「にっかり青江単騎出陣」
2022秋-大阪公演
10.8(土)夜 箕面市立文化芸能劇場 大ホール

 

前日のソワレ公演から連続となる3公演目。旅の終盤に険しい山。ましてや今日の昼間公演が手加減しない、夜公演を意識してバランスを取ったりしない、いつも通りの「全力投球」だったので。こんな短い休憩時間でどう回復するのかと。でもそんな心配杞憂でした。観劇後、もう感激と興奮で叫びたかった。あぁ、まだ深化して進化するのかと!

とっても柔らかくて、表情豊かなにっかりさん。
荒木さんの中に居るにっかりさんは元々きっとこんな風に素直で優しいのではないかしら、なんて。普段は物凄く繊細に綿密に、研ぎ澄ました芸術を200%の出力で見せてくださっていると思っているのですが。夜公演はピタッと色んなものがマッチして、当てに行かなくても自然と当たってしまうみたいな。今までがあるからこその、今しかできない上質で豊かな公演。

何度目かの始まりを楽しむように。
軽やかで艶やかな声。

掌で張扇を鳴らし音を楽しむ。釈台を愛おしく撫でる。張扇を鳴らしそうになって何度か空を切ってから、思い付いたとばかりにパッと嬉しそうにわたしたちを見る。
「やってみようか!」と。
「何の話をしようかな…?」とワクワクした様子が可愛らしくて、マスクの下で笑みが溢れてしまう。

遠くで雁の声。
懐かしみ愛おしむようなハミング。
話し口調と講談調が混ざり合い、舞い踊るように物語の立体的な景色を映し出す。絵巻物が広がっていくようで、次は?次は?とワクワクして聞き入って。そして見守ってきた物語の結末に、胸が苦しくなってしまう。

「カラカラ….と」
ことん、と置いてきてしまったかのような心。
そう、あの時だね。
微笑み直して。

温かな本丸の日々が思い浮かぶ。
大切な相方を共に連れて行ってと言われるくらい愛されていて。皆が心配し其々を尊重している。
その気持ちを受け止めた、心からの「ありがとう」。審神者にも本丸の皆んなにも。輝かんばかりの剣舞。伸びやかで強くて。勇壮な旅立ち。

「遊んでくれるの?」
嬉しそうなにっかりさんの言葉で、劇場照明が全灯する。劇場中の全員と手遊びするよ、いう気持ちが嬉しくて嬉しくて。
「それじゃいくよ?」
劇場中が和になって手を叩く。
あの、無観客ライブ配信を思うと泣いちゃいそうになるけれど。笑顔で背中を押してあげたいから全力で。

村正さんが贈っていた花。
何だったかなと思い出しながら言ってみて、あはと笑う。愛おしい想い出。
伸びやかな歌声。
自分自身にも分からない本当のこと。

「仲の良い三人兄弟に見えていたんだ。」
その瞳に映る景色。
懐かしむ横顔。
あの任務がどれだけ大切なものだったのか。

柔かに健気に咲く、たんぽぽのようなにっかりさんが言う。
「失っているのかもしれない」と。
短くなっているんだ、と抜刀した刀身。

あれは、僕自身の笑顔なんだ。
逆手で見せる刀身と自分自身。

僕にもっと力があれば。
床に身体が打ちつけられる鈍い音に、心と身体の痛みが直に響いてくる。敵を倒しても倒しても得られないもの。ボロボロになっても挑み続ける姿。

刀に映った自らを見て、確かめるようにそっと触ってみる。笑顔を浮かべていた。
誰かのためを思ってひたむきに走ってきた心と自らの心の乖離。
「誰だい?」と問う。その声も優しくて。
誰かのためには笑えるのに。

それでも僕は斬ってきた。

ゆらりとけぶる川を超えて彼女は楚楚と現れる。にっかりさんの顕現時と同じ曲で。腰にある刀身を愛おしむように撫でて。橋掛かりから降り立ち、彼岸と此岸の狭間で問う。

逆刃に斜めに乗った首は、逆光で本当に落ちてしまったのかと思った。

どうなりたいのか。
誰かのことを思ってひたむきに在った彼が、考えて出した答え。自らのことは小さな小さな声で。言ってみて少しほっとしたように、後ろ手をついて座る。

真っ直ぐな瞳で彼女に告げる。
受け入れる自分。抱えていかなくてはならないもの。刀身を大切に両手で掲げて。

ごめん。
常に居てくれた彼女を身近に感じているからこその感謝の言葉が優しくて。純粋でひたむきなにっかりさんらしくて、涙が溢れてしまいました。

戻る前の言葉。凛として希望に溢れていて。そして刀剣乱舞の心強さといったらなくて。歌も舞も正に「強く強く鍛えし鋼」。2サビ後の間奏部分の振付けが大好きなのですが、もぅもぅ熱くて余裕があって…胸熱でした。

すぅと息を吸う。
鵲の声で繋がれる過去と未来、ステージと客席。歌は心で、心は想いで。響き渡る。
桜色に染まった劇場を包み込むように両腕を広げて受け止める。深々と美しいお辞儀に万雷の拍手。

つい我慢できなくて、2回目のご挨拶中に皆で立ち始めてしまったのですよね。にっかりさんがお辞儀をして顔を上げた時には劇場中がスタンディングオベーション。驚き、ほっとしたように微笑む。帰り際にもう一度振り返ってみて笑顔になる。3回目のカーテンコールはちょっと気恥ずかしそうに出ていらして、ゆっくり劇場を見回して、心からのお辞儀。そしてふわっと笑って。
その笑顔を見て、幸せで胸がいっぱいではちきれそうでした。

正真正銘の一人芝居で、47都道府県を巡る。
変わらない本なのに、毎公演変わる物語。

どれも観ても楽しんでもらえるように。
このメッセージにどれだけ救われたか。
沢山の皆さんに観てほしいとずっと仰っていたから、何度も観に行く事が少し後ろめたかったのですけれど。いつだって荒木さんは皆んなのことを考えて思ってくれていて。

そして、常人では考えられない荒木さんのお芝居への思いや取り組み。心配にもなるけれど、成そうとしている事を教えて頂けることで、拳をぎゅっと握って応援したくなる。
自分自身にとっても、観るだけではない演劇の楽しみ方、幸せを知る旅。

ありがとうございます。
一歩一歩、一公演を全力で取り組んでくださるから。感謝することしか出来ないけれど。全力で応援する。

どうかどうかこの愛おしい物語が、美しく幕がおりますように。そして想いが続いていきますように。荒木さんとにっかりさん、一座の皆さまの幸せを祈っています。

 


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