福岡市地下鉄vs西鉄の仁義なき戦い。 | Aki's Direct Reporting

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「沿線住民の6割が使わない地下鉄」という記事が何日か前のYahooのトピックスにありましたが…それは福岡市地下鉄七隈線のこと。

上の画像は七隈線の車内ですが、ちなみにこの画像は始発駅で撮影したものではありません。早朝でもありません。昼下がりくらいの時間帯に、賀茂駅という、西側の起点、橋本駅から3つめの駅から乗ったときに撮影しました。でも…いつもだいたいこれくらいの乗車率なのです。

七隈線を使わない理由…それはマイカーと西鉄バスの存在。
地下鉄七隈線が開通したのは2005年2月3日…中央区の天神南駅から薬院・六本松という、いわゆる城南線と呼ばれる道路の地下を通り、そこから七隈・福大前という福岡市の西南部、城南区に向かい、そこから福岡外環状道路の地下を通って西区の橋本へと至る路線として誕生したのですが、この路線の持つ弱み…それは

『天神止まり、空港線との乗換が不便』

…福岡市の主要部は天神と博多駅。地下鉄空港線は西区の姪浜から西新・天神・中洲・博多駅を通って福岡空港に至る路線。さすがに空港線はなかなかの乗客数なのですが、七隈線はこの空港線と天神で接するのみ。しかも、七隈線の終点である天神南駅と空港線の天神駅は天神地下街で接続しているけれど、この2駅の距離は約600m。京葉線東京駅のような状態…。

福岡の企業というのは確かに天神周辺に多いのですが、博多駅あたりにもかなりの数があるのです。七隈線沿線に住んでいる人が地下鉄で博多駅に通勤するとなると乗換が不便な天神での乗換を強いられるのです。

そして…西鉄バスがこの欠点をカバーしてしまっているのです。

西鉄バスの路線数はもう膨大で…七隈線方面に向かうバスも多種多様。しかも天神の南側の外れに到着する七隈線と違って、天神の中心部のバス停に到着するのが西鉄バス。

さらに…七隈線沿線地区から博多駅に直通するバスも多数。つまり、博多駅方面に通勤する人は地下鉄七隈線を使うメリットはないのです。

しかも、バス停は地下鉄の駅よりも間隔が短い…つまり、駅までの徒歩が遠い人もバス停だったら近い、という人がけっこういるはずなのです。

…七隈線、ここまで完全に不利。

しかし、電車の利用者で忘れちゃいけないのは…『通学ユーザー』。

七隈線沿線には九州大学六本松キャンパス、福岡大学、中村学園大学など…学校がたくさんある地域なのです。特に福岡大学はすべての学部が福大前駅周辺に集中しているし、しかも総合大学ゆえのマンモス級の学生数。これは集客が望めるはず!!

…なのですが、これを黙って見ていないのが西鉄バス。
七隈線と運行経路がかぶる『天神~(赤坂門)~六本松~福大前』(停車バス停はこれだけ)というルートを運行する『エコルライナー』という、九大生・福大生をターゲットにしたバスを運行し始めたのです。

しかも…これに追い討ちをかけるのが『エコルカード』。
私も使っているのですが、福岡都市圏(福岡市を中心にかなり広範囲)を走るすべての西鉄バスに乗車可能で、しかも1ヶ月6,000円という破格の値段。自宅から学校まで徒歩以外の手段で通学する学生だったらみんな使ってるんじゃないかな、と思うくらい誰もが使っています。

たぶん、エコルライナーの通らない、西鉄天神大牟田線の薬院駅を経由して福岡大学へと通学する学生くらいしか七隈線は使ってないんじゃないかなぁ、と思えてしまいます。

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西鉄バス…恐るべし。

しかし、福岡市地下鉄も黙っちゃいられん、と思ったのでしょう。
こんな商品を売り出しました。

『福岡市地下鉄全線定期券 ちかパス』

地下鉄って運賃も高いけど、定期券の運賃も高かったんです。
私が地下鉄で通学するとすれば『天神~(中洲川端乗換・一部直通あり)~貝塚』か、『博多駅~(中洲川端乗換)~貝塚』なのですが…まずどちらのルートを選ぶか、ということを考えなきゃいけないし、しかも1ヶ月6,000円という定期代。

『エコルカード』だったら天神からでも博多駅からでも通学できるし、しかも乗換不要。さらに、通学時以外、全く関係ない場所(たとえばヤフードームとか)でさえ運賃を支払うことなく行けてしまうのです。地下鉄には魅力がなかった…。

でも、『ちかパス』は地下鉄全線乗車可能。通学定期は1ヶ月7,000円・通勤定期も設定されて1ヶ月12,000円。

地下鉄の定期としてはかなり格安に設定されました。これは七隈線の利用者増加へのカンフル剤投入と見ていいでしょう。だって、計画の4割くらいの乗客しかいないから。

…果たして学生は『エコルカード』から『ちかパス』に移行するか??

たぶん…答えはNoかなぁ。
なぜなら…地下鉄で行ける範囲は限られているから。やっぱりねぇ、福岡市の中心部のみなのか、福岡都市圏全域なのか…そりゃ後者を選ぶって。各種公共施設に行くにしても地下鉄からだと例えばヤフードームならば唐人町駅から15分くらい歩きますが、バスだったらドームの真下まで行けるから。

…でも、通勤になったら考えるかも、です。
天神・博多駅周辺だとクルマで通勤はやっぱり難しい…。でも、エコルカードのようなモノは通勤用には設定されないので、そうなると地下鉄全線定期は俄然魅力的なのです。

ただ…これまでマイカー通勤だった人が地下鉄通勤にシフトするかどうかはまだわからないですね。駐車場料金+ガソリン代を考えれば12,000円で地下鉄全線はお得な感じがするんですけどねぇ…こればっかりは個人の価値観の問題だから。

しかし、西鉄バスの通勤定期というのは決して安いものではないので、もし地下鉄で通勤できる場所に住んでる人だったらシフトするかもしれない、という気はします。そうなると初めて福岡市地下鉄は西鉄バスにちょっと優位になるかもしれないのです。

…競争ってありがたいですね。
首都圏ではバスはこんなに便利じゃないし、地下鉄の全線定期だってないですよね。

でも、福岡の交通事情は西鉄と地下鉄が戦ってくれることでどんどん便利になってくるのです。ぜひとも戦い続けて欲しいのです。

ただ…七隈線の利用者を増やすにはこれだけじゃ足りないかも。
やっぱり博多駅との直結は不可欠じゃないかな、と思うんですよね。天神から博多に向かう地下鉄が2系統も必要か?と言われればちょっと微妙ですが、でもそれを建設することによって七隈線沿線在住の博多駅ユーザーはきっとシフトすると思うんですよ。天神~博多駅間にはキャナルシティ付近という、地下鉄では不便な場所が残っているから。

まぁ…市民の税金を使う話ですからねぇ、なかなか難しいとは思いますが。
でもやった方がいいと思うけどなぁ。

…ちかパス発売に当たって、ふとこんなことを考えてみたのでした。