アラスカポロックの漢字学習記録

アラスカポロックの漢字学習記録

漢字検定1級15回合格。漢字検定1級本試験問題の考察、作成した対策模擬問題の公開など。

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(六) 熟字訓・当て字 9/10…標準。この設問も頻出問題は少なく、満点を取るのは困難と思われる問題群だった。
【解答】1そてつ 2もんどり[頻] 3ほたるぶくろ[新] 4ひばり 5ほらがい[新] 6ふのり 7いわな 8ニス 9なまこ 10からさお・からざお
【考察】「山小菜」「梭尾螺」の2問が新出で、頻出問題は1問だった。新出問題は難しかったが、全体の平均点は高いだろう。形式は2文字・3文字共に5問ずつで、若干の変動はあるが、3文字の当て字は4~6問の範囲に収まっている。

(七) 熟語と一字訓読 9/10…やや易。(一)と同じく新出の語彙もあったが、それよりも難易度は抑えられていた。
【解答】1ようとう 2むか[頻] 3せきげつ[新] 4さ[新] 5ようびょう 6はる 7ふじょ 8おく 9しゃくえい 10き
【考察】「螫」の1文字が新出で、頻出問題は1問だった。しかし新出以外はいずれも基本的な漢字であった。

(八) 対義語・類義語 20/20…標準。ここも柔軟な思考が求められる問題が多かった。
【解答】1蠹害[新] 2跋語 3猜疑 4酣酔[新] 5放伐 6奕葉[新] 7書疏 8瞞着 9庭訓 10雲鬢[新]
【考察】「蠹害」「酣酔」「奕葉」「雲鬢」の4問が新出だった。融通を利かせた思考ができたかどうかが得点に大きく響くような問題群である。たとえば「微醺(H23-1で⇔泥酔として出題)」「瞞着(H19-1で≒誑惑、H24-1で≒騙詐として出題)」など、対義語の交換、類義語の言い換えなどが目立った。この設問は語彙の意味の理解が最も応用的に問われるが、解答は基礎的なものが多いため、「対類の関係から1文字を確定させ、もう1文字を推理する」センスを磨くことが理想的である。

(九) 故事・成語・諺 16/20…難。新出・常用漢字の書き取り共に分量が多く、平均的な難度が高い設問であるがそれ以上の難しさだった。
【解答】1盛事 2老蚌[新] 3鰧・虎魚[新] 4巌牆 5弋[新] 6辣韮・薤[新] 7別腸 8一轂 9柳絮[新] 10磧礫[新]
【考察】「老蚌」「鰧」「弋」「辣韮」「柳絮」「磧礫」を含む故事成語が新出だった。3は「虎魚」と書いた方が多かったと思われるが、このように当て字が書き取りで問われることも稀にあるので、一部の当て字(当て字表記が最も一般的であると考えられるもの)については書けるようになる必要がある。なお、この設問に関しては、下記の*1の内容の補足説明となるが、細かな言い換え・読み下しの差異の例外を除いて、書き取り部分ではなく語句全体を1つのデータとして扱っている(そのため「老蚌珠を生ず」や「柳絮の才」は過去に出題歴がある)。

(十) 文章題 28/30…標準。比較的読み易い文章が揃っており、落ち着いていれば高得点を取れる内容。
【解答】1瑪瑙[新] 2袱紗[新] 3玲瓏[頻] 4婆娑 5揉 6須臾[頻] 7集 8比周 9苟且 10出師 アえびちゃ イあわせ ウなまめ エひっさ オそぞ カいとま[新] キえんば クいっすい ケはいかい[新] コこう
【考察】「瑪」「瑙」「袱」「遑」「徘」「徊」の6文字が新出で、頻出問題は2問だった。当て字の読み、常用漢字・準1級配当漢字の読み書きなどが多く、漢検1級を直向きに勉強してきた方にとっては拍子抜けといった感も否めないかも知れない。また、10「出師」のような歴史・教養知識を問う問題もあり、これを検定問題の締めに持ってきた所に何らかの意図を見出せると良いだろう。出典別に考えると、[A]の尾崎紅葉『金色夜叉』は標準、いかにも小説らしい通俗的な漢字が多く問われた。[B]の二葉亭四迷『浮雲』はやや易、ク「一穂」や4「婆娑」など一風変わった問題が多い印象である。[C]の吉田松陰『幽囚録』は標準、8「比周」は連想しにくいかも知れないが、H19-3の読み問題で文中に出題されている。余裕があればこのような箇所までしっかりと目を通しておきたい。


■全体講評 179/200
やや難~難。例年通り、第1回の難易度は相対的に見て高いものとなった。既に設問ごとの項目で詳しく解説したが、過去問で問われたことに固執せず、柔軟に思考する力が全体的に求められていた。自分の持つ知識を正確に把握・整理し、適切な形でアウトプットすることもまた漢検1級の醍醐味ではあるので、初回合格を狙う方にもこのことは頭に留めておいて頂きたい。合格率は10%を少し下回る程度であろう。昨年と同じ流れならば第2回は頻出問題の比重が大きい易しめの問題群になるため、今回惜しくも合格を掴み取れなかった方は各問題集の基礎的な部分を固め、次回に向けて精進されることを願う。
先週行われた平成26年度第1回漢検1級の解答及び考察です。なお、一部を除いて【解答】には標準解答で示されたもののうち一般的な一例のみを採っています。

(一) 読み 29/30…やや難。一般的な語彙は少なく、パズルのように解いていく力が必要とされた。
【解答】1けんちゅう 2たいはい 3あいだい 4そんろう 5べきら[新] 6じゅうゆ 7ぼくれつ 8くぜん 9しよう[新] 10はいがい[新] 11ほうげつ 12ちょうごう[新] 13てんしょう[新] 14けいかい 15けいてき 16ぼくん 17ぎんぎん[新] 18だいきん 19あぼう 20ぼうげい[新] 21あまだれ 22たぎ 23あらたま 24いた 25あこめ 26ししむら 27あずち 28れんじまど 29えら[新] 30いか
【考察】「汨」「廝」「霈」「鼇」「牀」「崟」「旄」「柬」の8文字が新出*1。今回は頻出問題*2は出題されなかった。過去に1・2回出題された語彙は相応にあるものの、やはり過去に漢字自体は出題されたものの、新しい熟語で出題されたものが目立った(4「村醪」、18「餒饉」など)。これらの問題は精神的な余裕があるリピーターにとっては効率的な得点源となるが、初心者にとっては難しかったかもしれない。

(二) 書き取り 28/30…標準。過去問題と新作問題がバランスよく配置されていた。
【解答】1蕁麻疹 2熟 3猖獗 4肯綮[頻] 5軛 6鴟尾 7俚耳[新] 8賺[頻] 9蓴・沼縄 10虫螻[新] 11政柄 12俯瞰 13不堪 14衾 15麩[頻]
【考察】「俚」「螻」の2文字が新出で、頻出問題が3問だった。この統計は漢検1級配当の漢字に限って集計しているため常用漢字のデータはないが、11・13共に過去に出題歴はある。また、「フスマ」の同訓異義語はH12-3、H17-2、H20-2にも出題された頻出問題である。「襖」(準1級配当)も含めしっかりと書き分けを練習しておくべきである。

(三) 国字 10/10…易。目立った難問はなく、十分満点を狙える難易度だった。
【解答】1逧 2毟・挘 3繧 4鯏・鯎 5迚
【考察】国字は全受検者に共通して完璧な状態を保つべき最優先項目である。初心者には魚部・鳥部は数が多くややハードルが高いかもしれないが、合格者のこの設問における平均点を見ても(ほとんどの回で9.8点以上である)ここでの失点は絶対に避けたい。

(四) 語選択 4/10…難。(一)と共に語彙力と想像力が試された。
【解答】1牴牾[新] 2閭巷 3卜筮 4巡錫 5窮措大
【考察】「牴」「牾」が新出。標準的な難易度の問題は3「卜筮」のみで、特に5「窮措大」は語群に目を通して度肝を抜かれた方も多いのではなかろうか。リピーターの間でも点数に開きがあり、ここで大きく失点した人もかなり多いと思われる。

(五) 四字熟語 26/30…やや難。例年に比べ新出問題が多く、初心者には8割のマークも相応に難しかったであろう。
【解答】1豺狼 2萍水[新] 3運斤 4鵲巣 5昏定[新] 6鶴唳[頻] 7洒脱 8尚絅 9膏肓 10同皁[新] 11エ 12コ 13ア 14ク 15ウ
【考察】「萍水相逢」「昏定晨省」「牛驥同皁」の3問が新出で、頻出問題は1問だった。統計の対象ではないが、勿論「運斤成風」も新出である。検定問題全体の難易度に合わせるように、例外なくこの設問の難易度も上昇した。



*1  「新出漢字」及び考察に記した出題回は、当ブログが独自に過去問を調査して作成した資料に基づいている。解答部分が一致する場合のみ出題された年度・回を記す。また調査は「読み・書き・語選択・熟語と一字訓読・文章題」「四字熟語」「当て字・熟字訓」「対義語・類義語」「故事・成語・諺」ごとにカテゴライズして列記している。
*2  「頻出問題」は、出題が概ね4回目以上の場合に記す。