
会場) KAAT 神奈川芸術劇場
主催) パルコ
主な出演者) 増田有華(AKB48)、ISSA、良知真次、エハラマサヒロ、森久美子、小柳ユキ、JONTE' MORNING、瀬戸カトリーヌ、吉田メタル、陣内孝則
翻訳演出) 宮本亜門
訳詞) 森雪之丞
音楽監督・編曲) Nao'ymt
振付) 仲宗根梨乃
美術監修) 増田セバスチャン
台本 / 作) William F. Brown
作曲 / 編曲) Charlie Smalls
作詞) Charlie Smalls
原作) Lyman Frank Baum "The wonderful wizard of Oz"
代表曲) Home, Be a lion, Ease on down the road
音楽 ) ☆☆☆☆☆
ストーリー) ☆☆☆☆
演出 ) ☆☆☆☆
俳優 ) ☆☆☆☆☆
総合 ) ☆☆☆☆☆
【あらすじ】カンザスに住む少女ドロシー(増田有華)。ある日、竜巻に巻き込まれ、気が付くとマンチキンの国にいた。その時一緒に吹き飛ばされた鏡台が東の悪い魔女エバミーンをおしつぶして死んでしまった。そこへ北の善い魔女アダパール(瀬戸カトリーヌ)が現れ「帰りたい」というドロシーにオズの国にいるウィズ(陣内孝則)に会いに行くことを勧める。ドロシーはエバミーンの銀の靴を履き、黄色い道の案内人(ジョンテ)に導かれてエメラルドシティーを目指す。その道すがら、脳みそが欲しいかかし(ISSA)、心を取り戻したいブリキ男(良知真次)、勇気を持ちたいライオン(エハラマサヒロ)と出会い、彼らも願いを叶えるため一緒に旅をする。道中、様々な困難に遭いながらもエメラルドシティーにたどり着く。しかしウィズは願いを叶える代わりに西の悪い魔女イブリーン(森久美子)を殺す事を条件として出す。
人を殺すのは嫌なドロシーだったが、とにかくみんなとイブリーンの住む城へ向かう。その途中でイブリーンの手先に捕まって城へ連れて行かれるが、まんまとイブリーンをやっつけ、意気揚々とエメラルドシティーへ戻る。しかし、ウィズがいかさまである事が解る。かかし、ブリキ男、ライオンはそれぞれ望む物をそれまでの過程で手に入れていることに気付くが、ドロシーだけは望みが叶えられないことが解る。さらに、ウィズがオズの国にきたときに使った気球でウィズと共に帰ることを提案されるが、これもウィズの裏切りによりドロシーは置いて行かれる。傷心のドロシーに南の善い魔女グリンダが、銀の靴のかかとを3回鳴らせば望みが叶えられることを教える。
【作品について】オズの魔法使いは"智慧と愛と勇気をもって「信じれば願いは叶う」"というテーマを基盤にアメリカ社会では広く根付いている物語で、今もそれを題材とした様々な作品(Wickedなど)が作られている程である。映画『オズの魔法使い』では主に白人により演じられ(ジュディーガーランドなど)ていた。一方、THE WIZは映画ではMichael JacksonとDiana Rossで有名だが、元々はオズの魔法使いのBroadway黒人Musical版として1970年代に誕生した。それまでと異なり"黒人による黒人のためのミュージカル"としてBroadwayで演じられトニー賞を多く受賞しロングラン公演されてきたことは、当時まだ黒人差別問題が根強く残っていた社会にとって、黒人も白人と同様アメリカ社会でのアイデンティティーを示すなど、大きな意義があったと考えられる。
【感想】
・ずっとずっと上演を待ちわびていた作品。映画と舞台ではとにかく迫力が違う。1984年に来日版The WIZを観たのが私にとって初めての来日版ミュージカル(初めてのミュージカルはそのに週間前に観たCATS)。決して良い席ではなかったし、英語も解らなかったけれど、黒人の方々が持つ独特のリズム感、出演者の歌の迫力に圧倒された。私がミュージカルを大好きになったきっかけの作品。オズの魔法使いというしっかりした原作、単純明快なストーリー、そして、ジュディーガーランドが映画で演じたのとは違うこの作品自体が持つ意味にとても衝撃を受けたのを覚えている。それが故に、多分演じるのが難しかったと考えられ、オランダとかで上演されたり過去に日本でも同名で演じられた形跡はあるのを見たけれど・・・。宮本亜門さんがこの作品の持つ黒人独特のテンポをどう日本人仕様にカスタマイズするのか、興味があった。朝の情報番組で歌っているところを一部公開しているのを観てそう思いながら楽しみに観劇。
・客層が、いつも観るようなミュージカルとちがって、若い人が殆ど。
・最初の嵐のシーン、衣装が白でかなりシンプルな衣装のためかさらわれるシーンなのに迫力に欠ける。
・冒頭のカンザスの家のシーン。マンション。これは映画に設定を合わせた?
・超ド級迫力ミュージカル、と銘打っているのを期待していたほどの迫力ではなかったけれど、全体的を通して中だるみする時間帯でも飽きることなく、次から次へとぐいぐいと客に"勢い"を押し込んでくる。
・映像とかも上手に使っている。
・数曲、聞いたことない曲があった。日本的な曲調に感じた?
・歌は皆さんとてもお上手で、それを基準にキャスティングされたのかな?って感じた。ただ、その分、演技が・・・少しだけ物足りない感じがしなくもなく。門番さんはさすが舞台出身の方だけあって演技がとても自然で巧みな感じがしたかな。
・当然だけど、所謂"オズの魔法使い"とは違うし、かといって、来日版のThe WIZとも少し世界観が違う。基本がTheWIZ、としっかり芯が通っているのだけど、ちょっとした冗談や言い回しとかぐっと日本に合わせてあるし、曲も舞台装置や衣装などで表現されている世界観が所謂"オズの世界"とはまたちょっと違う。衣装や装置などとてもカラフルであざやかでファンタジーフル。確かに出演者さん達が言っていたように「テーマパーク」のよう。日本人が演じる以上、黒人の方々と全く同じように演じる事はまず不可能だし、元々の黒人的な作品をただ真似するのではなくその間隙を埋めたというか、すりあわせていった結果なのかなと。これがきっと宮本亜門さんが描きたかった"日本のWIZ"なんでしょうね。
・休憩は二十分取ってあったのだけど、カフェに並んだ人数が多すぎたのか、さばききれず、時間不足になり、お茶できないひとがけっこういたようだった。
・二幕はじめ、森久美子さんの"Don't Nobody Bring Me No Bad News"は、黒人の方が歌うのとは違うけれど、迫力があってとてもソウルフルでさすがだと思った。彼女のそれまでの背景がキャラクターに存分に生かされててこのイブリーンはとても魅力的だった。他のキャストも同様。これらの役に合う役者さんを徹底的に妥協せず選んだ結果、個性が巧く随所に生かされてる。
・Everbody Rejoyce、赤くてごてごてした衣装やウィッグ?をぬぎすててシンプルな白い衣装になることで、イブリーンが死んで解放された歓びを表現している。踊りも現代舞踊のように見えたのだけど、あくまでファンタジーの世界にいるわけで、現代に引き戻されてしまった感じがして少し興ざめ。もう少しマンチキンの世界を残していてくれてもよかったかなぁ。
・ウィズの陣内孝則さんは九州弁などを随所に入れた口の巧いコミカルな演技はとても小細工が効いていてバランスが良く小気味よかった(プレスリーの真似とかね)。
・演出上、現代のものに置き換えてわかりやすく表現している箇所が随所に観られた(アダパールがグリンダと退場するところ「このあと中華街の聘珍樓予約してあるのよ」とか)。
・とにかく、エンディングテーマは明るく楽しくパワー溢れる。楽しい気分になって帰れる。
・ドロシーは、かかし、ブリキ男、ライオンに出会わなくても、実際には帰ることが出来た。でも、出会って共に旅をすることで彼女は成長した。意味があったのだと思う。
・Ease on Down the Road, Everybody Rejoyceでは底抜けに明るく、踊り出したくなるくらい心から笑顔になれた。逆に、Be A Lion, Believe In Yourself, Homeでは頬を伝う涙を留めることは出来なかった。それだけ、その世界にのめり込むことが出来たし、心を揺さぶられることができた。大満足。