黒澤明監督作品 ”夢”
をご存知でしょうか?
黒澤明監督自身が見たという8つの夢を、オムニバス形式で描いています。
そのなかのひとつに”赤富士”というのがあります。
大群衆の中を私(寺尾聰)が何が起こったのかわからず、進んでいきます。赤くなった富士山を見て「噴火したのか富士山が、大変だ」と言うと、近くにいた子供を抱えた女(根岸季衣)が「もっと大変だよ。あんた知らないの。発電所が爆発したんだよ。原子力の」と答えます。男(井川比佐志)は「あの発電所は6つある。それが次から次へと爆発を起こしているんだ」と話しました
いつの間にか私は海岸にいて、子供を抱えた女と男しかいません。男は「来たよ。あの赤いのはプルトニウム239、あれを吸い込むと1千万分の1gでもガンになる。黄色いのはストロンチウム90、あれは体の中に入ると骨髄にたまり白血病になる。紫色のはセシウム137、染色腺に集まり遺伝子が突然変異を起こす」と煙について冷静に解説し、発電所の関係者を許せないと言います。しかし実は男は発電所の人で、いつの間に海へ消えていました。赤い煙が漂ってきて、私は上着で煙をはらいます
見えない恐怖。確かにそうです。でも見えるのはもっと恐怖。
この映画を初めて見たのは中学生の時、偶然クラスメイトが、土曜日の午後、教室のテレビでこの映画のビデオをみていたときです。本当に衝撃的で、言葉にならない恐怖を感じました。
それから何年もたって、アメリカにいたとき、偶然ベストバイでこの作品のDVDを発見しました。当時私はこれがオムニバス作品とは知らず、中学時代から気にはなっていたのですが、DVDを見つけられずにいました。それを異国の地アメリカで、なぜかお店で紹介されていて、その内容を見てこれがそのDVDだと分かったのです。”世界の黒澤”に感謝です。20代半ばで、改めてこの作品を見ました。
そして今回、この原発事故が起きたとき、まずはじめに思い出したのはこの映画です。
私は原発を真っ向否定する立場ではありません。なくて済むならそのほうがいいけど。
本当に原発をなくしたいと思うのなら、私たちが原発に頼らないライフスタイルを確立しなければならないでしょう。今だからこそ、この映画を見て、皆さんどうかんじるでしょう。