ふとした縁で手にしたこの本、「二つの祖国」。まだ読み終わっていないのだけど、学ぶこと、考えさせられること、多い本です。著者は白い巨塔の山崎豊子です。

ざっくり言うと、パールハーバー襲撃直後から東京裁判までの日米を舞台に、カリフォルニア生まれ&育ちの日系二世の主人公が、二世であるがゆえに人生を大きく翻弄される物語です。主人公やその周辺の登場人物はフィクションだけれど、戦争や東京裁判などの歴史的事実は著者の徹底的な取材に基づいたもの。

私は、この本を通して、パールハーバー攻撃直後以来、在米日系人たちがどれだけの差別や仕打ちを受け、日本の敗戦後までも大変な苦労をしたのか、と言うことを恥ずかしながら初めて知った。特に、日系人強制収容所のことは知らなかったのです。もっと言うと、第二次世界大戦の詳細もここまでは知らなかった、ということも読んでいてありましたし、東京裁判に至っては知識は皆無に等しかったと思い知らされました。
全くの偶然ですが、この本を読み始めた頃に、娘が週一で通っていた日本語補習学校が借りている現地校の教室に、壁一面にこの日本人強制キャンプや当時の日系人たちの様子をリサーチしたものが貼ってありました。子供たちも先生も全然気づいていなかったけれど、私は、その教室で、日本人を親に持つ子供達が学んでいる偶然に不思議な縁を感じ、ありきたりの言葉ではあるけれど、その時代と比べて私自身やこの世代がどれだけ恵まれているかと考えさせられました。

物語に戻ります。
主人公には二人の弟がおり、一人は開戦時は日本で住んでいたため日本で徴兵されます。もう一人の弟はアメリカで高校生であり、日系人強制キャンプに入れられてしまうのだけど、アメリカ市民としてアメリカへの忠誠を誓い、戦場へ行くことを志願します。主人公自身は、アメリカ軍の対日戦の語学兵(日英バイリンガル、更には日本で大学に行っており日本人の心理を心得ているため)として、戦場へ行きます。主人公は戦後も米軍に残り、東京裁判の言語モニターとして裁判の翻訳に
関わります。

他の鍵となる登場人物の日系2世の女性は、移民だった両親と強制キャンプを出て故郷の広島へ帰国し、家族で被曝してしまいます。両親は亡くなり、彼女は生き延びたものの、のちに被曝が原因の白血病となり、亡くなるのです。

彼女が残した手紙。
「死を目前にして、私の心を一番締めつけているのは、自分が生まれた国、アメリカが落とした原爆によって被曝し、生命を絶たねばならないことです。小学校から星条旗に忠誠を誓い、“合衆国よ永遠なれ”と心の底から国歌を唱い続けて来たこの私は、アメリカの敵だったのでしょうか。
この答えを得ぬまま、死んでいかなければならない日系二世がいたということを、合衆国はいつの日か知り、納得の行く答えを出して欲しいと願います。」



結果としてどれだけの被害があって、だから戦争は、恐ろしいもので二度と起きてはいけない、というふうに今までは思っていたけれど(それは今でもあるけど)、どういう経緯でこんな酷いことが起こってしまったのか、そこの時代を生きた全ての人がそれぞれの立場で苦しんだのだ、ということを学ぶことが大事であると、この本を通して思いました。

国籍問わず、戦争の犠牲となり亡くなった多くの方達のご冥福をお祈りします。