蒸留酒類)の範囲であるが、中には90度を超す商品もある。

日本の酒税法では、1度未満の飲料は酒に含まれない。

なお、日本酒には「日本酒度」という尺度があるが、これは日本酒の比重に基づくもので、アルコール度数とエキス分(酒類中の糖・有機酸・アミノ酸など不揮発性成分の含有量)に依存する。

英語圏では、度数のほか、アルコールプルーフも使われる。

USプルーフは度数の2倍、UKプルーフは度数の約1.75倍である。

英語圏で 「degree 」や記号の「 ° 」といえば、プルーフのことなので、注意が必要である。

酒に含まれているアルコール分は、ほとんどの場合、酵母による糖のアルコール発酵によってつくられている(テキーラは例外的に、「ザイモモナス」と呼ばれる細菌をアルコール発酵に使用している)。

果実から作られる酒(ワイン)は、果実中に含まれる糖分から直接アルコール発酵が起こっている。

しかし、麦・米・芋などの穀物類から造る酒の場合、原材料の中の炭水化物はデンプンの形で存在しているため、先にこれを糖に分解(糖化)しなければならない。

糖化のためには、アミラーゼ等の酵素が必要である。

酵素の供給源として、西洋では主に「麦芽」が、東洋では主に「麹」が使われる。



酒の分類


酒は大きく分けて醸造酒・蒸留酒・混成酒に分かれる。

醸造酒は単発酵酒と複発酵酒に分けられ、複発酵酒は単行複発酵酒と並行複発酵酒に分けられる。



醸造酒:原料をそのまま、もしくは原料を糖化させたものを発酵させた酒。


単発酵酒:原料中に糖分が含まれており、直接発酵するもの。


複発酵酒:穀物などデンプン質のものを原料とし、糖化の過程があるもの。


単行複発酵酒:糖化の過程が終わってからアルコール発酵が行われるもの。例えば、ビールなど。


並行複発酵酒:糖化とアルコール発酵が同時に行われるもの。例えば、清酒など。


蒸留酒:醸造酒を蒸留し、アルコール分を高めた酒。


混成酒:酒(蒸留酒が主に使われる)に他の原料の香り・味をつけ、糖分や色素を加えて造った酒。


蒸留酒のうち、樽熟成を行わないものを「ホワイトスピリッツ」、何年かの樽熟成で着色したものを「ブラウンスピリッツ」とする分類法がある。

ただし、テキーラ、ラム、アクアヴィットなどでは、ホワイトスピリッツとブラウンスピリッツの両方の製品があり、分類としては本質的なものではないようだ。



酒の原料



糖分、もしくは糖分に転化されるためのデンプン分があるものは、酒の原料になっている。

脂肪分やタンパク質分が多いもの(たとえば、大豆などの豆類)はあまり向かないようだ。

また、ブドウ、リンゴ、サクランボ、ヤシの実などの果実。

米、麦、トウモロコシなどの穀物。

ジャガイモ、サツマイモなどの根菜類。

その他としては、サトウキビなどが代表的な原料である。

また、酒造の副産物として得られる酒粕・ブドウの絞りかすなどから、二次的に酒を造り出すこともある。

クリなどの堅果類、樹液や乳、蜂蜜を原料とした酒もある。


原料によって酒の種類がある程度決まる。




果実原料のもの


ブドウ・・・ワイン、ブランデー(蒸留酒)、ピスコ(蒸留酒)など。


リンゴ・・・シードル(アップル・ワイン)、カルヴァドス(蒸留酒)など。


ナシ・・・ペリー(またはペルー)など。


レモン・・・リモンチェッロなど。


プルーン・・・ツイカなど。




穀物原料のもの



米・・・清酒、米焼酎(蒸留酒)、紹興酒、泡盛(蒸留酒)、マッコリなど。


大麦・・・ビール、モルトウイスキー(蒸留酒)など。


トウモロコシ・・・バーボン・ウイスキー(蒸留酒)など。


高粱・・・白酒(蒸留酒)など。



副産物原料のもの



酒粕・・・粕取焼酎(蒸留酒)など。


ブドウの絞りかす・・・グラッパ(蒸留酒)、マール(蒸留酒)など。


その他の原料のもの



サトウキビ・・・ラム(蒸留酒)、カシャッサ(蒸留酒)など。


樹液・・・リュウゼツラン、メスカル(蒸留酒)、テキーラなど。


ヤシ・・メープルなど。


乳・・・馬乳酒、クミス、アルヒ(蒸留酒)など。


蜂蜜・・・ミードなど。


しかし、ジン・ウォッカ・焼酎・ビール・マッコリなどには、穀物や芋類などとは異なった原料のものがあり、必ずしも、原料によって酒の種類が決まるわけではないようだ。

また、原産地によっては、名称が制限される場合がある。

たとえば、テキーラは産地が限定されていて、他の地域で作ったものは「テキーラ」と呼ぶことができず、「メスカル」と呼ばれる。




主なアルコール飲料



蒸留酒(スピリッツ)



ウイスキー

スコッチ・ウイスキー

アイリッシュ・ウイスキー

バーボン・ウイスキー
テネシー・ウイスキー

カナディアン・ウイスキー
ジャパニーズ・ウイスキー




ラム

カシャッサ

ウォッカ


ジン


テキーラ


ブランデー

コニャック
カルヴァドス
アルマニャック

ラク


アラック


ウーゾ


白酒


茅台酒


焼酎


泡盛


古酒



醸造酒



ビール


発泡酒


第三のビール


果実酒

ワイン


発泡ワイン


シャンパン


ロゼワイン


甘味果実酒

酒精強化ワイン

デザートワイン
フェーダーヴァイサー
フレーバードワイン


シードル


ペリー


シンガニ


黄酒


日本酒

灰持酒


合成清酒


どぶろく

マッコリ


みりん


本直し


馬乳酒


リキュール


蜂蜜酒


リモンチェッロ


カクテル


エタノール (ethanol) はアルコールのひとつである。

慣用名として、エチルアルコール (ethyl alcohol) と呼ばれる。

酒類の主成分であるため酒精とも呼ばれる。

数多くあるアルコール類の中でも、最も身近に使われる物質の1つである。

揮発性が強い。

殺菌・消毒の用途で広く用いられている。

近年日本では、自動車燃料として脚光を浴びており、世界中でもさらに大きく注目を集めている。



性質


一般的なアルコールの性質を持つ。

詳細については、このブログの「化学物質の総称としてのアルコール 前編および後編」を参照願います。


また、水を始めとする極性溶媒や炭化水素も含む各種有機溶媒など、ほとんどの溶媒と自由に混和できる。



合成



現在市場に出回っているエタノールは、大部分がアルコール発酵によって製造されている。

一部は、化石燃料由来のエチレンの水和反応等の有機合成手法によっても製造される。



アルコール飲料の研究-合成



反応



エタノールに濃硫酸を混ぜて、130~140℃に加熱すると、ジエチルエーテルが生成される。



アルコール飲料の研究-ジエチルエーテル


また、160~170℃に加熱するとエチレンが生成される。



アルコール飲料の研究-エチレン


エタノールに適当な酸化剤を作用させる、または、脱水素反応などを施すとアセトアルデヒドに変わり、さらに強い酸化反応条件下では酢酸まで酸化される。

以上の酸化の過程を簡略した化学式で表すと以下のようになる。



アルコール飲料の研究-酸化の過程


エタノールに金属ナトリウムあるいは水素化ナトリウムを反応させると、水素ガスを発生しながらナトリウムエトキシドを生成する。




アルコール飲料の研究-ナトリウムエトキシド



共沸と精製



水とエタノールの混合液を蒸留によって、二つの成分に完全に分離することはできない。

これは水とエタノールが共沸をするためであり、この時の共沸混合物はエタノールが96%(質量パーセント濃度)、水が4%であるため、通常の蒸留によって得られるエタノールの最高濃度はおよそ96%である。

含水エタノールは酢酸エチルあるいはベンゼンなどの成分が 存在すると、始留に水分が集まるようになる。

薬局方にある「無水エタノール」を作るときは、この三成分共沸によってさらに水分が除かれたのち、分別蒸留でさらに精製される。




利用



溶剤(有機溶媒)、有機合成原料、消毒剤などとして広く使われている。

用途別の使用量としては、飲用22%・工業用10%・燃料用68%である。(2003年)

飲用(酒類)及び医薬品以外のエタノール(いわゆる工業用アルコール)はほとんどが変性アルコールと呼ばれるもので、これにはエタノールにかなりの量あるいは少量のメタノールやイソプロピルアルコール等の物質が混入されている。

こうして、酒税の対象から外し価格を下げられるのである。

従って酒として販売されているもの以外のアルコールを、「エタノール」と表示されているからといって、薄めて飲むなどは極めて危険である。

外用剤や化粧品等に用いられている変性アルコールは工業用アルコールとは異なり、メタノールは使用しておらず有害性はやや低い。

メタノールよりは毒性の低いイソプロピルアルコールを添加するか、苦味や匂いを付加して飲用に適さないアルコールとすることにより、酒税対象から外している。

なお、平成12年からアルコール事業法が施行され、許可を取得すれば酒税を課せられない無変性アルコールを取り扱えるようになった。




前回の前編に続き、後編をお楽しみ下さい!!






製造





多くのアルコールが、酵母を使って果実や穀物を発酵させて得ることができる。

これらのうち、エタノールだけが発酵法で商業的に生産され、燃料や飲料の用途向けに用いられている。

他のアルコールは、天然ガス、石油あるいは石炭の副産物から工業的に生産されている。

直鎖で炭素が偶数個の高級アルコールは、油脂を加水分解して得られる脂肪酸を還元することで製造される。

最も単純なアルコールであるメタノールは、触媒の存在下に一酸化炭素を水素で還元すると得られる。



CO + 2 H2 + 触媒 → CH3OH




物理学的あるいは化学的性質




アルコールはヒドロキシ基を持つことがその特徴である。

ヒドロキシ基のために、アルコールは他の分子と水素結合を形成したり、極性分子としての性質を示したりする。

水素結合のため、同じ程度の分子量のエーテルに比べ、沸点や融点が高い。

また、アルコールは非常に弱い酸性を示し、それゆえプロトン性溶媒 (protic solvents) と呼ばれる。

メタノール以外は水よりも弱くアンモニアあるいはアセチレンよりは強い酸で、ヒドロキシ基からプロトンを放出する弱い酸である。

共役塩基 (RO-) はアルコキシドアニオンと呼ばれる。

アルコールのヒドロキシ基が親水性を持つ一方で、アルコールのアルキル基は疎水性をもつ。

エタノール、メタノール、プロパノールなどの分子量の小さいアルコールでは、ヒドロキシ基が支配的であるため、極性溶媒・非極性溶媒に対して無制限に溶けるが、一方、ブタノールでは水にほどほど溶解し、ペンタノールでは水から遊離するようになる。





実験室的合成法



アルコールはアルデヒドやケトン、エステルなどを水素化リチウムアルミニウムなどで還元して得る。

アルデヒド、ケトンやエポキシド、トリオキサンはグリニャール試薬などの有機金属を付加後に加水分解するとアルコールを与える。

エステルを加水分解するとアルコールとカルボン酸に分かれる。

有機ホウ素化合物や有機ケイ素化合物は酸化的に分解するとアルコールに変わる。

前者の分解は、ヒドロホウ素化と合わせ、アルケンからアルコールに変換する合成経路となっている。

アルケンにヒドロキシ基を2個付加して 1,2-ジオールとすることができる。

四酸化オスミウム、シャープレス不斉ジヒドロキシ化が用いられる。

特に後者は、アルケンに対して面選択的に酸化を行うことができる。







反応



アルコールの反応で最も重要なものは、ヒドロキシ基が他の基に置換される求核置換反応である。

実際にアルコールをハロゲン化水素酸(たとえば濃塩酸)と強い条件で反応させると、ハロゲン化アルキルに変わる(ただし求核性の低いフッ素を除く)。

実験室的手法としては、ハロゲン化リンやハロゲン化チオニルをアルコールと反応させてもハロゲン化アルキルが得られる。

求核置換反応は、求核性の強いクロロ基(あるいはハロゲノ基)の方に平衡が傾く。

しかし、条件を変え、アルカリ性条件下にすると、ハロゲン化アルカンはアルコールのほうへ平衡が戻る。

これが工業的に合成アルコールを製造する1つの方法になっている。

アルコールはそれ自身は求核性を持ち、硫酸を用い低温で脱水するとエーテルになる。

また、カルボン酸などオキソ酸との脱水縮合(あるは酸ハロゲン化物との反応)では、エステルになる。

硫酸の存在下で、高温で処理すると、アルコールは脱離反応により水とアルケンを生成する。

逆に、アルケンは、酸触媒存在下付加反応で水と反応させるとアルコールを生成するが、異性体が混合するので限られた局面以外には合成法としての価値はない。


第一級アルコールは PCC で酸化するとアルデヒド、過マンガン酸カリウムで酸化するとカルボン酸に変わる。

第二級アルコールを PCC で酸化するとケトンが得られる。

スワーン酸化、デス・マーチン酸化、ジョーンズ酸化はアルコールからカルボニル化合物を得る人名反応として用いられる。

第三級アルコールは酸化されにくく、通常の酸化剤では酸化されない。





毒性




アルコールは「鼻を突く」と描写される臭気を持つ。

アルコール飲料としてのエタノールは、有史以前より、多種多様な衛生的、食事、薬用、宗教、そして、レクリエーション上の理由で消費されてきた。

それは少量では比較的害が無いか、あるいは有用であると広く認知されている。

しかし、一度に大量に摂取すると酔いあるいは泥酔の状態になり、恒久的な健康被害や死をもたらす。

また、アルコール飲料は、IARCによる発がん性リスク評価でGroup1(ヒトに対する発癌性が認められる)に分類されている。

いわゆる悪酔いや二日酔いはエタノールの代謝物のアセトアルデヒドが蓄積されることで生じるといわれている。

酒類には、微量に含まれているアミルアルコールもその原因のひとつであるとも言われる。

エタノール以外のアルコールについては、グリセリンや糖のように生物に不可欠な物質もあれば、メタノールのように強い毒性を持つものもあり、毒性の有無や強さはさまざまである。

しばしば毒性が問題になるアルコールには、メタノールとエチレングリコールがあり、これらは体内で代謝されて比較的強い酸を生じるため、アシドーシスにより臓器障害を引き起こし、最悪は死亡に至ることがある。

また、メタノールは代謝生成物により失明を引き起こすことが知られている。

これらのアルコールはエタノールと代謝が拮抗するので、誤飲した場合には、エタノールを多量に投与して管理し、酵素によって代謝される前に体外に排出されるようにする。

また、血液の酸性化を抑える治療が行なわれ、他に、アルコールデヒドロゲナーゼ阻害剤として、フォメピゾールの投与、葉酸の静注によるギ酸の代謝促進、血液透析などの処置が行われることがある。





法律




法律上、多くのアルコールは、燃料や危険物として扱われる。





例えば、消防法(1948年7月24日–)危険物貯蔵施設に関する法律では、


第三章危険物には、


第十条に、「指定数量以上の危険物は、貯蔵所(車両に固定されたタンクにおいて危険物を貯蔵し、又は取り扱う貯蔵所(以下「移動タンク貯蔵所」という。)を含む。以下同じ。)以外の場所でこれを貯蔵し、又は製造所、貯蔵所及び取扱所以外の場所でこれを取り扱ってはならない。ただし、所轄消防長又は消防署長の承認を受けて指定数量以上の危険物を、十日以内の期間、仮に貯蔵し、又は取り扱う場合は、この限りでない。
一定数量以上のアルコール類は危険物第四類アルコール類の規定にしたがった貯蔵施設で保管なくてはならない。」とある。



その中でも、エタノールが飲用される場合、市民の安全・公序良俗を守るために、薬物として扱われ規制されている。

これについての詳細は、後日、アルコール飲料としてまとめてみる。

また、飲用のエタノールは、酒税法の対象とされるため、高額な税金を課している。

そのため、工業用などでは、添加物を加えて飲用不可の状態としたもの(変性アルコール)が流通されている。



主なアルコール類


メタノールとエタノール



構造が単純で一般的なアルコールに、メタノール(メチルアルコール)、エタノール(エチルアルコール)が挙げられる。






低級アルコール



イソプロピルアルコール (isopropyl alcohol, sec-propyl alcohol, propan-2-ol, 2-propanol) H3C-CH(OH)-CH3, 消毒用アルコールの一種。


エチレングリコール (ethylene glycol, ethane-1,2-diol) HOCH2CH2OH, ラジエーターの不凍液の主成分。


グリセリン (glycerinor, glycerol, propane-1,2,3-triol) HOCH2CH(OH)CH2OH, 脂肪や天然油脂トリグリセリド (triglycerides, triacylglycerols) の成分。


フェノールは、ベンゼン環にヒドロキシ基を持つが、アルコールとはされない。


芳香族アルコールといった場合は、ベンジルアルコールのようにベンゼン環に直接置換しないヒドロキシ基を持つアルコールを指す。



高級アルコール






高級アルコールとは、炭素数6以上のものを指す。

炭素数が多くなるほど親水性が弱まる。

代表的な天然物に蝋が挙げられ、天然の脂肪や油脂から合成される。

英語では「Fatty alcohols」と称される。




次に一般名を示す。



erucyl alcohol


ricinolyl alcohol


arachidyl alcohol


カプリルアルコール capryl alcohol (1-octanol) — 8個の炭素原子


capric alcohol


behenyl alcohol


ラウリルアルコール lauryl alcohol (1-dodecanol) — 12個の炭素原子


ミリスチルアルコール myristyl alcohol (1-tetradecanol) — 14個の炭素原子


セチルアルコール(セタノール) cetyl alcohol (または palmityl alcohol, 1-hexadecanol) — 16個の炭素原子


ステアリルアルコール stearyl alcohol (1-octadecanol) — 18個の炭素原子

isostearyl alcohol


オレイルアルコール oleyl alcohol (cis-9-octadecen-1-ol) — 18個の炭素原子、不飽和結合を含む。


palmitoleyl alcohol


リノリルアルコール linoleyl alcohol (9Z,12Z-octadecadien-1-ol) — 18個の炭素原子、不飽和結合を含む。


elaidyl alcohol (9E-octadecen-1-ol)

elaidolinoleyl alcohol (9E,12E-octadecadien-1-ol)


linolenyl alcohol (9Z,12Z,15Z-octadecatrien-1-ol)


elaidolinolenyl alcohol (9E,12E,15E-octadecatrien-1-ol)





アルコキシド




アルコールのヒドロキシ基からプロトンを除去したアニオンが金属とつくる塩はアルコキシド (alkoxide) と呼ばれる。

アルコールヒドロキシ基の酸性度が小さいので、一般に強塩基性を示し、強い求核剤でもある。

金属としてはアルカリ金属、特に、ナトリウム、カリウムが利用される場合が多いが、メタノール、エタノールなど比較的酸性度の大きい場合は、マグネシウムが利用される場合もある。



主なアルコキシド




ナトリウムエトキシド


ナトリウムメトキシド


マグネシウムエトキシド










化学においてのアルコールとは、炭化水素の水素原子をヒドロキシ基 (-OH) で置き換えた物質の総称である。

芳香環の水素原子を置換したものはフェノール類と呼ばれ、アルコールと区別される。

最初にアルコールとして認識された物質は、エタノール(酒精)である。

この歴史的経緯により、一般には単に「アルコール」と言えば、エタノール、またはそれを含む飲料(酒類)のことを指す。

酒類は、主に酵母による糖のアルコール発酵により生産され、このとき少量であるが多種多様のアルコール類も同時に産生されて酒の香味成分となる。

アルコール類は、生体内での主要代謝物の1つであり、生物体に多種多様なアルコール体が広く見いだされる。

蝋(ろう:ワックス)は、セタノールなど高級アルコールであり、脂肪(中性脂肪)は、多価アルコールのグリセリンと脂肪酸とのエステルである。

そして、糖類もアルコール体である。

ケトースやアルドースのカルボニル基が還元されたエリトリトールやキシリトール、ソルビトールなどは、糖アルコールと呼ばれる。





構造


ヒドロキシ基が結合している炭素原子に結合している炭素原子の数で第一級、第二級、第三級という区別がある。

酸化すると第一級アルコールはアルデヒドとなり、第二級アルコールはケトンとなる。

第三級アルコールは酸化されにくい。

なお、メタノールは炭素原子どうしの結合を持たないが、酸化してホルムアルデヒドとなるので、一般に第一級アルコールに含まれる。

それとは別に、炭素数が少ないアルコールを低級アルコール、炭素数が多いアルコールを高級アルコールという。

低級アルコールは無色の液体であり、高級アルコールは蝋状の固体である。

さらに、結合しているヒドロキシ基の数がn個であるアルコールを n価アルコールという。

2価アルコールは特にグリコールとも呼ばれ、エチレングリコール、プロピレングリコールなどの例がある。

グリコールは一般に粘性や沸点が高い。



命名法


一般名では普通、対応するアルキル基の名称に "alcohol" の語を続けて命名する(例: methyl alcohol, ethyl alcohol)。

プロピルアルコールの場合、ヒドロキシ基がプロパンの末端(1位)炭素に置換した一級アルコール (CH3CH2CH2OH) は、n-プロピル基 (CH3CH2CH2-) にヒドロキシ基が結合した構造から n-propyl alcohol (n-プロピルアルコール)と呼ばれる。

一方、プロパンの中心(2位)の炭素に置換した二級アルコール ((CH3)2CHOH) は、イソプロピル基 ((CH3)2CH-) とヒドロキシ基が結びついた構造から isopropyl alcohol(イソプロピルアルコール)と呼ばれる。

また、イソプロピルアルコールは二級であることから sec-propyl alcohol とも呼ばれる。

"tert-" の接頭語は三級アルコールを示す(例: tert-butyl alcohol)。

2つのヒドロキシ基を持つ2価アルコールの場合は、2価の置換基名 (ethylene, propylene など) に "glycol" の語を続ける(例: HOCH2CH2CH2OH, propylene glycol)。

IUPAC命名法によると上記の一般名も維持されるが、IUPACの推奨する組織名では対応するアルカン鎖の名称の末尾の "-e" を "-ol" に変えて命名する(例: methanol, ethanol)。

一級アルコール、二級アルコール、三級アルコールの別は、"-ol" の前につける(例: propan-1-ol, propan-2-ol)。

ほかにも置換基があり、ヒドロキシ基が主基にならない場合 "hydroxy" の語を前につけて表す(例: 2-hydroxypropanoic acid)。

また多価アルコールの場合は "-ol" を "-diol"(二価アルコールの場合)、"-triol"(3価アルコールの場合)のように ol の前に数詞をつけて命名する。

位置番号のつけ方は同様である。




語源


アルコール (alcohol) の語源については正確な起源が判明しているわけではないものの、"al-" がアラビア語の定冠詞であることから、アラビア語に由来すると考えられている。

そもそも、12世紀にイスラム社会の錬金術の発見を大衆向けに翻訳した数々のヨーロッパの翻訳者によって、アルコールは蒸留技法とともにその蒸留物のこととしてヨーロッパに紹介された。

多くの辞書では "al-khwl" から来たとする説を紹介しているが、al-khwl は、アラビア語の原義では殺菌剤と眉墨に利用されたアンチモン硫化物 Sb2S3 の非常に微細な粉体のことである。

すなわち「さらさらしている」という意味であり、エタノールが水に比べてさらさらしているところから来ていると考えられる。

Oxford English Dictionary によると、1672年以来イギリスで流通している説では、アンチモン硫化物は天然鉱石の輝安鉱を閉じた容器の中で昇華し精製する。

このことから他の精製技法も含め、蒸留一般のことを指していうようになり、その後、蒸留物であるエチルアルコールを示す語に転化したものと考えられている。

ただし、この説にも異論があり、コーランの37:47節にある "al-ghawl" が由来であるという説がある。

al-ghawl の原義は、精霊 (spirit) や魔人 (demon) で「ワインの性質を与えるもの」という意味である。

蛇足になるが英語の "ghoul" や星の "Algol" も起源を al-ghawl に持つ。

"spirits" や "spirits of wine" がアルコールの意味として同義なので、西側社会言語では広く受け入れられている。

語源「アルコール」=「悪魔」は、宣伝の目的でアメリカ禁酒運動によって1930年代に使われた。




利用法


科学あるいは産業の領域で、アルコールは試薬、溶媒そして燃料として広く使用されている。

最先端技術の領域では、ガソリン、あるいは有害な排気ガスを発生させる炭化水素の代換品として、よりクリーンに燃焼するエタノールやメタノールを使用する技術が確立された。

また低い毒性と非極性物質を溶解させる性質により、エタノールは医薬品、香水、バニラのような植物エッセンスの溶媒としてしばしば使用される。

低分子のアルコールは、化粧品、食品あるいは工業用溶剤として利用される。

高分子のものはバイオ燃料として重要である。