『アンダー・ユア・ベッド』 異常者を通り越して変態です!? | 悪食のシネ満漢全席

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ろくに情報知らぬまま、当たり屋みたいに突撃して、 しょーもない感想を言い合って、備忘録代わりに残します。 かなりの無責任、言いたい放題、無礼千万をお許し下さい。

 

悪食 75点
今年 45本目

監督、脚本 SABU
原作    大石圭す
出演    イ・ジフン
      イ・ユヌ
      シン・スハン


2019年に日本でも映画化された同名小説の韓国版。
DVに苦しむ女性を救うストーカーを描いたサスペンス。

鑑賞結果、何処にでもいる社会人が精神的に病んでいることを表現した映画。
救いはありませんが。韓国映画の割には殺人が少ないですし。


ここからネタバレ満載でいきますからご注意を⁉️



学生時代から地味で消極的なジフン(イ・ジフン)は、初めて大学で名前を呼んでくれたイェウン(イ・ユヌ)を忘れられずにいた。
数年後、熱帯魚屋を営んでいたジフンの店に偶然、イェウンが現れた。


イェウンはジフンを覚えていなかったが、イェウンが熱帯魚に興味を持っていることを知ると、売り物にならないものを水槽ごと差し上げるので餌だけこの店で買ってくださいとお願いして、イェウンの家まで水槽を運ぶことになった。


そこでジフンは、イェウンの家の鍵の暗証番号を覚えて後日、忍び込むのであった。



完全なストーカーです。ここからさらにこのストーカーは異常性を発揮していきます。

ジフン(イ・ジフン)は、イェウン(イ・ユヌ)の家に隠しカメラと盗聴器を多数仕込みます。それによって家の中をどこでもみられるようにするのです。


イェウンは医者のヒョンオ(シン・スハン)と結婚していたが幸せな結婚をしていた訳ではなかった。


ヒョンオは子供の頃から親に折檻を受けていて、それがイェウンに対するDVに発展していた。そしてイェウンは性奴隷でもあった。暴力の末のセックスを強要されていたのだ。


それを盗み見て盗み聞いているジフン。
それに飽き足らず、ジフンは家に忍び込み寝室のベッドの下に潜り込んで息を殺して潜んでいるのです。夫婦のセックスをベッドの下で聞いているのです。



ヒョンオ(シン・スハン)のDVはますます酷くなり、イェウン(イ・ユヌ)の父親が病気で倒れても見舞いにも行かせなかった。
イェウンはそんなヒョンオに殺意すら感じるようになるのだが、自分さへ我慢すれば親は幸せになれると信じ込んでいた。
しかしとうとう耐えられなくなりある日、家を出た。
イェウンはホテルに隠れるのだが、その時に自分のスマホに盗聴器が仕込まれていることに偶然気付くのである。しかし何故か盗聴器を外そうとしなかった。

家に帰ってイェウン(イ・ユヌ)がいないことを知ったヒョンオ(シン・スハン)は怒り狂い、ホテルに隠れていたイェウンを探し出したのだ。
イェウンを家に連れ戻したヒョンオの怒りは収まりがつかず、イェウンはこのままでは殺されると思った。


イェウンはジフン(イ・ジフン)が盗聴していると信じて助けを求めたのだ。
「聞いているんでしょ。助けて」と。
ジフンはベッドの下から這いずり出てきた。
そして驚くヒョンオを止めようとするのだが、包丁を持ったヒョンオは反撃をする。そしてとうとうジフンはヒョンオを殴り倒した上に持っていたアメリカンクラッカーの球をひょんの目に陥没させたのだ。ヒョンオは動かなくなった。
ジフンはヒョンオを担いで出て行った。
イェウンは血まみれの部屋で呆然としていた。

翌日、ジフン(イ・ジフン)は警察に連行された。自分で通報したのだ。
イェウン(イ・ユヌ)はジフンの店に行くが、既にジフンは警察の車に乗せられて走り出していた。
イェウンは警察車両を追いかけるが、その思いが届くことはなかった。
ジフンの供述のもと、山に入ると、林の中で茫然自失となりながらも生きているヒョンオが発見された。
エンド。

という映画です。
DV、性奴隷、ストーカー、盗撮、盗聴とセンセーショナルな言葉を羅列できるほど、異常性を追求した映画である。
そしてわずかに感じられるテーマはそんな異常な世界の中でも声を上げれば差し出される手があるかもしれないということ。
それがどんな状況下でも。
だからこそ声はあげるべきなのだというメッセージが感じ取れたが、そこを表現する内容がここまで女性を虐げる映画なのかという疑問もまた起きる。
しかしだからこそ記憶には残るかもしれない。
ジフンにとっての盗聴は想いを寄せる相手に24時間寄り添うこと。それはイヤホンから流れる音でもあり、ベッドの下に潜むことでもある。自分にとってはそれはどちらでも良いのだ。実際に触れることはできなくても、妄想の中では抱きしめているのだ。
ジフンが最後にイェウンのために現れるのは正義の為でも怒りの為でもない。
自分に助けを求めるイェウンに寄り添っただけ。だからヒョンオを排除してもイェウンに関わることはない。
自分で通報したのは何故なのか?自分と同じ名前の男が犯罪を起こしたことに呼応したのか?それとも自分の罪を償おうとしたのか?
そうではないだろう。
イェウンに対する自分の気持ちの終止符を打っただけなのだ。
未来には何もない。変化もない。変わらぬ毎日を過ごす場所が変わるだけ。
自分にとっては変化のない変わらない毎日がまた戻ってくるだけなのだ。

ジフンに対しての共感性などは全くない。
理解も出来ない。

しかしこの映画は記憶には残りそうな気がする。
興味がある方は是非、劇場で。