はじめに

物心つく頃には私には父親がいなかったから、家庭内における父親の役割を実感していない。

街中で家族をみかけてもいまいちピンと来なくて、男性への嫌悪感が根底にはある。

 

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振り返ると小学4年生のころの私は男性担任におんぶや抱っこをせがんでいたのだけど、

その時点で父親がいない弊害は出ていたんだろうなとは思う。

(もちろん、男性担任は私たちを傷つけないようにそれとなくかわそうとしていたし、

触ってくることは一切なかったので男性担任への邪推はしないでいただきたい。

傍からみると木にぶら下がる子ザル状態だった。)

 

 

当時、私と同じようにおんぶをせがむ同級生のハルちゃんという子がいた。

ハルちゃんは整列する時に先頭になるくらい小柄なのに対して

私は男女混合で最後尾になるくらい身長が高かった。

 

 

ある日学校の廊下でいつものようにハルちゃんとともに男性担任にぶら下がっていると、

隣のクラスの女性教師が私に向かって「そんなに大きいのに、おんぶされてるの~?」と。

 

女性教師は男性担任が対応に困っていることを見かねて

辞めるように声をかけたつもりなんだろう。

でもその時に私の中で一気に羞恥心が襲ってきて

それまでわりと天真爛漫だった性格の私は一つ壁を作った。

 

 

自分ではコンプレックスとは感じていなかった身長が大きいことを自覚した。

まわりを見ると私とハルちゃん以外にはおんぶをせがむ子はいないことを改めて認識して

「まわりと違う、異常なのかも」と自覚した。

 

思い出してい書いているから勝手に脚色されて記憶されていることもあるかもしれないが

私の記憶は今話したことが真実。

 

小学4年生のころのなんでもないような日常と思われる出来事を

16年経った今も覚えているんだから

当時の私にとってはそれなりに衝撃的なことだったのだろうと思う。

 

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私はそれから高校生になるまでの多くの時間を

「父親がいないこと」について考えて過ごした。

 

18歳になったら父親に会いに行こう、今会いたいと言ったら母は悲しむだろう、

なんで離婚したのだろう、なんで父親は私たちに会いに来ないのだろう、

父親は今なにをしているだろう。

 

戸籍謄本をとれば住所がわかるのか?でも住所変更していなければ見つけられないのか?

戸籍謄本をとればそれが母親に気づかれてしまうのか?

 

18歳になった私は勇気が出なくて20歳を迎えたら父親を捜すことにした。

20歳を迎えてもそれでも勇気が出なかった。

21歳の5月、埼玉に住んでいた私は東北の実家へ帰省する。

最寄り駅まで軽自動車で迎えに来てくれた母親は

晩御飯なににする?と聞くのと同じ調子で

「お父さん死んだって」

「...え?いつ?」

「今年の3月」

「そう」

 

亡くなる直前に母親と父方の祖父には病院から連絡があったらしい。

私たち家族が住む東北からは遠く離れた神奈川の病院だった。

離婚後母親と父親は連絡を取っていなかったらしいので十数年ぶりの連絡がそれだった。

 

私の父親は死んでしまったので、私は父親というものが一生分からないことになってしまった。

 

そもそも病院から連絡があった時点で私に連絡をくれてもいいのでは、

と思ったが母親と祖父にも思うところがあったのだろう。

祖父は延命治療もしなくてよい、遺体も引き取れないとしたらしい。

 

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25歳になった私は関東のとある公営墓地に行った。

私の父親はそこで合葬されている。

 

約20年ぶりの再会だった。

もっと感動的な気持ちなるのかと思ったが、なにも感じなかった。

しいて言えば、「そこにいるのか」と思ったくらい。

 

思春期の多くの時間、父親のことを考えていたはずなのに。

 

あっけない。人が死ぬことも私の気持ちも。

 

 

父親に手を合わせに来たのは私だけ。

私以外の親族はどこに埋葬されているのかも知らない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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おわりに

 

冒頭で父親の役割を実感していないと書いたけど、

小学生の私はどうしたら父親という存在の穴埋めができるのかは知っていたんだろうと思う。

 

でもそれも封じられ、中学生になった私は警察のお世話になる。それも未成年淫行で。

加害者とされる相手は当時26歳の関東在住の男性。

...この話はまた気が向いたときに。

 

 

 

 

今日はもう寝ます。

おやすみなさい。