パルテノン多摩リニューアルオープン1周年記念公演「オイディプス王」

 

観劇感想

 

「今日はどんな波が起こるのか」新木さんがブログで書いてくださった言葉の通り、毎公演違っていて、観るたびに新たな発見がありました。演劇って生きていて、なんと面白いものなのか!と感じた3公演から6公演目(7/12~7/16)。

 

沢山のものを頂いて膨れ上がっていて纏まっていないけれど、東京千秋楽前に残したくて観劇メモを保存します。もしもここにたどり着いた方がいらしたら、長文駄文のお目汚しで申し訳ないですが自身の記録として…。この先お読みいただける場合は、いつもの通り拙く偏った感想でございますので、こんなふうに感じる人も居るのだなぁぐらいに留めてくださいますと幸いです。

 

※記憶力に乏しく雰囲気で覚えているので、言いまわしや言っている方も間違えている可能性が大いにあります。

※アフタートークは、クローズドな環境だからこそ聞けたものもあると思っております。そもそも不確かな記憶を頼りになんとか文字にしておりますので、拡散などはせずにそっと薄目でご覧頂けると幸いです。

 

観劇メモ

 

📝2023/7/12(水)夜公演

 

前日の石丸さんのツイートにワクワクして劇場へ。

 

オイディプス、三浦さんものすごかった。
自信に満ち溢れ、民を思い、国のために動かない者へ怒りを表す。知ることで戸惑い、嘆き、なにかに到達した時の「静けさ」。
感情の起伏が豊かに波打ち、登場人物やコロスたちにぶつかって、飛沫を上げて熱波が戻ってくる。全員のその猛烈なエネルギーがあるからこそ「静けさ」に鳥肌が立ち、内面から溢れ出すうめきのような悲嘆と愛に胸を打たれるのだなぁと。

そしてクレオンも。
「クレオン様が戻られましたぞ!」と、皆が眺めるその先を振り返ると、逆光に照らされて立つその姿。頂きには月桂樹の冠、その凛々しい表情...まさしく「吉報」そのもののようで鮮やかに目に焼きついています。


この日は少し、そこに立ち止まっていて。まるでデルフォイから帰りたったばかりのようで、遠くにパルナッソスの山々が見える様だった。そして足音はさせず風のように王の足元に跪く。

あまりに絵画のようで、全てが美しくて、力強くて。あの日の座席だったから見れた景色。この記憶を見せられたらいいのに!と思います。ちなみに日によってこの登場シーンも少しずつ異なっていて、7/15は登場にタメがあって台詞から扉が開くまでに時間があったので、立ち止まらずに皆のもとに走って行ったのですが、それはそれで「待ちに待った吉報を持って現れたクレオン」って感じで良いなぁと感じました。

「よくもここに来られたものだな...!!!!!!」
今まで見たことないくらい、心のままに怒りを顕わすオイディプス。観てるこちら側までヒッと縮こまってしまうくらい。その彼に精神誠意、説得しようとするクレオンも徐々に呼応するようにヒートアップしていって、バチバチに熱くなって劇場中に響き渡る怒号と応酬。さいっこう!となりました。

前回までは友情や思いやりを感じていたクレオンの言葉は、今ここに生まれた心のままに放出されている感情のようで。その波がぶつかり合って呼応してゆくのがめちゃくちゃ生感あったんです。「誰よりもご自身がきつかろうに。」もコノヤロー覚えてろよ!って感じで。ドスドス歩いて消えてった(笑)

羊飼いの葛藤も、コロスの団結も本当にすごくて、終演後は友人たちと止まらない観劇感想を熱く語りながら帰路につきました。

この日は、翻訳の河合祥一郎先生を囲んでのアフタートークもあったのですが、これがまためちゃくちゃに面白くて。思い出したらこちらに追記しますが、新木さんの部分だけ取り急ぎ。

ーークレオンはオイディプスを追放しますが、どのような心情で演じてるのですか?(河合先生)

成すべきことを成す、でしょうか。この言葉が正解かは分かりませんが、あの時代において当然とされている事を、当然のこととして演じなくてはならいと思っています。
昔は生き方が限られていて、それに疑問すら持たなかった。だからこそ、その当然に背いて生きるオイディプスの異端さが際立つんだと思うんです。どの作品でも異端や反逆は主人公が担うものであり、そこに華があるから。周囲はその状況に疑問を持たずに存在していないといけない(このお話し、石丸さんが興味深そうに頷いてらっしゃいました)。

ーークレオンはどんな人物だと?(河合先生)

クレオンはこの先の物語で次王となる存在なので、オイディプスとは異なる存在でなくてはならないと思っています。国を治めるものとして、神を信じ規律を重んじる事で民衆の模範にならなくてはならない。だから娘たちを連れてくる慈悲がありつつも、オイディプスを追放することが出来るんだと思っています。

他にも、河合先生は「訳者」「観客」両軸での質問をワクワクしながらバンバン投げてくださって最高でした。

「この『オイディプス王』という作品は全ての台詞が『韻律』で創られている歌のようなものなのですが、今回の演出では歌がないですよね。でも今井さん演じる神官の台詞は歌を歌っているようなリズムを感じたり…」

石丸さん「そうですね、今回はコロスの部分以外音楽を使っていないんです。台詞が「歌」であり、踊りが「祈り」であるべきだと考えたんです。」
 

「舞台セットを見て、一番上から登場するのかと思いました」

石丸さん「(笑) それはさすがに無理なんですが。階段の先は神々の世界へ続いていて、地上である人間の世界がある。その中間地点に王であるオイディプスが存在しているんです。」


「オイディプスの最後のシーン、少し笑っています…よね?印象的だったんですがあの演出は…」

石丸さん「今回表現は全て役者の中から生まれてくるものを取り入れているんです。ね、三浦くん。」

三浦さん「そう...ですね。ここ数年で...お別れをする出来事が増えて...。コロナ過という事もあり生きること死ぬこと、残された側の気持ちを考える機会が増えたんですよね。寂しいとか辛いことも沢山あるけれど、でもどこかに希望は必ずあると思いたくて。絶望の中にもその希望があると信じて演じています。」


「子供たちを抱きしめるシーン『ありとあらゆる不幸が揃っている』と言っているけれど、なんというか愛おしさを感じるというか…。」

石丸さん「嬉しい!嬉しいね三浦くん!あの台詞は不幸ではなく『ありとあらゆる宝物が揃っているんだ』と言っているつもりで演じようと話をしていたんです。」

 

📚河合先生訳の「オイディプス王」はこちら(光文社)

 

📝2023/7/13(木)昼公演

もっと観たい、と当日券で観劇してきました。

あぁこんなにもオイディプスはピュアで真摯な人だったのか…だから皆が彼を慕い、希望とし、寄り添い信じて祈るのか。と、少し分かった気がします。

オイディプスはそも熱しやすい性格だなぁと思うのですが、この日はその「熱」を自ら自覚して制御しようと努力・葛藤していたように思います。ともすればせり上がってくる自分の怒りを何度も抑え、鎮めて言葉にする。
コリントスからテーバイへの道で人を殺めてしまったことを悔いてその贖いを自分に課しているような...。

 

そもそもこの物語は、子を成してはならないと信託のあったライオス王がうっかりオイディプスという子を成してしまった事が始まりなんですよね、たしか。(この戯曲の中では書かれていませんが)

オイディプスはそうとも知らず必死に自分の運命に抗い、正義を持って生きてきた。その自信に満ち溢れた若者が、自らを知り絶望し叫び悶えて全ての厄災を一人抱えて暗闇へと落ちてゆく。凄く強い人。そして、落ちた先の暗闇の中で見つけた尊いものや、ほんの僅かな希望とかを私たち観客は受け取って自分に返す。どうしたら良かったのかを探す悲劇ではないのだなぁと、この今回の「オイディプス王」だから感じられたのではないかと思います。
そして、最後祈り続けてくれるコロスに本当に救われる。

毎公演奇跡みたいだなって思って観ています。
胸が熱くなる。劇場で観てほしい。演劇ってすごい。

今日、オイディプスの次の言葉に、その場にいる全員の全神経が集中する瞬間が何度かあって。しんっと静まり返った劇場、呼応して膨れ上がるお芝居。羊飼いの葛藤、独り耐え忍ぶイオカステ、祈り続けるコロス。三浦さんのオイディプスだからバチっとはまって静かに熱が膨らんで。涙が止まらなかった。

そんなオイディプスだからこそ、クレオンはもぅ溢れんばかりの愛情をもって寄り添い、全うし、次王として立っていて。めちゃくちゃ新木さんだった。最高に好きだなぁってなりました。

盲目となり慈悲のような微笑みを浮かべているオイディプス。遠くからその姿を見て、信じられないと目を見開き、徐々にスピードを増して駆け寄り、すぐさまグッと血に染まったオイディプスを胸にかき抱く。「大丈夫だ、俺が来たぞ」と言うかのようで、もうその姿に涙が止まらなかった。あれだけ力強く腕の中に包んでいたのは、この公演だけだったと思います。

「もう十分嘆いただろう」

その言葉とは裏腹に瞳の奥に揺れる熱い想い。


翻訳から言葉を変えず、ストイックに。役者から生まれるものを届けている。石丸さんが仰っていたことが視界いっぱいに広がっていて、其々のキャラクターが深く豊かに波打っていて、観れて幸せだなぁと思います。

そう!この日、初めて下手から観たのですが、オイディプスの登場シーン。階段の下から救世主を呼び求めるその最下層に自分がいるようで、まるでコロスの一員になったような気持ちで世界に入れるのです。そこに現れるオイディプスはまるで発光してる...と思わずにはいられない神々しさで王として君臨していて、慈悲深いまなざしで手と言葉を投げかけてくれるんです。

そして、照明の素晴らしさに何度もうわわ!うわわ…と新たな感動がありました。
コロスの群唱舞踏、束になったり個として手が伸びたり、まるで生き物のように壁にその影が映る。それは神々のようで人でも有り、不吉なものを象徴するかのようでその世界に取り込まれそうだった。
第四場「光よ、もはやお前を目にはすまい」というオイディプス、その少し前のシーンで太陽を仰ぎ見る時は眩しそうに掌をかざしてその影が顔にかかるんですが、絶望を知ってからは影すらもかからなくて...既に暗闇の中にいるかのように。

 

アフトも面白かったな~!大空さんと悠未さんのほっこりトークも聞けたり、大久保さんの真面目なお人柄のお話しや、コロスは4名のリーダーで作られている事、大空さんが教えてくださった「今でもコロスは毎日劇場に入ってから練習しているんです。石丸さんが練習をつけてくださっていて」と言っていた言葉の通り、ものすごい熱量を感じた公演でした。

 

 

 

 

 

📝2023/7/15(土)昼公演


「私は何者であれ、私は私だ。」

気高さと葛藤。光と陰。圧倒されて、涙もひっこむくらい釘付けになった。そんなオイディプスだからこそ、より鮮明に対比して魅せるクレオンは4公演目とは全く違っていて。凄かったなぁ…台詞は同じなのに、その公演数分の人生がある。
オイディプスがものすごく自然に感じられたのですよね。自由だった。
この回は最大の変換期で、最終地点への明確な何かをつかんだのではないかなぁと勝手に感じています。

イオカステもめちゃくちゃに素敵だった🥹✨登場シーンから知的さが溢れていて、決して運命に流されてここまで来てしまったのではない、凛々しくて、強い女性だった。包容力と折れずに立ち上がる強い瞳は、生きるということの象徴にも感じたけれど。振り返らないオイディプスの背中、届かない言葉。
ライオス王の名を叫んだのは、神託があったにも関わらず気まぐれにこの悲劇の根源を作り出した人物への恨みだったのかもなぁ…と今日の発見。

その二人との対比を際立たせるためもあってか、クレオンは叔父というよりは、イオカステの弟、そして国の参謀(年上でも対等でもないあくまで家臣)であるという印象を受けました。私個人としては前回7/13公演のクレオンが好きで好きでたまらないのだけれど、今日のオイディプスならこのクレオンとして存在すべきなのだと、考えるほどにまた新木さんが好きになる。
アンティゴネーでのクレオンの人格が出来上がった理由が全く変わって見える。あの頑ななまでに神を信じる(今でいう法を守ろうという)精神は、友を無くした後悔か、国を守りぬくという信念なのか。面白いなぁ…。
あぁこの作品に連れてきてくれてありがとうございます。

冒頭、神官(今井さん)の台詞まわしの美しさも、これが韻律?と先日の河合先生のアフトを思い出して興味が出たり。

戯曲本を見て不思議に思っていたこの表記。
「われを忘れておられる。」

________________________「わが身を思ってのことだ。」
これは役者のお芝居によらず、キャラクターの言葉の応酬なのだとやっと気づいたり…ほんと私の鈍感力(笑) “______“(空白)は最初はなにかの余白(気持ちを役者に託す)という意味かと思っちゃったんですよね。でも多分逆で「タメも何もいらず前のキャラクターの台詞に間髪入れずに喋る」という意味なのかなと...あってます?

 

この日のアフタートークは、三浦さん、大空さん、今井さん、浅野さん。感染予防対策でお稽古中、二言三言しかお話しできなかったという皆さま、最初はちょっと緊張感あったのですが「ピーマンの肉詰めがお好きなんですよね?」と浅野さんが切り出して下さってほんわかムードに(笑)楽しかったです。

 

 

 

 

📝2023/7/16(日)昼公演

 

表現の違いでこんなにも捉え方が変わるのか!と毎公演、変化と発見と驚きをもらってきたけれど、今日は「探してきた道が定まって深まり洗練されてゆく」そんな工程を見せてもらっているように感じました。三浦さんが定まったことで、個々が深まり、そうすることで世界の細部の細部までが描きこまれてゆくようで。Youtubeで最近見た、絵画を拡大してゆくと無限にその中に物語が描かれていて、どんどん世界が広がっていく…という動画があったのですけれど、きっとこの「オイディプス王」も一人一人の世界があって生きているから、今見えている面が鮮やかに生々しく伝わってくるのだなぁと。
息遣いひとつ見逃したくない。
石丸さんが仰ってた「熟す」ってこう言う事なんだろうなぁ。その変化を目撃できて幸せです。

今日もクレオンは不器用なまでに真っ直ぐに生きていて。民衆の見本となる行動。唯一、豊かな胸の内を映し出すのはその瞳だけ。

第二場、今日は、切々と説く潔白の理由を拒絶されて「何故にそのような心境になってしまったのか」と困惑し、そんな風に言うオイディプスを心配していたように思いました。
このシーンは、何故わからない?と怒りの要素が強い「叔父」であることもあれば、「親友」として信頼を得られなかったことに傷つくこともあったと感じてきたけれど、今日は「イオカステの弟」として一緒に国を守ろうとするからこその感情な気がして。それはまさしく戯曲の最初に書かれているクレオンの説明文の通りだなぁと思ったんです。「この国を救いたい」というもう一人の、次の王になるべき人物への布石。

「私がいったい何をしたのか教えてください。」クレオンはここから一瞬もオイディプスから目をそらさず、「テイレシアスがそう言うなら」と実直に純潔に進言する。この後、緊迫し白熱していくすべてが「国を救うため」の戦いであり、それぞれが己を信じて真っ直ぐに在って、こんなにも言い合える最高の友がなんで..とただ運命を呪いたくなってしまう。

最終場コロスに向かって伝える「死すべき人間相手に恥じる心を失ったとしても、命の源である太陽神を敬え」。これは、友をさらし者にしたくないと想う気持ちが出ていたように感じた7/13公演が最高に好きだったのですけれど、7/15,16公演の「次の王」として見せるべき姿を全うするクレオンがこの物語の本来の姿なのだなぁと納得したんですよね。

でも決して冷たい男ではなくて、熱さや勢いではない「真の温かさ」がある。皆まで言うなとばかりにスリ…と額を合わせ、胸の内を隠すかのように背中を向けて肩を震わし何度も息を吐いて決別の言葉を口にする。
そんな人だからこそ「言ったからにはやる男だ、わたしは」と伝える覚悟や、血に濡れた手を握っても自然と離してしまう永遠に埋まらない距離に想いが詰まっていて、あまりに裏腹で泣いてしまう。

「民衆のお手本であることで国を守る」という側面と、言葉ではなく内包する愛情深さを表現するお芝居。「役者から生まれるものを届けている。」の意味をしみじみ感じて。戯曲を演劇として観る楽しみ、新木さんが伝えてくれる言葉にならないものに深く感謝しました。

そしてコロス、凄い…ほんとに。石丸さんが仰ってた「束」を全身で浴びた時の気圧される感覚。生観劇ならではだなぁと思います。なんで東京7公演で終わっちゃうの〜😭と。せめて配信か円盤お願いします。何卒!いつかこれを生で観たいと思うであろう未来の人たちのために。

 

カーテンコールの三浦さんも素敵だったなぁ。今までの全公演、自然とスタンディングオベーションになるんですよね、こんなにも観にいらしてるお客様は毎公演異なるように感じるのに。3回目のカーテンコール、階段上に登って最後の挨拶をする前に、天を仰いでなにか言葉を呟いていたような...そして客席を振り返って満面の笑顔を浮かべて去っていかれました。カテコと言えばいつぞやの公演で、イオカステをエスコートしようといつもよりちょっと先で待っていた三浦さんに、手が届かない~とばかりにぴょんぴょんして抗議する大空さんがめちゃくちゃに可愛かったことを思い出しました。

そしてこの日は最後のアフタートークデイだったのですが、新木さん沢山お話しして下さって、笑顔が拝見できてとっても嬉しかったです。会場中を見回してお話しして下さって、なによりとても楽しそうで、ものすごく幸せな気持ちになりました☺️✨ありがとうございます。

いつでも答えられるようにマイクを口元に充ててらして、ふふっとなりました。いつからだったかなぁと記憶を探るに、漆黒天の映画公開と舞台上演の間?…でしょうかね。なにかマインドの変化があったのかなぁなんて勝手に推測しています😌素敵ですよね。

――まずは石丸さんからお三方に向けて

石丸さん:「芝居が練れてきた」もちろん我々はこう見せたいという所まで作り上げて初日を迎えるわけですが、果実が熟していくように演劇は回を増すごとに育っていくんですよね。初日はまだ採れたてで硬さがあってそれも良いんだけど、だんだんと熟れていくそのどのタイミングで食べても美味しい。私は演出家だからありがたくもどの状態も見られるのでとても楽しい。そしてオイディプスを見守るコロスのように、お客様に見守っていただいているからこそ今日を迎えられているのだと思います。ありがとうございます。(私、これ聞いて泣きそうでした)


石丸さん:感染予防対策もあって、皆さんお稽古中ほとんどコミュニケーションが取れなかったんですよね。この前たまたま新木くんと帰りの電車で一緒になって、芝居論に熱くなっちゃって全然話しが止まらなかったんですけど(新木さんニコニコ頷く)、もっと話せたらよかったな~って思っています。熟練役者チームの楽屋部屋にグイグイ行って話したかった!
今井さん:そうですよね。僕と新木くんはたまたま一緒のお稽古のタイミングがあったけど、浅野さんはほぼなかったんじゃ...
浅野さん:そうですね。だから今日アフタートークがあるっていう事で、初めて新木くんに話しかけたんですよ。僕としてはすごく勇気を出して(笑) そしたら思いのほか真面目な人で(会場笑)あ、いや褒めてるんですよ?!食べ物は何がお好きなんですか?って伺ったら...
新木さん:好き嫌いはなく「(かといって好きな食べ物は)ありません」とお答えしてしまうと、聞いてくださった方に失礼だなと考えてしまうので、優先順位をつけるなら「旬のもの」になります、とお答えさせていただいたんです。この質問はよくインタビューでもされるものなんですが、食事をする行為を「幸せな時間」と捉えると、何を食べるかではなく「誰と食べるのか」という事が大事だと思うので「家族と食べる食事が一番幸せです」と答えるようにしています。
浅野さん:そう、もうこのまんまを話してくれるんですよ。メイクしながら(笑)
今井さん:その辺の若者の発想では出てこない答えですよね。
新木さん:昨日ピーマンの肉詰めが話題になったということでそのお話しをしてくださったんですよね?僕はあの作り方ではないんですけど...。
石丸さん:どんな作り方なの?(笑いながら聞いてくれる石丸さん)
新木さん:僕は小麦粉を使わないようにしているので繋ぎがないんですよ。なのでまずはピーマンのへたを切って、種とワタを取るんです。あ、綺麗に取り切らなくて良くて、あの綿の部分にビタミンCやカリウムが含まれているので(会場笑)。その残ったワタが繋ぎになってくれるんですよね。普通切る方向じゃない横方向に切って、肉を詰めるんです。肉をこんもり盛っても伸縮で上手くまとまるんですよ。僕は家族が多かったので、実家で食べるときは大皿料理になっちゃうんですけど。
浅野さん:核家族じゃない家庭で育ったんですよね。そう、この調子で話してくれるのでそんなに話してなくても、新木くんのこと全然話せちゃう(笑)
新木さん:僕のことを沢山話そうとしてくださってありがとうございます(笑)

――浅野さんは石丸さんと二度目になるんですよね?

浅野さん:そうなんです。二十〇年ぶり(ごめんなさい思い出せなくて)にお仕事させていただくということで。当時、蜷川さんの舞台で石丸さんは助手で入られていて、自分は文学座の若手衆の一人で二十代だった。その時本番終わりに毎日石丸さんが稽古をつけてくださって、この皆さんご覧の通り誰よりも通るこの声で情熱をもって向かい合ってくださったんですよね。それがあるから今の自分があると思っています。だからこのお話しを頂いた時は、遂に...と思って嬉しかったです。

――今井さんは石丸さんとは初めてとのことですが、当館の朗読劇でご参加いただいてるんですよね。


今井さん:そうですね。今年の頭にこのパルテノン多摩の小劇場の方で行われた朗読劇の演出をやらせていただいたんです。いくつか演目の候補があったのですが栗原さんとご相談して「オイディプス王」になって。その時に栗原さんから「今井さん、ちょっとお話しがあるんですが...オイディプス王で…」とあって「いやいや、いま演ってますよと(笑)」。それもあって今年はオイディプス王の年になっていますね。演出のお仕事をさせて頂いているという経験もあり、色んな見方で今作も勉強させていただいています。

――新木さんは

新木さん:僕はヨーロッパの作品に出たことがなかったので、お稽古に入る前に戯曲を読んで難しいなと思って...いや(お話しが難しいのではなくて)その環境に馴染むことに緊張感をもったんですよね。でも物語自体は最後にどんでん返しがあるような難しいものではなくて、元々明らかにされているものをサスペンスのように描いていくシンプルなお話しだっただからこそ、2500年前に書かれた物語でも今、違和感なく受け入れられるものとして演じています。

――真面目なお答え

新木さん:...崩しますか!(そこからの新木さん節がめちゃくちゃに面白くて、それを横で見ている皆様のお顔が絶妙で最高でした。新木さんファンの皆様は来た来たー!って思われたと思いますし、私も心中ではもろ手を挙げて喜んでおりました^^) 少し砕けたお話しをとプロデューサーさんから頂いていたので、何を話そうかなって考えたんですよ。駅降りてここに来るまでにあるもの…そうピューロランドですよね(会場笑)。僕、好きなキャラクターが居て。「かしわんこもち」っていうんですけど、5月5日に売れ残ったかしわもちが変身したっていうストーリーがあって。

石丸さん:え、面白そう(笑)
今井さん:石丸さんミュージカルで1本かいてください。
新木さん:いやそれがもう舞台化されてるんですよ!「サンリオ男子」っていって、好きなサンリオキャラクターを推す男子高校生の話しなんですけど...
浅野さん:じゃぁ劇場に来るまでに沢山いるキャラクター分かるんだね(今井さんだったかもしれません。この辺りだいぶ記憶があやふやです)
新木さん:分かりません。

浅野さん:え?(笑)

新木さん:でもすごい盛り上がりで、いーっぱいいるキャラクターの中で上位に入らないと商品化してもらえないんですよ!みんな頑張るんですけど、かしわんこもち今年は順位を落としてしまって...60位ちょっと手前だったっけ?(と客席に聞いてくれる新木さんw)
今井さん:何か商品化して欲しいものが?
新木さん:そうなんです!ヨギボーのでっかいクッションとコラボしたかしわんこもちが欲しいんです。
浅野さん:最後のアフタートークがサンリオの話しになっちゃったけど大丈夫なんでしたっけ?(笑)

ここから力技で話を「オイディプス王」に戻してくれた新木さんに会場がおぉ!となったのですが、いざ演劇論を語ろうという時に、リーンと終わりの鈴が鳴って、それでもお話ししてくださろうという石丸さんにリンリン鈴が鳴るので、チッって感じで強烈なひと睨みを宙に投げた石丸さん(笑) それを見て新木さんが「そんなに怒ります?」と、くしゃくしゃの顔して幸せそうに笑っていました。それから「熟練の先輩方との共演はどうですか?」という石丸さんの質問に「本当は雑談も含めてもっとお話ししたかった。でもこういうご時世ですから仕方がない。毎日見せていただくお芝居や、その準備をどうされているのか、しっかりと学ばせていただいています」といったお答えをされていましたと思います。あ!あと「コロスの皆さん凄いですよね」と言いたかった浅野さんが「コロナの皆さん」と言ってしまって、瞬間的に石丸さんと今井さんが立ち上がって三人でワーワーされててお腹抱えて笑いました。

――最後に新木さんからご挨拶をお願いします。

新木さん:三浦くんのオイディプスが表情豊かだからこそ、それを受け取る登場人物たちのエッセンスも加わって、毎公演新鮮に違うものが生まれています。7公演…そう7公演しかなくて、それをもったいなくも思うのですが、だからこそ1公演1公演を大切に演じています。明日も一生懸命に届けられるよう頑張りますので応援いただけると嬉しいです。本日も見に来てくださってありがとうございました。(立ち上がって誠心誠意、想いを伝えてくださっていてジンと胸が熱くなりました)

 

 


はー、書ききりました(笑)

これから東京千秋楽公演に行く準備しなくちゃ。

カンパニーの皆様全員が健やかに豊かな時を過ごせますように。私もめいっぱい受け止められるように一所懸命に観させていただきます。

応援しております🌸

📝初日~2公演目に見た景色はこちら

📝7公演目(東京楽)に見た景色はこちら

 

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