この介護業界、男性が活躍される場面も増えてきているようで、重要なポジションに就いている方をお見掛けする機会も多くなってはいるが、現場は俄然女性の方が多いのが現状だ。

 

 今日、こんなやりとりがあった。

 

 相手さん 「利用者さまについての報告書を机の上に置いておきました」

 

しろ 『あれ、その報告書はB職員に渡すものだったはずだな。Bさんに渡しておいてって事かな?』(心の中)

     「わかりました。その報告書をB職員に渡したらいいですか?」

 

相手さん 「…………………………。郵送することにしますね^^」

 

しろ 「え、Bさんに渡したらいいのか聞いただけなのですが…。そういう気遣い大丈夫ですよ。今度会った時に渡しておいたらいいの?」

 

相手さん 「切手を買ったので、あとでポストに投函しておきます^^」

 

 

 …………………………。

 会話になっていないと思うのは私だけでしょうか?

 こんなやりとりが毎日の様に巻き起こっているのは私の周りだけなのでしょうか…。

 

 何故か人に何かを頼む事を意図的に避ける人がいる。人に何かして欲しいと思いながら、何も言えずに悶々としている人がいる。

 相手にしっかりと物事を伝えられていないのに、伝えたつもりになっている人もいる。

 そんな人達をわたしは「察してさん」と呼んでいる。

 

 察してさんは自分を守るために言葉を濁すという癖がある。

 自分の思った通りにして欲しいという気持ちはあるのだが、その願望を隠して事実のみを伝えてくるのだ。そして、何故かすべてを伝えたつもりになっている。

 事実というのは先のやりとりでいう「報告書を私さんの机に置いた」という部分だ。

 その先にある本来伝えなければならない「こう処理して下さい」が言えないのである。

 

 なぜそんなやり取りになるかと言えば、基本は自分の言葉によって人の作業量を増やす事が申し訳ないという気遣いからなのだろうが、「指示を出したら嫌な顔をされるかもしれない」とか、「指示を出しても言う事を聞いてくれなかったら嫌だな」とか、余計な心配をしている部分が多いのではないかと思っている。

 この行き過ぎな気遣いの応酬は以前勤めていた会社でもあるにはあったが(主に女性同士で)、介護業界に来てからというものの、1日中こんなやりとりをしている気がする。

 
 私はBさんに会った際に、書類を何枚か渡す事に対して負担なんか全く感じない。面倒くさいなぁとも思わない。
 ただ、大切な報告書を間違った手順で処理してしまったとしたら大変だから、間違えないように確認を取りたかった。ただそれだけである。
 
 私の机は3階にある。
 先の相手さんは、3階までわざわざ階段をのぼって私の机の上に書類を置いた。
 1階に降りてから「机に置いておきました」と私にメールを出したのだろう。
 そして私からの返信メールを見たのち、再度3階まで上がって書類を取りに行き、わざわざ切手を買いに行って、ポストに投函したのだという推察ができる。 
 
 これって誰が得して、誰が損しているの?全然意味が分からない。
 
 ただただ相手さんが階段を上り下りしただけではないか。きっと相手さんは「これくらい何の負担でもないです。大丈夫ですよ^^」というのだろう。本当にそうだろうか?
 「なんとなくわかるでしょ、流れ的にBさんに渡す感じでしょ」って思ってない?
 結局、相手さんは事の真意を私に伝えてない。わたしの机に置いたという報告書を私にどうして欲しかったのか未だに一度も言ってない。
 
 というか、こんな簡単な事ならいつでもウェルカムだ。いつも、本当に面倒な事については、今すぐやって下さいって言ってくるじゃないかと思った。
 
 まぁ、相手さんのような人は少し面倒だなとは思うがまだいい。ただ優しすぎて、相手の気持ちを先回りしすぎちゃう、お人よしなタイプなだけだ。まぁ、本当の面倒事が発生すると、「どうしよう〜」と言って右往左往している事が多いけど(笑)
 こういう人は、利用者の気持ちだったり、職員の気持ちだったりを察する能力に長けている。物腰が柔らかい事もあって、職場では結構人気者になるタイプだ。
 
 厄介なのは、誰にも何も伝えてないのに伝えたつもりになっていて、なんだか知らないがキレ散らかすパターンの人だ。特に多いのが、「Aさんはやってくれたのに、Bさんはやってくれない!」っていう訴え。
 この切れ散らかすタイプというのは、常勤職員だったりベテランヘルパーだったり、それこそマネージャークラスのポジションに居る人である場合が多い。
 
 切れ散らかしている人に、それは皆に伝えたの?と聞けば、「Aさんに言った。だから皆分かっているはずだ」とか、「この利用者の状態を見れば、言わなくてもこれくらいのケアをするのは当たり前!」とか、だいたいこんな風に返ってくる。
 それならばとAさんに事情を聞けば、「話の流れで、あの人にこういうケアができたらいいよねという話はした」と返ってくる。ここでいうAさんは、パートタイマーで週に数日出勤してくれている人である。
 
 1、ヘルパー同士の会話の中で、ケアについての提案があった。
 2、上司に報告をして、社員同士でケア方法について検討した。
 3、いいアイデアだったので、現場で実践することになった。
 4、みんなに連絡をして、情報を共有し、必要な人には指導も行った。
 
 これがしかるべき手順である。介護業界とか関係なく、どの仕事でもこの流れが一般的だと思う。
 
 とりあえず、切れ散らかしている人にはもう一度この流れをよく見て欲しい。
 あなたのやっている事は1番までなんですよと理解して欲しい。
 1番までしかやっていないって事は、パートタイマーのAさんと同じ仕事しか出来てないのですよ、と言いたい。
 自分が「わたしは何もアクションを起こさないけど、なんとなく察して、私が思うようにみんなが動くべきだ」と無茶苦茶な事を言っているのに早く気付いて欲しい。
 
 ヘルパー同士の会話というのは、新しいアイデアの宝庫である。ぜひともみんなで色々と話をして、新しいケア方法を提案していくといいと思う。それはとても素晴らしい事だとも思う。
 しかしその反面、会話の流れだけで新しいケア方法を取り入れて行くというのは、いろいろなリスクが生じやすく、いろいろなものが曖昧になってしまうというデメリットがある。
 
 そもそもAさんに言ったからといって、すぐさま全職員に伝わって情報が共有できることはまずありえない。
 だって、Aさんは週数回しか出勤しないパートタイマーだから。毎日朝礼に出るわけではないし、直行直帰の日もある。
 本当にみんなで新しいケアを実践したいと思ったのならば、せめてみんなが必ず見る掲示板に張り出すとか、申し送りを徹底するようにできるだけ沢山の職員に伝えて回るしかないのである。
 
 なんとなく察して思ったようにやってほしいだなんて、相手をエスパーかなんかだと思っているんだろうか?
 言葉を濁すことによって、相手に様々な事を考えさせてしまっているという事には気づいているのだろうか?
 そもそもが相手に余計な負担をかけさせたくないと言う思いからの行動だとするならば、その不必要な気遣いによって、相手に心的負担を掛けてしまっているという事はわかっているんだろうか?
 
 察してさんの謎は深まるばかりである。