熊さんのカカアと脳死時事問題 | akyoonの異端の医学と不思議な情報

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医学や健康医療の【トンデモ論】を主としています・
本人はいたってまじめ。 しかし自分で自分を検証できないので、眉唾と取捨選択が必要。

《熊さんのカカアと脳死時事問題》
            初版 2000、4、2 himaari

え~~まいどヒマアリなこばなしを

長屋の熊さんではありませんが、
「よう、大家さんよう、世間ではよく脳死っていうけど、例えばようおれのカカがよう。おれのことを常日頃から憎んでいたとしたら、おれがその意識も反応も ないけど生きているというか、もしそれを脳死っていうんなら、おれのカカアはすぐにでもおれの臓器を移植してくれといって泣いて頼むだろうなあ。
いつまでも生きていてほしいなんてこれっぽっちも思っていないはずだからよう。
きっと表は殊勝な格好をして内心はほくそ笑んでいることだろうよ。
おれはぜったいそんな状態になりたくないよなあ。」

大家  「おおや、そんなこと言うなら不断から奥さんのことをもっといたわってやることだなあ。」

まったく人生は思わぬことが起きるのはひまあり話の世界と同様のようでして・・・

熊さんがあいかわらずの飲んだくれで、その陰で苦労しっぱなしでいた奥さんのトメさんが急に倒れて大学病院へ。
そのまま意識が回復しないで、医師から脳死と判定されたのはあまりにも皮肉なお話しでして・・

熊さんの登場
「ところでよう、脳死とお医者さんから言われて、そのまま臓器移植に移ろうとしていたんだが、俺の気持ちが変わってよう、急にカカアがいとおしくなってしまってね、ちょっとマッタってね。臓器移植をするのを猛反対したんだよ。」
熊さんは心配顔で
「すると、家族の同意がないってことになるんだから、どうなるんだろうねえ。
臓器移植を中止してくれるのかなあ? それとも家族が一度認めたら変更はもうむりなんかいなあ・・」
と言いつつも、もう次の段取りを考えている熊さん

「あ、そうそう、亭主のおれが同意しなかったんで、その臓器移植が行われなくなったとしたらよう、どうなるんだろうね、おれのカカアはよう。
死んでいるんだから、葬式をあげてやるのが本筋いなあ? 
そうすりゃあ、となりのはっつぁんや長吉夫婦なんぞもお悔やみに集まってくれるからいいんだが・・、その際あちこちの借金棒引きにしてくれるといいんだが・・・・香典がわりによう~~」
などと、調子のよいことも言っている。

よほど、臓器が疲れていたのかどうかは分からないが、運よく?臓器移植先が決まらず、トメさんの遺体?は治療費も満足にはらえない熊さんではそのまま病院 におくのは無理だったことと、死んだ者?に治療費の補助も打ち切られるのは分かり切ったことだと判断した大家さんの助言もあり、熊さんは泣き泣きトメさん の温かい“遺体”を長屋のぼろ家にひきとったのです。

それで、万事気の早い性格の熊さんのこと、さっそく長屋のなかまにトメさんの死亡と葬儀の告知をしてまわったから、その日はもうお通夜のまねごと。
そこまではまあまあ常識でよかったんだが、熊さんいわく、

「ところでよう、はっつぁんのオッカアなんてのはよう、長い間のびんぼうぐらしの仲間だったんでよう、もう同情しちゃって泣きついて言うんだよう。
それがね~~」
いかにも困った顔で言う。それははっつぁんの奥さんの言葉のことであった。

「トメさん~~~苦労したのにねえ~~このばかとっつあんには泣かされどうしだったねええ~~~」と大泣きで遺体?にすがる。
「なんてまではまだいいんだよ。しかしねえ~、あれにはまいったよ、マッタク!」
「あ~あ、こんなに冷たくなっちまって、まるでまだ生きているようだよねえ~~」 としげしげとトメさんの顔をながめて、ふれたとたん。

「あれ!! 熊さん!   トメさんのからだがあったかいよ!  あれれ、心の臓がまだ動いているじゃあないかい!  息もしているじゃあないか!」

「それはもうひどいけんまくだったよ」
「熊さん、ヒドイじゃないか!  まだ生きているってるのに、葬式をだしてどうするつもりなんだい、え!?」
「いや、それがね、じつは・・・」
「なにが じつは・・ だい!   あんた!まだトメさんの息の音があるうちに死んだと言うんかい!?」
「そ、そ、そ、その、じ、じつは、だ、大学のえらい先生が“死んだ”と言うんだよ。だからあの~う・・それに、明日はもう火葬の申し込みを葬儀屋に頼んでしまったことだし・・・」
「え~~~!? じゃ、アンタ!    トメさんがまだ息もしていて心の臓も動いているうちに燃やしてしまおうとしているんかい?    いくらトメさんが返事をしてくれないうちから、なんてことを!」
「とまあ、おれのカカアもおっかなかったが、そんときのはっつぁんのカカアの顔といったら、もう・・」

「そういえば・・・あんた、ほかに若いオンナがいるってうわさはホントだったんだね!」
「ってね・・、もう~、はっつぁんのオッカアばかりじゃあなく、長吉夫婦も、たまたま借金取りに来ていた酒屋の権兵衛までがおれのことを鬼あつかいしやがるんだい。」
「いったいおれはどうしたらいいんだよう、えらい先生は“死んだ”と言うし、長屋の連中はまだ生きていると言うし、おれはこまっちまってよう、このまま焼 き場にはこんでいいのか、それとも息も心の臓もとまってしまって、からだが冷たくなるまで待っていたほうがいいのか・・」

「うう~~~脳死っていったいなんなんだよう~~」
熊さんは頭をかかえこんでしまったそうだ。


このにわか話の結末はとりあえず、みっつある。
一、心臓も動いて息もしているトメさんの“遺体”はそのまま予定どうり火葬された。(経済的にもめんどう見れなかった)
二、長屋のみんなの協力もあり、熊さんは決心して火葬をとりやめ、息をしている間は生きているのだと思い直して介護を続けた。その後ある期間を経てトメさんは息を引き取り、ほんとに冷たい身体になったので葬式の後、火葬にされた。
三、なんと、お話なのでびっくりするようなことが起きた。(実際にもあるかも知れないが)
それは・・、だれもが回復不可能だと思われていたトメさんは、ある日うっすらと目をあけ、やがて口を開いた。
「あ~あ、よく寝た。  アレ?  あんたまだうちにいたのかい?いつまで遊んでりゃあ気が済むんだい!  このバカテイッシュッ!!」

       まったく、ちり紙亭主の面目はまるつぶれでして