作品名 ドカタバイトきついから書いたやつ

祐介22歳①
仕事ができるようになってきた。朝5時半に起きて現場に行く、高校時代何回も遅刻したのに時間通りに行動できるようになったのは、いやもともとできるタイプだったのか。
22の誕生日を昨日迎えた、舞に祝ってもらった。舞とは17の時にたまたま同じクラスになってそのままずっと付き合ってる、2人で高校を辞めて、今は同居してる。
20時に仕事を終えて原チャですっ飛んで家に帰ったら、舞が誕生日ケーキを用意して待っていた。俺はセブンのフルーツのやつ舞はローソンのモンブランケーキ、舞はこういうのにはこだわる。まあまあ美味しかった、ケーキを食べながらなんか楽しい話をした気がする、高校時代の武勇伝とか、っていってもノーヘルで走ったとかタバコを何箱吸ったとかそんなこと、もう何回も同じ話をしている気がする。23時なると2人で風呂に入って、風呂から出たらすぐにキスをして、生乾きのまま2人でベットに入る。ほとんど毎日sexしてる、舞が生理の時だってしてる、別に今日のが特別ってわけではなかったけど、朝までヤッタ、だから今はすげー疲れてる、徹夜で仕事すんのは久しぶりでフラフラするんだけどもう4年も仕事してればサボり方だってお手の物だ。

祐介、タバコ休憩はえーよ!なめてんのか!

佐々木さん、なめてないっすよ、昨日彼女とやりすぎちゃって

お前!!、、、まあ今日は許してやるよ

あざす、午後はテキパキやるんで!

去年くらいから、適当に返事しても許されるようになった。佐々木さんは今年50のおっさんで俺が働き出した時からずっといる、最初は厳しかったしうざかったけど、4年も同じ現場にいればお互い慣れる。酒はおごってくれるし、周りにも頼りにされている。俺もあんなふうになるんだろうなって最近は思うようになってきた、なりたいか?って言われたらなりたいかもしれない。
小学生の時は野球選手になりたかった、少年野球から始めて中学時代は校内のエースだった。エースなんて決まってるわけではないから、チームの誰かは自分がエースだって思ってるかもしれない、明確な差はお互い特にわからないんだけど、なんとなく俺がエースだと思う。

中3の時やらかした、近くのスポーツ店で万引きした、それが学校にバレた。
俺は選抜チームに選ばれた時にレギュラーになれなかった。選抜チームのレギュラーは中学生のくせに180cmもあって168cmの俺は選ばれなかった、悔しかったし、めっちゃ練習したがその差は埋まんなかった。選抜の練習会の帰り、レギュラーメンバーとみんなで万引きした。俺は別に普通のグローブでよかったのに、なんとなくゼットの高いグローブを盗んだ、レギュラーはみんなそれを使っていた。1人がダッシュで店を出た、俺たちは焦って続いて店を出ようとした、出口から一番遠かったのはセンバツチームで文句なしのエース岸田で俺は2番目に遠かった。間に合わなかった、2人捕まった、出口の前で小学校高学年くらいの子供を連れてる、どっかの少年野球の監督に捕まった。
岸田が殴った、岸田は俺の方をチラリとも見ずに、腕を振り切ってダッシュで逃げていった、子供は俺をじっと見ていた。これが差なんだと思った。
勉強はできなかったし高校は推薦で行くつもりだった、その高校はそこまで強くはなかった、家から少し遠かったけど楽しく野球もできそうだった、その学校では一番になれる気もしてた。全部パーになった。俺は近くの偏差値の低い学校に進学した。部活が退部になってから勉強すればもっと良いとこに入れたかもしれないけど、勉強なんてできる精神状態じゃなかったし、しょうがないと思いこんだ。
高校は部活に入らなかった、部活に入るようなやつは少なかったし、学校に行くようなやつも多くはなかった。1年の時は学校に行っていた、来てないやつもいたけど遠足とかはそこそこ楽しかった。
2年になって急につまんなくなった、いじめられてたわけじゃないが、俺がつるめそうなやつはみんな1年でやめてて、クラスメイトはほとんど部活をやっていて、取り残されたやつも時間の問題だった、タバコを始めた、遅刻するようになった。クラスにはいじめがあって、高野ってやつがいじめられてた、そこまで酷いいじめじゃなかったから学校も何も言わなかった、気がつかなかっただけかもしれない。食堂のパンを買ってこいとか、最初はその程度だった。最初はみんな金を払ってたけど、後からめんどくさくなって高野の自腹になった、ある日クラスの誰かが高野に本を返してこいと言った、俺はその本の中に俺の財布から3千円をとって挟んでおいた。高野は気がつかなかったかもしれない、何の意味もなかった。こういうのに気がつかないからいじめから抜け出せないと思う。高野は学校を休み出した。
高野が学校に来なくなるといじめは終わった、最初の2.3日は落ち着きがなかったクラスもテスト期間になるとテストの話になった。俺も高野より数学の方が気になった。テスト期間になり部活動がなくなると皆一斉に帰ることになった、その時くらいからなんとなく居場所ないことに気づいた。

夏休みはものすごい暇で何もかもが退屈だった、バイトして金を貯めても使うものがなかった。
その時から俺は原先輩と連むようになった、たまたまバイト先が一緒だった、原先輩は去年、同級生の裸を流出させて退学になった先輩で、その話を自慢げに語った。

クラスメイトにさ、エアドロップでおくってやったんだよ、みんな大爆笑してたぜ。

その人どうなったんすか?

学校辞めて風俗落ち、笑えるだろ

やばいっすね

その人は中学の時の野球部でマネージャーをやってた人だった、優しかった、部員全員にチョコレートをくれた、女子からもらった初めてのチョコレートだった。
優しすぎたんだと思う、優しいからこんな先輩にひっかかるし、裸も撮られる。写真を見せてくれた。頬を赤らめて裸でピースしていた。俺はこの人が遠くの学校に転入したのを知っている、違う制服を来て、新しい学校の友達と歩いているのを見た。原先輩は嘘をついてる、全部嘘だと思い込んでピースはしなかったけど俺は笑った。

原先輩は不良とつながりがあった、夜バイクで走ったり、中学生の女を回したりするらしい。

今日集まりがあるから紹介してやるよ

断る理由もなく俺は参加した。

たくやにあったのはその時が初めてだった、たくやは同じ17歳で、バイクを持ってない俺はたくやのうしろにのって走った。先頭は5歳くらい上でリーダー的存在の橋下さんが走っていて、俺たちは真ん中の方、原先輩もそこ、後ろの方は俺たちより2、3歳上のやつが走っている。
静かな街を全速力で走る、多分あんまスピードは出てないけど、全速力に感じた。
爆音でエンジン音が聞こえる、この音を吸収できるほどでかい建物がなく、街全体に響き渡る。金属バットで地面を叩く、キーンという音だけが耳障りだったけど、それ以外は気持ちよかった。

今日が、、、、、、だろ?

なに?

今日が初めてだろ!!!???

そうだよ!!!

楽しんでこーぜ!!!!!

俺は最後返事ができなかったが、たくやは聞こえなかったらしく楽しそうにエンジンを鳴らした。

それ以来、俺は集会に行くようになった、水曜と土曜にある集会、何か他に楽しいことがあったわけでもないし、家にはいづらかった。


10回目くらいだった、橋下さんが集会に来なかった、ほかの連合と喧嘩になったとかで他のメンバーもちらほらいなかった、原先輩の仲間と、たくやと俺が残った。

蒸し暑くて俺たちだけで走るわけにもいかず、マックで時間を潰すことになった、原先輩の仲間の誰かが提案した。
マックについて、いかにもガラが悪そうに4人席2つに10人で座った。

祐介、マックシェイック

誰かが言った。続いて誰かが言った。

コーラ、あとポテト、チキンクリスプ

嫌っすよ、俺金ないっすよ

高野だったら言わない、俺は言った。すげー小さな声で。

お前バイトしてんだろ、全員分な。

原先輩が言った、俺を見てなかったと思う。

俺も出すよ祐介

たくやが言った。
なにも喋らないと高野みたいになると思った、俺は

ふざけんなよ、俺来週120キロ出しますからね。

すげー小さな声で言った。

みんな笑ってた、これで良かった、成功した。違う話題にかわって笑い声が聞こえる席を後ろにレジに向かった。たくやの2千円に俺の財布の千円をだし、左手で3千円にした。

マックシェイック4、コーラ6、チキンクリスプ10、あとポテト10。

下を向いて早口で言った。

3500円になります。

俺はポケットにも入れずに、左手に持った3千円をカウンターに出した、あからさまに、ほんっと小さく、

ちっ

と言って、財布から500円を出した。

祐介?

店員がそう言った。
舞だった。これが舞との初めての会話だった。

祐介、なんか意外だね、友達?

俺は緊張していたし、恥ずかしかったけど、表情に出さないように、落ちついていった。

まあ、そんなもん。夏休みだから。

夏休みだからって理由に納得したかわかんないけど、舞はどうでも良さそうに

ふーん

と言った。
パシられてることを悟られたかもしれない、急に恥ずかしくなった。

あ、あとアップルパイ頼む。

ちょっとの沈黙も我慢できなくて、咄嗟に目に写ったアップルパイを頼んだ。

10個?

1つ、いや2つ頼む。

りょーかい。3800円ね。

舞はどうでも良さそうに言った。
俺は財布から300円を財布の中で2.3回転がして、時間をかけてだした。

さんきゅー

俺は舞とこういう時に早く出してくるマックに感謝の言葉を述べた。
なにもなかったように2つのトレーを持って席に戻った、みんなまた違う話で盛り上がっていた、誰々の彼女は可愛いとか、ヤリマンとか、病気を持ってるとか、そんな話。
俺はトレーを中央に置いて、アップルパイを1つたくやに渡し、もう1つのアップルパイの箱を急いで開けた。

悪いな

熱いアップルパイを見ながらたくやにそう言った。

いいよ、前まで17は1人だったから。

悲しそうに、でも慣れたようにたくやは答えた。
その日の集会は中止だった、後から聞くと連合の誰かが骨折する大きな喧嘩だったらしい。俺たちの連合が勝った、橋下さんが4人ボコボコにしたらしい。
しばらくはみな殺気だっていた、喧嘩に行かなかった奴らも、次あったら殺すとかなんか言ってた。俺とたくやは連合の真ん中の方で蛇行しながら、ただ走った。気持ちよかった。もう金属バットの音も気にならなかった。

二学期になって、ほとんど学校にいかなくなった、学校にもう居場所はなかった。ずっと夏休みが続いてる感じだったけど、それはそれでつまらなかった。


2学期のある日、遅刻して学校についた、教室を開けたら誰もいなかった、遠足の日だったが俺には知らされてなかった。舞だけがいた。2人で大爆笑した。次の日2人で退学した。
舞とはその時から付き合ってる、初めてのsexも舞だし初めての彼女も舞だった。
舞は容姿は特別に可愛いわけではない、目が細くて、胸もちっちゃくて、身長は高いけど、それ以外は普通。
高1の時はクラスが違ったけど舞はちょっと有名だった。勉強もできて優秀だった、弟の病気のために近くの学校に進学したらしいけど、嫌味なく学校に馴染んでいた、部活動の勧誘も頻繁に受けていたが、弟の病気のために参加していなかった。高2の1学期に舞の弟が死んだ、身体が弱くて学校にも行ってなかった、10歳だった。
弟が死んで、それ以来クラスでも孤立し学校を休むようになった。学校に来るようになった時、耳にピアスがついていた、そのピアスが印象的だった。クラスメイトは舞を避けた、舞が変わったのは誰にでもわかった、舞も俺と同じで居場所がなかった。















祐介22歳②
俺とたくやは工事現場で働いていた、俺たちはいちよ正社員で18の時就職した。就職って言っても先輩に紹介してもらって、挨拶しに行った、丁寧に迎えられて、二つ返事でOKした。採用したやつはすげー偉そうで給料日以外は見なかった。働きたかったわけではないが、舞との生活もあるし、仕事について、家を出たかった、たくやも似たようなもんだった。毎週水曜と土曜の集会には行けるように、実家からたいして離れてない安いアパートを舞と借りた。たくやも近くに引っ越した。俺はたまに実家に帰っていたが、舞はアパートにずっといた。去年くらいから集会は不定期に行われるようになっていた、橋下さんが組に引っ張られて、連合がバラバラになった。原先輩は急に来なくなった。後から聞いた話だと専門学校かなんかに入ったらしい、俺とたくやは残った、気がついたら先頭を走るようになった、後輩がちらほら出たり入ったりしたが特に気にすることなく集会に顔を出し続けた。
連合は大きくなるわけでもなく、だんだん小さくなっていく。夜の街を爆音でエンジンを鳴らして走っているのに、平穏な日々だった。すでにつまらなくなっていた、俺もバイクを買ったが安くてカッコだけのバイクを好きに慣れなかった、街でBMWを見ると、恥ずかしくなっていちいちエンジンを切った。20の時、連合を辞めた。

たくや、これ言うなよ?

なに?

喉にあった、かなり前からあった言葉、たくやも何となく、そう思ってる気がして、それでもずっと言わなかった言葉を言った。

俺、連合やめるわ

2人で目があった、2秒くらい、たくやが笑った。

俺もやめる、言いたかったんだよ、ずっと、なかなか言えなかったわ。

たくやは正直に言ってくれた、正直でいられる関係が俺とたくやで自然と築かれていた。素直に嬉しかった。
俺たちは次の日から連合に行かなくなった。連合に行かなくなった分、パチンコに行ったり、飲みに行ったりした。

午後の仕事が終わって、集合場所でたくやと会った。
誕生日おめでとう、これやるよ。

包装されてない箱をたくやはくれた。去年はG-SHOCKをくれた、その前はバイクのライトだったきがする。バイクのライトは俺がその時欲しかったやつ、ただ普通のバイクより光るやつ、カッコ良くもないんだけど、みんながつけてるやつ。時計も似たようなものだった、周りの職場で皆が付けてる時計、そんくらいのブランド、佐々木さんクラスのおっさんは100万くらいのロレックスなんかをつけてるんだけど、俺たちはまだ早い。

ありがとう、めっちゃ嬉しいわ
箱を開けたら10万くらいの時計だった。

パチンコで勝ったんだよ、俺たちはそろそろG-SHOCKを卒業しなきゃ行けないからな!

俺も、去年たくやにG-SHOCKを買った。G-SHOCKは便利だし、壊れないし、流行っていたから買った。

お前はG-SHOCKずっとつけとけよ

半分冗談、半分本気で言った。10万の時計を俺たちが持ってたって、誰も金持ちだとは思わないだろう、金持ちの大学1年生はもっと良い時計してる。でも、たくやからもらうことがやっぱ嬉しい。俺も10万くらいでなんか買ってやろう、しばらくはパチンコなんか行かないで金を貯めようと思う。舞には何ももらわなかった、舞は別に誕生日だから特別じゃなかった、舞はいつも特別だ。
たくやは朝まで飲もうと言った、明日は仕事が休みだから、了承した。舞に連絡を入れた。
「たくやと飲みに行くから、朝帰る」
無料のクマのスタンプがすぐに帰ってきた。

いつもの安い居酒屋で、うるさい大学生の横で、負けずに飲み騒いだ。日付が変わってたくやが言った。

俺、仕事辞める

酔いが急に冷めた、酔いじゃない何かも急に冷たくなった。

なんで?

俺、組に誘われててさ。

橋下さんのとこ?

そう、橋下さんが何人か入って欲しいって言ってて、俺、あの人に救ってもらったから。

……

祐介もこいよ、お前と一緒なら……

俺は組に入りたくなかった、似たような生活が続くと思ってたし、考えてみても入る理由がなかった。直接誘われなかったことも、たくやから誘われたことも嬉しかったけど悔しかった。

お前と一緒なら心細くない

俺は笑った、たくやの正直のところが俺は好きだった。俺が笑ったから、たくやも笑った。

救ってもらったって何を?

俺、高校の時いじめられてたんだ、川に制服全部流されて、橋の下にいる時に橋下さんにあったんだ

橋の下に橋下かよ笑

頑張って笑いにした、たくやは笑わずに言った。

冗談いうなよ、そん時に連合に誘われたんだ、橋下さん以外には嫌なことされたけど、橋下さんだけ俺に優しかったんだ。

俺だって優しくするから、今の仕事を続けよう、思いついても言えなかった。

わかった、俺はやんない、ヤクザこえーもん

笑いながら言った。

頼むよ、一緒に……でもそうだよな、お前は真面目に働くし、今の職場が似合いだわ。金がなくなったら頼んでくれよ、組の方が今よりは儲かりそうだろ?

下っ端はこき使われるんだよ

笑いながら言った。

うるせーよ、俺は上り詰めてやるからな!

2人で笑った、2人でグラスに手をやった、自然と目の前のビールを一気に飲み干した。隣の大学生に負けないくらい。

朝、酔っ払ったたくやを家まで送って、そのあとコンビニでタバコを買って、吸いながら帰った、早足で。家には舞がいた、味噌汁を作ってくれた。俺はインスタントの豆腐の奴が好きで、他の味は何個も余ってた。舞は新しくパックを買ってきて豆腐の味噌汁を作ってくれた。布団に入って、眠りについた、いつものようにぐっすり眠れた。何も変わらない休日だった。18時まで寝た。いつも通り、舞が仕事に行く前に起きた。

起きたの?具合悪い?

大丈夫

原チャ貸してね

鍵は玄関ね

OK

玄関まで送りにいく。

頑張ってね

ゆうすけも頑張ってね

俺は今からまた寝るだけだから

うん、じゃあね

舞は仕事に行った。

舞の仕事は夜の病院の清掃だった、給料が高いから、その分回数を減らせる。舞はそう言っていた、実際週に3日くらいしかシフトに入っていなかったし、俺は舞にそれ以上働いて欲しくなかった、貧乏だったけど、なんとか生活できた、食事、電気、水道、パチンコ、飲み、コンドーム、これくらいにしか金はかからなかった。子供ができることを舞は恐れていた、貧乏だからかも知らないけど、それ以上にもっと違う何かを気にしていた。弟のことだと思うけどそれ以上は言わなかった。俺は舞といるだけで幸せだったし、sexなんかしなくてもよかったけど、sexの時は舞も幸せそうだった。

その日からたくやと会わなくなった。何度か連絡はした、だんだんと返信が遅くなり、自然と返信が来なくなった。

















祐介23歳
1年くらい経って、23歳の誕生日が来た。
何も変わらない生活を送っていても誕生日は来る。舞はおめでとうと言ってくれた。去年と変わらない、コンビニでケーキを買って家に帰った、2人でローソンのモンブランケーキを買った、俺はモンブランが好きになっていた。舞が生理だったから、舞の前に風呂に入った。実際俺はシャワーしか浴びなかった。舞は風呂から出ると、自分で髪を乾かして、テレビをつけた。俺は舞の頭に手を乗せて髪を乾かすのを手伝った。同じシャンプーを使ってるのに舞からは良い匂いがして、顔を近づけた。
その日は2人で布団に入ったけど何も喋らずに舞が先に寝た。こっちを向いていたから舞の口を指でなぞって、それから舞の耳のピアスをなぞった。俺は寝れなかったから布団から出てタバコを吸った。朝起きても、舞は寝たままだった。寝返りを打って向こう側を向いていた。俺は仕事の支度をして、ご飯とわかめのパック味噌汁とってお湯を沸かし朝食を取った。家を出る時も舞は寝ていた。

行ってきます

小さな声で言って、玄関を出た。


仕事の帰りにたくやにあった、パチンコ店から出てきたたくやに話しかけるか迷ったけど、たくやが俺に気づいて声をかけできた。

祐介!

たくや?久しぶりだな。

黒いスーツに柄物のシャツ、いかにもって感じだった。

もう23歳?誕生日そろそろじゃなかったっけ

昨日だよ

変わらないね、祐介

40歳まではこの見た目がいいね

それは無理だろ

たくやは笑った。

飲みに行こうよ、奢れや、金持ってんだろ?

俺から笑いながら誘ったけど、これから予定があるから無理だと断られた。

お前は元気か?

元気だよ、体使わなくなったからちょっと痩せたけどね

明らかに痩せ細ったたくやはそれを自分でも気にしてるみたいに言った。

痩せすぎ、それじゃあ人殺せねーぞ

笑いながら冗談で言った。

人は殺さないよ、偏見だ偏見

冗談は成功したと思った、たくやも笑ってた。

金、ある?

たくやから聞いてきた。俺が会話繋ぎに、適当に言おうとしたことを、たくやは本気で言ってきた。あるわけがないけど、ないとは言えなかった。

必要なの?

必要、40万くらいほしい

40万はちょっとではないだろって笑に変えたかったが、しなかった。

なんで?

理由は聞くなよ、大した理由じゃないから

30万くらいならすぐ出るよ

断れなかった。コンビニに行って30万円を口座からおろした。舞と共同で貯めているお金、残金は15万円、今月の食事代がギリ払えないくらいの金が残った。

ありがとう、裕介、返すよ今度、誕プレと一緒にな、おめでとう

うるせーよ、あんま無理すんなよ

笑いながら言ったけど、本気だった。

ありがとう、本当に、じゃあ、行くわ

たくやは急いで、止めてある、いかにもって感じの黒い車に乗って帰った。

舞にこのことを話した。

シフト……増やすから

ごめん、でも今月だけだと思うから

私は大丈夫、たくやくんが心配

俺も

続かないよね?

続かないよ、俺が続かせない

自信はなかったけど、舞も自分も安心させたくて、力強く言った。

それからたくやから頻繁にLINEが来るようになった、金額は前ほど多くはなかったけど、回数が増えた。その度にたくやとパチンコ店で待ち合わせした、相変わらず痩せていたし、元気そうでもなかった。心配だったけど、何もできなかった。

舞は別の仕事についた、なんの仕事か詳しくは喋らなかったけど、夜の仕事で前より給料が良いらしかった、詳しくは聞かなかった。俺はパチンコにも飲みにも行かなくなった。毎日仕事をして家に帰る。舞も仕事を増やした、会う回数が減った。

ある日職場で舞の話になった。
佐々木さんが言うには舞に似た女が風俗で働いてるらしい、名前は”めぐみ”だったが顔は舞だったと言う。同僚の誰かが笑いながら言った。

祐介の彼女とやったってことですか?

まだ決まったわけじゃないよ、でも風俗嬢にしては可愛かったなぁ

俺も行きたいです、今度紹介してくださいよ
同僚は揶揄うように言った。

そんな会話が始まった、フェラが上手かったとか、けつが汚かったとか、俺は心の中でずっと嘘だと思った。舞がそんなことするわけないと思ってた。風俗の話で盛り上がるのはいつものことだった、いままでは普通に笑っていられたが、急に笑えなくなった。

家に帰って、舞に聞いた。

風俗やってるって本当?

……

黙らないでほしかった、なにそれ、とか、冗談言わないで、とか、馬鹿じゃないの、とか、なんでも良いから否定してほしかった。

本当に風俗で働いてるの?

……うん

どうして?

……お金……欲しかったから

たくやに金を貸し始めて、確かに生活は厳しくなった、それでも俺が節約すればギリギリ足りていたし、贅沢しなければギリギリ生活できたはずだった。

ギリギリだったけど、生活はできたじゃん、どうして……

……

2人とも黙った。俺は舞を攻められなかったし、舞も俺を攻めては来なかった。俺はどうしてもいられなくなって、薬缶に水を入れて火をかけた、味噌汁を飲もうとした、具なんてなかったけど、なんでもいいからあったかくて味のあるものが飲みたかった。

舞のためを思って俺と舞は別れた。アパート代は俺の給料から出していたし、舞は実家に帰ると言った。俺は嘘だなって思ったけど、何も言えなかった。
俺は仕事を続けた、現場では黙々と働いた。たまに”めぐみ”の話になった。

結局めぐみちゃんは祐介の彼女だったのか?

同僚が聞いた。

そうだよ、あのバカ女、sexが好きなんだよ

舞のことをあのバカ女なんて言ったことはなかった。
まだ付き合ってんの?

別れたに決まってるだろ、あんな女

舞のことをあんな女なんて言ったことなかった。

めぐみちゃん可愛いかったよな?

他の同僚が言った。

俺今日行こうかな、まだ働いてんの?

働いてる、働いてる

佐々木さんが言った。佐々木さんは何度も通ってるらしい。

別れて1ヶ月が経ったのに、舞はまだ働いてるらしかった、俺だけが原因じゃなかったと思うと、ちょっとだけ安堵した、それでも悲しさはあった。

もう行かないでくださいよ

最初は笑っていった。

めぐみちゃん、若いし人気なんだよ。無料でさせてくんねーかなぁ

佐々木さんが言った。

もう行かないでください

俺は怒鳴った、怒鳴るつもりなんてなくて、いつもみたいにヘラヘラ言うつもりだったのに。

一瞬、みんな固まった

は?急になんでだよ、もうお前の彼女じゃねーんだろ

誰かが言った。

お前が金なくて風俗に落としたんじゃねーの?

誰かが言った。

高い金払って生活救ってやってんだから感謝して欲しいくらいだわ

佐々木さんが言った。
俺は佐々木さんを思いっきり殴った。手が出た、何も言い返せなかったから、手が出た。佐々木さんは怪我をして1ヶ月仕事ができなかった。殴ったのに中学の時とは違って、俺は全部失った。10万円の時計は残った。

たくやとも会わなくなった、たくやはどこにもいなくなった。

金、本当にありがとうございます。今は返せないけど、いつか返す、ちょっと仕事で遠くに行くからさ、それが終わったら飯でも行こうな

そんなLINEが最後だった。

しばらくは貯金で暮らしていた、もともと贅沢はしなくなっていたし、飯を食って寝る生活だけだった。誰からも連絡は来なかった。LINEのトーク履歴には何ヶ月か前のたくやと舞しかいなかった。

金が尽きて、もう疲れた。俺は死のうと思ってビバホームで炭を買った。ついでにコンビニでモンブランケーキを買った。部屋を締め切って炭を炊いて、モンブランケーキをたべて、布団に入った。目をつぶってしばらく経った、なかなか眠れない、そんな時遺書を書いてないことに気づいた。
何に書こうか迷うことはなかった、会社でもらった手帳を引き出しから出した、手帳に書き込む予定なんてほとんどなく、少しだけ先が折れていた以外には、ほぼ新品のままだった。手帳の最後の方に封筒が挟んであった。自分で挟んだ記憶はない、封筒を開けると10万円が出てきた。

祐介へ

舞の字だった。いつ入れたのだろうか、だいぶ前だったのかもしれない、俺はこういうのに気が付かない、鈍臭いやつだった。
遺書を書くのは辞めた。
もう遅いと思ったけど、舞にLINEした。

いま、死のうと思ったんだ。遺書を書こうと思って、手帳を見たら封筒が出てきた。
俺、仕事辞めちゃってお金もないけど、この10万円を舞とやり直すために使いたい。玄関の鍵は開けときます。ごめんなさい、舞の事好きだからLINEしました。

ごめんなさいと好きをたくさん言いたかったけど、かっこが悪いから1つずつにした、玄関に行って鍵を開けた、部屋に戻ると窓を閉め切って布団に入る。一番安いやつを買ったから、煙が充満しないのに気づいた。俺は炭を枕の横で焚いて、大きなビニールを被った、そこに煙が入るようにした。炭の匂いがした、それでも案外ぐっすり眠れそうだった。恐怖はなかった。






弟の病気で、仕方なくこの高校にきた。近くの学校、偏差値は低い。1年で大半はやめる、そんな学校だった。勉強なんかしなくてもそれなりに成績は取れた、この学校に馴染めない事は入学してすぐに分かった。友達も教師もみんなつまらなかった。それでも2年までは頑張って笑顔を振りまいて精一杯楽しく過ごした。2年の1学期に弟が死んだ、予定よりだいぶ早く死んだ。どうせ死ぬなら高校に入る前か、大学に入ってからにして欲しかった。母は弟を大事にした、小学校の時からずっと弟につきっきりだったから、私は放置、弟病気あるあるだと思う。弟は可愛かったし、姉の私にも優しかったから、全部許した。私が中学の時に父が蒸発した、弟の看病に嫌気がさしたのだと思う、どっかに女を作って2人で逃げた。母は責任感が強いから弟をより一層愛した。中学生の私には作る男もいなくて、私は家に残った。
弟が死んだのはすごい悲しかった、あれだけ私と母で愛したのだからもっと長生きしてほしかった。私はなんとなくピアスを開けた、おしゃれなんかした事なかったけど、もともとスタイルは良かったし、短髪の髪にピアスはよく似合った。高校では周りの目が変わった、私は笑わなくなった。元々作り笑いだったのだから、別に私に取っては普通のことだった。当然のように周りのクラスメイトも教師も離れていった。
秩序が破れる、そんな感じでクラスにいじめが始まった。高野っていう男子がいじめられ始めた、何も知らない担任に学級委員だった私が相談された。私はありきたりなことを言った、ありきたり、ありきたりな事実を言った。こんな学校じゃ多少のいじめは当たり前にある、そのことを担任も知っている。担任はなにもしなかった。

高野が来なくなった、これでいじめは終わった、どうでも良かったので定期テストの勉強をした、定期テストももはやどうでもよかった。
担任が言った。

舞、高野と家近かっただろ?

はい

高野の家に学校の連絡物持ってってくれよ、学級委員だしさ

めんどくさそうに担任は私に言った。

わかりました。

女の子の方が高野も喜ぶだろ?

そうですかね、頑張ります

笑いながら言った。
2人ともめんどくさかった。私が担任ならそうしてた。

高野の家に行った。
玄関の前まで行くと、高野の母親が出た、これも定番、不登校あるある。

学級委員の桜井舞です、高野さんに学校の連絡物を届けに来ました、お元気ですか?

わざわざありがとうございます、真は部屋にいます、良かったら上がっていきませんか?真も喜ぶと思います。

高野が真って名前だと初めて知った、真だといじめられんのか?なんて思った。

断れずに部屋に上がった、玄関には高野と親の3ショット、我が家のはだいぶ前に無くなっていた。羨ましいとは思わなかったけど。

高野の部屋に入った、シャツにジーンズを履いて、高野は外を見ていた。

久しぶり、高野くん。元気にしてた?

……

定期テスト近いから、勉強してる?

高野はそれなりに勉強ができた、担任もそれなりに勉強ができる生徒には表面上は優しくする、学校から優しさが送り込まれた。私は優しさを演じた。

してないね、まだ

私は始めた、高野くんに負けたくないしね

桜井さんには勝てないよ勝ったことないし

でも私数学苦手だから、数学は負けちゃうかも、他は勝つけどね

高野は数学ができた、と言っても普通よりちょっと、ちょっとだけ、私よりちょっとだけできない程度。

あんなバカ高校行かなくなって同じだ

高野の言ってることは正しいと思った。母親が階段を上がる音が聞こえてきた。

私は数学のノートを出して、高野でもわかりそうな問題を選んで高野に聞いた。

ここ、わかんないんだけどさ、教えてよ

高野はペンを取って考え出した。そこに母親が入ってきた。

お茶とお菓子、ここに置いておきますから

ありがとうございます、いま高野くんに数学を教えてもらってたんです、もうすぐテストだから

優しさを演じた私は、高野の母親を見て言った。

まあ、真は昔から数学だけはできたんですよ

嬉しそうに母親は言った。私の優しさ作戦は成功した。

高野は何かを思いついたように喋り出した。母親はそれを見てドアを閉めた。階段を降りる音は聞こえなかった。私は気づかないふりをして、高野が言ってる事を適当に聞き流した。

高野の家にはそれから何回も行った、高野が学校を辞めるまで。高野の母親にも、学校にも頼まれていたし、放課後やることがなかったのもあった。少しだけ高野といる時間が楽しくなった。定期テストが口実だったが定期テストが終わっても通った。いつものように母親が迎えてくれた、毎回お茶と、少しのお菓子が出された、階段を降りる音はいつも聞こえなかった。
高野が言った。

俺、学校辞めようと思う

どうして?
疑問にも思わなかったけど、聞き返した。

あんなバカ高校卒業したって意味ないし、大卒検定取って大学行くことにする

どこ目指すの?

早稲田

辞めなくても良いんじゃない?

嫌味を込めて言ったのに高野は気がつかなかった。

辞める、勉強するから、学校に行く時間無駄だし

親は心配してないの? 

親は良いって言ってる

そっか、高野くんがいなくなると寂しくなるね

思ってもないことを言った、外にいる母親に聞こえるように。

桜井、優しくしてくれてありがとう、俺桜井のこと好きだ

高野が学習机から離れて、ベットの上に座る私の横に座った。私が座れる場所はベットしかなかった。

あ……

高野は私の腕を押さえてベットに押さえつけた、高野の力はやっぱり男で、私の力はやっぱり女だった。

高野は練習してきたかのように私を横にして、私の上に乗った。

桜井の気持ちはずっと知ってたよ

高野は私にキスした。

私は抵抗したのに、全ての音はベットと枕と床と壁と、そしてドアに吸収されて、何もできなかった。高野は私のYシャツを一気に上まで脱がして、スカートのチャックを開けた。高野はパンツを下ろして、私に襲いかかった、どこからともなくコンドームを出して装着し、私のパンツも下ろした。高野は私の口を私のまくれたYシャツで押さえて、乾いた私のまんこに、入れた。涙が出るのもYシャツで抑えられた。初めてのsexだった、血が出てるかどうかも確かめられなかった、かろうじて息をする事しかできなかった。
2分くらい抵抗したと思う、なんの意味もなかった、もう何もしなかった。息だけは止めようと思っても止まらなかった。終わりが来た、終わった。何もなかったように高野はパンツを履いてズボンを履いた。
高野は私の股下をテッシュで丁寧に拭いて言った。

俺がいじめられてた時、3千円、本に挟んだの桜井だろ、俺あん時、死のうと思ってたんだ、でも桜井のおかげでこの世に救いがあるって思ったんだ

私は急にたくさん涙が出てきた、高野にパンツを履かされたのがよっぽど悔しかったのかもしれないし、もっと根源的などこかから涙が出てきたのかもしれない。
3千円、高野が返しにきた本に挟まっていた3千円。クラスで誰も近づかないゆうすけが本に挟んでいるのを見た。高野が気がつかなかったから、私が教えてあげたんだ。いじめを見て見ぬふりしたからかもしれない、回り回って私のとこに天罰が来たのだ。そう思うといろんなことがどうでも良くなった。スカートは自分で履いた、髪の毛は自分で整えた、もともと短髪だったから、すぐに整った。

……もう帰るね

精一杯の声で言ったのに、すごい小さい声になった。

ごめん

高野が言った。私は何もなかったようにドアを開けた、高野の母親がうずくまって泣いていた。殺したくなった、女の涙なんてなんの意味もないことを伝えたかった。

お邪魔しました

私はお辞儀して、階段を降りた、音を立てて降りた。
次の日、高野は学校を辞めた。



夏休みが始まった、弟が死んで母親は徐々に何もしなくなった、仕事も辞めたみたいだった。父親が家賃を送ってくれるようになったから生活はできたが、私はなんとなくバイトを始めた。バイト先でゆうすけに会った。ゆうすけは町の不良と連んでいた、学校で見るゆうすけと同じで別に楽しそうじゃなかった。
ゆうすけが1人でカウンターに並んでいる、3千円を握りしめている。ゆうすけの誰にも気づかれない優しさは不良グループの中では利用されていた。私は話しかけたくなった。

祐介?

下の名前で読んだことなんてなかったのに、祐介って声をかけた。ゆうすけはパシられてる事を悟られないように、適当に応答した、私も何も知らないというふうに綿密に設定されたマニュアル通り適当に応答した。

2学期が始まると、私は学校に行かなくなった、何度か家に電話があった、母親は電話に出なかった、学校以外の電話はかかってくるはずもなく、私も電話に出なかった、私の家には誰も来なかった。大学には行く気にもなれなくて、勉強もやめた、息をする以外は何も、学校もやめようと思った。
担任からの電話をとった。

舞?元気か?

元気ではないですけど、大丈夫です

学校、もう来れないか?
どうでも良さそうに担任は言った。

私、学校辞めます

そうか……

はい

残念だ、でもこんな学校、行かなくても同じだもんな

先生方がそれだから、ダメなんですよ

言ってやった、ずっと言わなかった事。

なんだと?何が言いたいんだ

先生方が生徒をバカにして見放すから誰もついていけないんですよ

俺はお前をバカにしてないぞ、お前はしっかり勉強してたじゃないか、この学校のここ数年間の生徒の中で優秀だったじゃないか、何が不満なんだ

担任は怒鳴った、本当に何が不満なのかわからないのだ、教員になる奴は優秀で私たちのような学生生活を送ってないんだ、頭がよかったら想像できるだろうに、頭が良くないのに教員になれるんだと思った。

私じゃないんです、私が良くてもクラスが良くないんです

言えなかった。言わないで諦めた。

不満じゃないです、ごめんなさい先生

どうしたんだ舞、彼氏にでも振られたのか?

こんな冗談、笑えなかった、彼氏なんてできた事なかったし、母親でさえ私のことを舞なんて呼ばなかった。悔しかったけど笑った。

私勉強することにしたんです、勉強して大学に行きます

嘘をついた。

お前の将来が心配だった、大学に行くのは良い選択だ、いつでも力になってやるからな

適当に言ったのがわかった。

学校に荷物を取りに行った、クラスメイトは誰もいない遠足の日、ディズニーランドに行っているらしい、ディズニーランドなんかを選ぶのだから学校は適当だなって思う。
学校について、私の席は一番後ろになっていた、何も置いてなかった、高野の席もゆうすけの席も一番後ろになっていた、この班でディズニー行きたかったな、なんてちょっと思った。祐介の机には誰かの国語便覧が置いてあった、ずっとそこにあったみたいに分厚くて重そうだった。
荷物を整理して席に座った、外では体育の授業やっている、図書室で借りっぱなしの小説を開けて、途中から読み始めた。つまらなかったから、2.3ページ読んで本を閉じた。後ろのドアが開いた、先生かと思ったけど、制服をだらしなく着た祐介が立っていた。
2人で目があった。

祐介、今日遠足だよ?

しばらく沈黙があった、外では金属バットの音が鳴り響く、野球をやってるようだった。キーン、多分大きな当たり、外が少し静かになって、すぐに大きな声が聞こえてきた。ホームランを誰かが打った。祐介が笑って言った。

マジか、知らなかったわ

祐介が悲しそうに笑ったから、私も笑った、私はちょっと嬉しかった。次の日学校を辞めた。そして祐介と付き合い始めた。

















学校を辞めてからも、しばらくはいつもと同じ生活を始めた。起きて、テレビを見て寝る、お腹が減ったらご飯を食べる、食べない日もあった。母は相変わらずやつれて、部屋から出て来なくなった。最初のうちは母の分のご飯も作ったけど、しばらくして作らなくなった。祐介と遊びに行くことが増えた。最初は高校生らしい事をたくさんした、プリクラだって撮ったし、恋愛映画だって見た、どれもこれも私たちが失ったもので、時間をかけても取り戻せそうにはなかったからやめた。祐介が1人暮らしを始めた、私は祐介と住むようになった。家を出る時、母には何も言わなかった、私は必要なものを整理した、荷物はリュックサック一つに収まるくらい少なくてて、思い出はもっと少なかった。
祐介は就職して、朝早くから家を出た、私は昼まで寝て、祐介の夜ご飯を作って、祐介と朝まで寝た。祐介が仕事になれて同僚と遊ぶようになると、私は仕事を始めた、弟が死んだ病院で清掃員として働いた。知っている人も何人か見たが、向こうは私には気がつかなかった。弟とたくさん喋った小さな公園を見ると懐かしく思った、ちょっとだけ優しい気持ちになった。その優しさを祐介に分けた。先の事は考えたくなかった、ずっと考えないようにして、仕事して。仕事が休みの日はsexした。幸せだった。休日には祐介と映画館に行った、車は持ってなかったから2人で切符を買って電車で行った。帰りに安い居酒屋でお酒を飲んだ、お酒を飲んだら恥ずかしくなくなって手を繋いで帰った。知り合いにもたまにあったけど、気にならなかった。

祐介がお金を使うようになった、友人に金を貸しているらしい、少しだけ生活が苦しくなった、映画館に行かなくなった、sexはしたけど手は繋がなくなった。私は仕事を変えた。
新しい仕事は風俗だった、知らない男とsexをしてお金をもらう、最初は嫌だったけど、すぐに慣れた、すぐに慣れるだろうと思っていた。祐介には言わなかった。
お金は増えた、私は自分の口座を作ってお金を貯めた、なんのためのお金なのかわからなかったけど、とりあえず先のためにお金を貯めた、少しずつ先のことを考え始めた。祐介との生活がすれ違うようになった、祐介は同僚と遊ばなくなったが、私が仕事に行く日が増えた。祐介とsexをしなくなった、それでも祐介は2人の時間を大切にしてくれた。
ある時、仕事のことを聞かれた。

風俗やってるって本当?

いずれバレると思ってた、本当だと言った。理由を聞かれたけど、理由なんて特になかった、ただなんとなく始めただけだった。お金が必要だと答えた、お金の話をすれば祐介に責められないと思った、でもそれ以上は言えなかった。
祐介は味噌汁を入れてくれた、なんの味かは忘れてしまった。ゆうすけが好きな豆腐の味噌汁だった気がする。
私たちは別れた。最後にsexをした、ゴムはしなかったけど、祐介は中に出さなかった。私たちはそのまま寝た。次の日の朝、私はアパートを出た、今更実家に帰れなくて、近くの漫画喫茶で新しいアパートを探した。祐介を心配させたくなくて実家に帰ると言った。

仕事は続けた、給料は良かったし、sexは気持ちよかった。店で高野にあった。私は気づかないふりをしたけど、向こうが気づいた。
お願いします、恵です

お願いします

お若いですね

学生です

高野は慣れていて、すぐに上着を脱いだ。

……桜井?

……恵です

最初は気づかないふりをした。

桜井だよな?覚えてる?俺だよ、高野、高2の時の

覚えてるに決まってるのに、高野は相変わらず鈍感だ

久しぶりだね、高野くん

こんな仕事してるんだ、金に困ってんの?

高野は堂々としていた。

うん、ちょっとね

学校辞めたんでしょ?俺が辞めた後、担任から聞いたよ

高野と担任は連絡をとっていたらしい。

俺、早稲田受かったんだよ、今3年でもうすぐ就活なんだ

すごいって思ったけど、絶対に言いたくなかった。

おめでとう、良かったね

ああ、猛勉強したんだ、あの後

少しだけ羨ましいと思った。

どんな仕事したいの?

興味もなかったけど聞いた、職業を聞くのはマニュアルで禁止されていたけど、相手がして欲しそうだったら聞いてあげる。私はこれが得意だった。

教育系、教育格差を減らしたいんだ、俺頭悪かったからそういう奴の気持ちがわかると思うんだ。

自慢げに語った。言いたい事はたくさんあったけど、何も言わなかった。会話に詰まって、私は高野のズボンを進んで下ろし始めた。

プレイは60分?

ああ、でも延長しようかな、もっと喋りたいし

勃起させながら高野はそう言った。

私はいつもより丁寧に仕事をした、2人とも興奮するんだからやっぱり私は女で高野は男なんだと思う。嫌な客の時は他のことを考えて仕事をしたが、高野の時は高野のことを考えた。他に考える事はもうなかった。90分はあっという間だった。満足したように、高野は身体を拭き、私も自分で身体を拭いた。

高野くん、祐介って覚えてる?

高2の時の不良?

そう

俺のこといじめてたやつだろ、学校辞めたらしいね、どうせー大した人生生きてねーよ

正しかった。

そう、その祐介

そいつがどうしたの?

3千円、本に挟んだの私じゃないんだ……祐介なんだ……

……

私は笑わないで言った。高野が黙った、高野の顔から血の気が引いていくのを見た、しっかりと高野の顔を見つめて言った。

そっか……

そう

バカのくせに優しいところあるんだな

そう

近くには何もなかった、鏡があった、鏡を割って何か尖ったものを作って、こいつを殺そうと思った。どうせ殺せないけど、どっかに傷を、一生残る傷をつけてやりたかった。私は鏡を殴った、足がローションで滑って上手く力が入らなかった、鏡に私が写った。毎日赤い口紅を塗っているのに、毎日眉毛を描いているのに、可愛くなくて醜かった。

俺帰るわ

高野がドアを閉めた。階段を降りる音が聞こえた。

私はまた鏡を見た。仕事で邪魔になるのでピアスを長い間外していた。私が目を閉じている時に祐介がよく触ってくれた。耳の穴が閉じかかっていた。家に帰ったらまた、ピアスを開けようと思った。