ムビ×ステ舞台「漆黒天-始の語り-」

東京公演再開

2022.8.18 池袋サンシャイン劇場


SNSより過去記事を移行しております

この先ネタバレしかございません。また、私の勝手な目線で書き綴ったものなのでご気分を害されるかもしれません。映画や舞台をご覧になっていない方は閉じて頂くことをおすすめします。

舞台「漆黒天」再開公演の興奮冷めやらず。 
という気持ちを綴ってみました。
初日のような熱さと新鮮さ、そして何度も公演を行い何度も塗り足してきたかのような造形の深さ。 
きっと、出来なかった公演の分まで。 
配信の先の方々へ届くように。 
胸アツな公演でした。その気持ちを忘れないうちに書きます。 


まず、前回私が到達したつもりでいた物語の解釈は、今日の再開公演を観て、見事に打ち砕かれました(笑) 
前回までが間違えていたのではなく、それが今日の生の舞台。私の観劇。私の体調や、今日を心待ちにしていた気持ち、座席の位置、きっとちょっと変わっただけでも異なるような。だから面白くて面白くてたまらないのでしょうね。 

まず、陽之介と旭太郎の年齢が上がって見えたんです。30代相応というか、、、余裕がある。陽之介は富士の考えに頼っているような若さは1mmもなく、果てしなく優しい。でもってちょっと天然で、自分の志を芯に持った人間でした。蔵近と二人で一つの「守るため、活かすための剣の道」。それを傍で見守り支える、朗らかで夫を立てる富士。 
邑麻兄弟の弟子入り志願のシーン。教えてあげたいけれど、、、という気持ちを一度は拳にグッと包み隠す陽之介を、蔵近と富士がうまくバランスをとって良き道へと繋げていく様が、絵に描いたような美しい調和で。 
陽之介の表情豊かで、周りの人をほっとさせるような砕けた笑顔。強い意見をぶつけられても優しく呑み込んで、明るく導いていくようなひだまりの存在。皆が陽之介や富士を慕っていて、素直な門下生や子供が育つ環境。 

その安定感からか、年齢故か、夢が近づいてくることも、不可思議な出来事を疑問に思う方が強くて、前回のように未知なものへの怯えは薄く、耐性があるように感じました。 

逆に旭太郎と日陰党は、正真正銘の悪党だった。 
辛酸をなめて、蔑まれて、ギリギリのところで切りあって生き抜いてきた日陰者たち。 
旭太郎は、無表情で孤高。ミステリアスで冷え冷えとした「ワルい男」。 
仲間との繋がりは複雑で、酒盛りシーンの論争も「またか」といった冷めた様子。支えあっているというよりは、皆が旭太郎に依存していて、それを知っていて収める手法を考えている。 
これでもかと日陰の暗闇を味わってきた男。 

その対極を成すものが、交わっていく荒木さんのお芝居が、もう。もう。 
獣腹の兄弟について玖良間邸で話している途中から、催眠にかかったかのようになって、どちらがどちらともいえず、境界線があやふやになる。 

富士を抱きしめたのは、今公演、旭太郎でしたよね? 「あなた...!」と言う言葉に、ハッと陽之介に戻る。 

陽之介の姿で富士に会いに行った旭太郎が、陽之介だと言われた時の「そうか」。 
ざわざわと鳥肌が止まらなかった。 
陽之介のようには笑えないから面を付けた。 
でも唯一瓜二つじゃないその笑みで、富士から否定される。富士も含めての「陽之介の人生」=「俺の人生」だったのに。 
どう在っても日陰者なのだと。否定するものを手にかけてきた人生は変わらぬのだと。 

富士を亡くして、陽之介は混濁していく。 
自らの中に憎悪が生まれたことで、自分が旭太郎なのではないかと。憎しみを抱えて、復讐の道へ。 

討伐計画開始の後の二人は、私が陽之介だと思っていたところは旭太郎で、旭太郎は陽之介だった。 
(変な事書いてますよね) 

伽羅に縋られた陽之介は旭太郎に見えて。自らを陽之介と思い込みたい旭太郎。だから、伽羅の目は正しかった。 
そう考えたら、哀しくて哀しくて。 

旭太郎に成りすましていたのは本当に陽之介で。返してくれと攻め立てる日陰党の怨念を切り続けて。 
ひとり、復讐の鬼になる。 
人を生かす剣とは真逆の道へ。 

ラストシーン辛かったなぁ。 
お前は陽のもとには行けないと。否定され続けて。過去を断ち切るがいいと言われる旭太郎。その先、記憶をなくしても否定され続けるのかと思うと。 

マルチエンディングのノベルゲームみたい。 
同じシナリオで同じ演者さんなのに。 
不思議な物語。 
そして映画観たい、となるという、、、(笑) 
今日のお話しつらかったなぁ。あぁ、辛い。 
でも面白いですねぇ、演劇って。 

にしても、殺陣めちゃくちゃかっこよかったなぁ。 
旭太郎の剣、早すぎて見えない(笑) 
そして着物がはだけない。そして足が長すぎるので、帯の位置が高い。異常に。 
…荒木さんのことは永遠に書けるので、この辺にしておきます。 

來の殺陣も格好良かった~! 
戦いたいという欲をもって生きているのかと思ってたけれど、過去の自分なんですね。武士である過去が恋しかった。 
何かを守るために戦ってたんだろうな。 

千蛇もよかったなぁ、、、全体的にお芝居めちゃくちゃよかったんだけど、「あたしは真嶌千蛇」のところ。くるっと回転して振り返った一瞬、目線が宙に浮いてゆらりと体が揺らぐ感じが,、、狂ってて。 
一途な愛にあこがれたまま死んでいく。 

伽羅も「無垢な悪」「純粋な悪党」を貫いてて気持ちよかった。だから、幼少期なにも楽しいことなくて、ただ空と雲を眺めていたのかなぁとか考えたら、、、辛い。 
蒿雀もねぇ、見事でしたよね。惨めなくらいに生に縋って。だから最後に残した言葉が重い。 

と書いてたら朝日が昇りました(笑) 
次の観劇でまた変わるんだろうな。 
あぁ、こんな風に心が沸き立つって幸せです。 
ありがとうございます。 
どうか皆様が、気持ちよく安全に過ごせますように。 
祈って、応援しています。


 🖇休演のお知らせ