舞台「漆黒天」観劇(8/21東京最終日)


頭の中でずっと「夢ノ果テ」が鳴ってます。 
全然戻ってこれない(笑) 
舞台「漆黒天」最高でした。
東京最終日のマチソワ感想を書こうと思ったのですが、意識が混濁してしまって全然文字に出来ない…(笑) 
マチネでぼろぼろに泣いちゃったんですよね。泣くと記憶が飛んしまうので、覚えてるところから自分のために残します。 

(この先ネタバレしかございません。また、私の勝手な目線で書き綴ったものなのでご気分を害されるかもしれません。ごめんなさい)  

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舞台「漆黒天」感想(8/21マチソワ東京最終日) 

まず陽之介も旭太郎も、より「自然体」になったような気がしました。少し前までは、日向と日陰、温かさと冷たさ。陰陽のように逆の性格をしているように見えていたけれど。二人は一緒だった。 

陽之介。明るく朗らか、優しさの中に熱い焔がある。「夢だけど夢じゃないんだ」と、つい身振り手振りに出てしまうような素直さ。自分以上に怒ってくれたり、背中を押してくれる家族に困ったような顔をしつつ、この世界を自分が守らなくてはと意を結する強さがある。 

旭太郎。一見クールに見えて、奥底に静かに燃え盛る焔がある。萊には、つい八つ当たりすらしてしまいそうになる素直さ。良き相談役になってくれたり、死ぬときは一緒だと誓ってくれる仲間に、表情には出さずとも、この世界を自分が守らなくてはと意を結する強さがある。 

其々「この人が居れば」と心の拠り所になるような好青年なんですよね。陰だ陽だと線を引いていたのは私自身で。環境や容姿でその人をその人だと勝手に判断してしまっている。 

物語が進めば進むほどに、観れば観るほどに前日8/20に感じた良い意味での「見分けがつかない」という「違和感」がよりくっきりとしたような。そんな訳ないと頭が拒否して受け入れ難いけれど、そう考えるとしっくりくること。 

舞台上で、私たちが見ている「その目の前で」二人の意識が入れ替わっている?そして、想像よりもかなり序盤からお互いの体を通して、お互いの環境を見ているように感じました。 

もしかしたら、玖良間が最初に道場師範たちを集めた時も。そして「道場潰しだ」の直前も。一瞬だけどちらか分からなくなる時があって。子供の頃から見た夢が、言葉通り近づいてきて、視覚を共有しているのでは…と。

そして玖良間邸で獣腹の話しをしているところ。見事に一人の体の中を二人の人格が行ったり来たりしているのが見える。あのシーンが大好きなのですが、あの時は其々がまだ自我を持っているから分かりやすかったものが、富士が居なくなったことをキッカケに混濁していく。 

富士を殺したのは自分かもしれないとなぜ陽之介は思ったのか。きっと感触があったから。本当に混ざりあってしまったから。そこから後はどちらでもあって、どちらか一方だけではない気がしました。黒と白が混ざって灰色になるのではなく、テレビの画像が乱れるように、どちらの意識も乱れ飛んで、音や情景が入り混じるような。 

例えば、「ありがと…な」と言って崩れ落ちる伽羅が、目線の先にあった陽之介の手に一瞬だけ縋っていたソワレ(初めて見ました)。それまで呆然と立ち尽くしていた体が、手が触れた時、僅かに戻った意識は旭太郎だったんじゃないか。そんな風に、シーン中の時々に意識が浮上するのではないかと思っています。あぁ、辛い。 

酒盛りシーンのお猪口並べ替え、8/20からほぼ無くなりました…よね?他のキャラと被って見えない日もありったので定かではありませんが、この日から、荒木さんのお芝居の方向性はほぼ固まったんじゃないかなって、今だから思えてきました。マルチルートじゃなくなった。行ったり来たりしあってる。萊の言葉通りに。(あくまで妄想です) 

舞台上のキャラクターだけではなく、観客ですら「見間違いをしている」可能性があると示唆しているような。頭がクラクラとする感覚。 

「なにからなにまでも、同じ二人」を。 

だから正と悪、陰と陽では片付けられない「同じ二人」を、意図的に演じているのではないかと。 
これは私は東京序盤には見られなかったものだと思っていて、自分の感想を読み返すと変化にまた面白いなぁと思ってしまいます。舞台生物!って感じ。(そしてふせったーに感想残しておいてよかったなって思ってます) 

少し逸れますが、終盤の旭太郎が仲間を斬っていくシーン。あんなにグッとのめり込んで見ているシーンで、羽織に引っかかって取れてしまったエクステをさり気なく左手に隠して、流れるようにお芝居続けたんですよね、荒木さん。鳥肌が立ちました。あのシーンでですよ。あのシーンだから。どれだけの熱量で、努力で向き合ってきたのか…。 
ちなみに羽織の左下に何かが引っかかっているのを「んだごらぁ(と言う風に見えただけで言ってないです)」と振り返った様があまりに旭太郎で。エクステに気づいて羽織ごと後ろ手に引き込んで、次に顔を上げた時にはまた旭太郎に戻って殺陣を続けたのが、かっこよすぎて痺れました。ほんの一瞬のことです。上手だからこそ見れた事かなと思います。 

観劇感想に戻ります。 
二人の事以外で思い出すのは、 

「復讐のための剣ではない。お前たちを生かすための剣だ。」陽之介の話し方が、すごくすごく優しくなりましたよね。 
だからこそ一郎太の仇を取った二郎太が、その言葉を噛み締めるように震えているのが、芯にくる。硬く握りしめた指からこぼれ落ちたのは、剣と日向の世界。その先に待つは漆黒の未来。(尊敬すべき友人が言っていた通り、映画での彼を思うと空を仰いでしまいます。) 

萊と旭太郎のシーン。歳上と思われる萊を敬っているのだなぁと感じるようになりました。親をなくして育ってきた彼等にとって、歳上なのに自分達のことを「兄さん方」なんて言ってくれて、でも経験値豊富でバランスを取ってくれる萊は貴重な存在だったんじゃないかなぁと。だから旭太郎も信頼して、他の子たちには話さないような事も話したり、交渉ごとも任せている。 

マチネ、三郎太の声が一瞬カスカスになってしまったのを「修練のし過ぎで喉が枯れちゃったよ兄ちゃん!」と即座に自分でアドリブフォローし、それを即座に回収する二郎太の、連携芝居にアツくなりました。 

あ、あと二郎太が蔵近のことを「この狐顔!」って罵るところが大好きです😂その後、陽之介の足元で蔵近に向かって狐顔真似したり…。陽之介に褒められた後のアドリブもめちゃくちゃ笑っちゃう。ここでがっつりキャラクターを押し出せた日は、兄弟稽古シーンのアドリブを少なくしたり。松田さんはすごいバランス感覚を持った方だなぁと唸ってしまう。めちゃくちゃ考えて、いろんな選択肢を準備しておいて、板の上で全体を俯瞰しながらそれを瞬間的に出力出来る方なんだろうな。映画で印象的だった、懐手で顎をかく癖を増やしたり。悔しいときは客席まで音が聞こえるくらいに、拳に怒りを込めて床に打ち付けたり。二郎太らしさを上げてくとキリがないくらい。それに喰らいついていってる三郎太も。二人でとことん作りこんで進化していくのが見てて気持ち良いですよね。 

蔵近もね〜、いいんですよね。 
ソワレは初の上手前方だったので、蔵近の表情がよく見えたのですが、あのマグマのような感情を強靭な精神力で捩じ伏せてる感じがもう、最高でした。玖良間が宇内道場を訪ねてきた時なんて、音が聞こえそうなくらいこめかみギリギリしてたり。どのシーンも微動だにしてなくとも、瞳や気で表情を変えることで感情がどっと溢れてくる。 
「我らは莫逆の友」って言うところも、わざわざ門下生の方まで見回してから陽之介に言うんですよね。邑麻兄弟に「(陽之介を幸せにするのは)オレだ」と言うのも、溜めそうなところを即座に言い放つ。蔵近がどれだけ考え尽くして、一生支えていくんだと決心し想い続けてきたかが溢れてくる。 

伽羅はもう赤ちゃんみたいに笑って泣いて殺して、可愛くて最高にゲスいですよね。あんなに整った顔を歪ませてギャハハと笑う人見たことない。死にそうな敵をじーっと眺めて楽しんでたり(萊、とどめ刺してくれてありがとう)。突き抜けて悪役。振り切ってくれてるからこそ生きていていて、日陰党のなかでも憎めなくて愛されてる。殺陣も可愛いんですよねぇ、体が小さくて鎌を持ってるから、一撃を鋭くするために縦突きがあったり、右脚大きく上げて体重こめてたり、回転が多かったり。ひえ〜ってなる。 

そう!殺陣は本当に本気ですごくて。 
皆さんすごい。キャストの方も影武者の方もアンサンブルの方も。全員がすごい。ギリッギリを攻めまくっていて。観てるだけなのに自分も息を殺して体がビクビクするのを我慢しないといけないくらい。格好いぃ〜〜!!って頭の中で100億回叫んでます。 

濃密な2時間10分。 
この唯一無二の幸せな時間への感謝を伝えたくて、最終日はスタオベしました。後ろの方に悪いなぁと思いつつも、どうしても伝えたくて。ソワレはオールスタンディングでしたよね。役者さんたちの観客席を見るお顔を見たらまた泣けちゃって。初めての3回のカテコ。万雷の拍手。どんなお顔をしてたか、涙で滲んで全然覚えていません(笑) 

このご時世でありがたくも8回、私は観ることが出来ました。 
観るたびに新たな発見がある、深みがある。お芝居を、演劇を楽しむことが出来る幸せ。休演があったからこそ再認識出来たのかもしれないと思うと、慢心していた自分の至らなさも含めて色々思うところがありました。観れなかった方々が多くいる中で、座席に座らせてもらっている。その1枚のチケットを大切に、毎日新鮮に楽しみ切りたいなと思います。 

大阪公演もどうか沢山の方に届けられますように。皆様が健やかに気持ちよく過ごせますように応援しております。

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