いくちゃんは、ハミガキが大きらい。
よるねるのも大きらい。
ごはんよりもおかしがすき。
だって、おかしっておいしいもん!
おくちのなかは、チョコだらけ。
おかあさんがプンプンおこって、
「ハミガキしなさい!」っていっても
いくちゃんは「いやだよ~!」って、にげまわります。
すると……あの人がやってくるのです。
あの人が……あくまのおかあさんが!
あくまのおかあさんは、
ハミガキする子が大きらい!
よる ちゃんとねる子も大きらい。
おかしをたべて、ハミガキしない子がだーいすき!
「イーッシッシッシ! いくちゃんはいい子だねえ!
あくまのおかあさんは、ハミガキしない子だーいすき!
さあさあ、あくまのおかあさんが、
お口の中にあま~いお砂糖を
ぬってあげましょうねえ!」
あくまのおかあさんは小さな声でいいました。
「これでいくちゃんの歯はぜーんぶ、
むしバイキンでいっぱいになって、ぼろぼろになっちまうよ!」
これをきいたいくちゃんは、
あわててハミガキをとりだして、いっしょうけんめいみがきました。
「あ!何をするのさ!それじゃあ、むしバイキンがいなくなっちまうよ!
……しかし、おかあさんに仕上げ磨きをさせなければ、むしバイキンは
まだまだ出て行かないからねえ…!」
するといくちゃんはあわてて、おかあさんのおひざの上にあたまをのせると、
ぱかっと大きな口をひらいて、アーンをしました!
あくまのおかあさんがいいます。
「な、なんてこったい!これじゃあ、私の大すきなバイキンたちが
きえてしまうじゃないか!」
しかし、あくまのおかあさんはニヤリとわらっていいました。
「だけど、ぐちゅぐちゅぺー! をしなければ、
こっちのもんだね!」
たいへんです。
ぐちゅぐちゅぺー! をしないと、
せっかくみがいた歯にまたむしバイキンたちがくっついてくるのです。
するといくちゃんは、「ドドドド」とせんめんじょへ走っていって、
一人でハミガキコップに水をいれて、ぐちゅぐちゅぺー!をしてやりました。
あくまのおかあさんはさけびます。
「なんてこったい!バイキンたちがぜんぶ、
出ていっちまったじゃないか!
こ…この子は、いい子すぎるよ~!」
あくまのおかあさんは、いくちゃんがあんまりいい子なので、
たおれてしまいました!
おかあさんがきていいました。
「よかったねえ、いくちゃん!
むしバイキンがぜんぶいなくなって、あくまのおかあさんにげていったよ
あくまのおかあさんは、あくまのくににかえったよ!
あくまのおかあさんのこどもはね、あくまちゃんっていうの。
あくまのおかあさんはよる、
ねる前にチョコレートを36枚も
かってくれるんだけど、
あくまちゃんはたべたフリして、
こっそりハミガキしちゃうんだよ。」
いくちゃんがいいました。
「あくまのこども、いいこだね。」
「うん。こどもがねると、あくまのおかあさんはあくまのいざかやで、
ヤモリとヘビをつまみながら、おさけを飲んじゃうの。
だけど、あくまのこどもが
『おかあさん、いっしょにかえろう』って、
つれてかえってくれるんだよ。」
「あくまのこども、いいこだね…」
あくまのこどもは、ねむってるおかあさんの口にハミガキをつっこんで
ちゃんとハミガキをしてあげました。
あくまのおかあさんのむしバイキンも、お口の中からにげていきます。
よるはねむくて、おふとんはふかふか。
いくちゃんはおかあさんと、あくまのおかあさんはあくまのこどもと。
みんなぐっすり、あたたかなおふとんでねむりました。
いくちゃんによい夢を。
あくまちゃんとあくまのおかあさんにも、
みんなみんなに、よい夢を!
SEE YOU NEXT STORY!
「いくちゃんと あくまのおかあさん」 山田スイッチ
2010/12/28