さてさて呆けても居られない。9時からはまた別の方の介護だ。

 9時からはベテランヘルパーだという男性職員が教えてくれるらしい。挨拶をすると「1回で覚えてくださいね」とだけ言って、さっさときーちゃんの向かいの部屋に入っていく。今度はきちんとノックをして声掛けをしてからドアを開けていた。

 

 次の利用者は、68歳男性、要介護3の雅さん(仮名)。混合性認知症との事だった。(利用者の情報はこの日はまだ何も知らなかった。サ責からも同行してくれるヘルパーからも事前説明のようなものはない。個人ファイルもほんの数分しか見る時間がなく、作業内容のみ担当者から教えてもらえる。こういう個人情報を知るのは入社後しばらく経ってからの話である)

 

 居室に入ると椅子に座ってテレビをご覧になっていた。表情がやや乏しいように思えたが、声掛けには「はい」と答えてくれる。

 この方のケアは、リハパン交換、着替え、洗面と歯磨きの一部介助、シーツ交換、洗濯、掃除機掛け、拭き掃除などなど。身体1生活1で約60分間のサービスだ。

 立ち上がりは支えが必要だが、立位はしっかりとされていた。 歩行は小股歩きでゆっくりペース。やや不安定だが転倒や脱力に注意すれば、軽い介助で歩行可能。歯磨き作業など一部自立されている部分もある。

 一緒に行う掃除機掛けでは操作方法を一つ一つ説明をしながらゆっくりと一緒に行った。しゃがみ動作の必要な拭き掃除や洗濯干しは危ないのでヘルパーが行うが、作業中にああして欲しいとかこうして欲しいとかあまり言わない方だった。

 

 次の利用者は、72歳男性、要介護1の福井さん(仮名)。アルツハイマー型認知症。

 居室に入ると床一面がチラシとコンビニ袋だらけで足の踏み場が無かった。初めて見る光景だ。

 本人はベッドの上に座り、紙を折りながら「あ、どうも」と笑顔で迎えてくれた。よくよく見てみると、一見ゴミに見える床に散らばったチラシは折り紙のゴミ箱に、コンビニ袋は三角に丁寧に折られていた。

 福井さんは認知症はあるものの、歩行体動ともに安定されていた。サービス内容は、全更衣、洗面、歯磨き、紙類やコンビニ袋の整理、シーツ交換、洗濯、掃除機掛け、拭き掃除などを一緒に行う共に行う家事、身体1生活1だ。チラシの整理だけで結構時間が掛かったが、排泄や着替えなどはほぼ自立されていて、身体的な介助がないだけ気持ちに余裕を持って行えたと思う。

 

 11時からは要支援の定吉さん(仮名)。てきぱきと動き、てやんでぇ口調の威勢のいいおじいちゃん。食事作りのサービスだ。

 小松菜のおひたし、焼き魚、簡単な煮物などを作る。ほぼ毎回同じメニューを希望されているようでほぼ毎回このメニューだった。

 

 12時からは空き時間。和田さんに色々と聞きながら昼食を摂った。

 

 13時からまた男性ヘルパーが来て教えてくれる。

 次の利用者は要介護1の男性、山口さん(仮名)。はぴねすコーポ2号館内では「山じぃ」の愛称で呼ばれている気の良いおじいちゃんだ。

 歩行体動ともに素早く安定されているが、認知症のため会話の繰り返しがみられる。和田さんの話では、もともとあまり生活力の無い方で、放っておいたらご飯を食べなかったり、自発的に何かをしたりが苦手な方らしい。

 サービス内容は身体1生活1。着替え、洗面、歯磨き、足浴、爪切り、シーツ交換、洗濯、掃除機掛け、拭き掃除など。足浴があったため時間が掛かったが、特に難しい事もなく終えられた。

 

 フルタイム勤務ではないのだが、正直かなり疲れた。緊張していたせいもあると思うが、出勤後から何回洗濯機を回しただろう。1日でシーツ交換や洗濯をこんなにした事がない。

 しかし、これで終わりではないのだ。時間内で書ききれなかった記録を書き、16時からは介護施設なぞに行かなければならない。マジか…と思いながら、記録の書き方が分からず結局1時間くらいかかってしまった。