悪食 60点
今年 38本目
監督、脚本 ビム・ベンダース
脚本 高崎卓馬
プロデューサー 役所広司
出演 役所広司
柄本時生
アオイヤマダ
中野有紗
麻生祐未
田中泯
石川さゆり
三浦友和
2023年、第76回カンヌ国際映画祭コンペティション部門男優賞受賞作品。
菊川Strangerへ。
鑑賞結果、画面比率がテレビ用の4:3なのは何故?理由が分からない。セリフがほとんどなく、起承転結の無い、役所広司の演技だけの映画。面白くはありません。
ここからネタバレ満載でいきますからご注意を⁉️
毎朝早くに起き、盆栽のような植物に水をあげ、歯を磨き、変わらぬルーティンで家を出ると、自動販売機で缶コーヒーを買い、軽自動車で都内の公衆トイレの掃除を生業としている平山正木(役所広司)。
仕事終わりにいつもの飲み屋で焼酎とつまみ。時折、気に入った文庫本を読む。この繰り返しを毎日のように行う。いかにもつまらない人生のようだが、平山はそんな毎日の中にも小さな変化を見出している生活に満足を感じていた。
同僚のタカシ(柄本時生)が話しかけようと、無駄なことには一切喋らず、必要最小限の会話しかしなかった。そんなタカシの要望にも応えるが、それは無駄な時間と軋轢を負いたくない為。タカシがどんな生活をしようとも平山には全く関係無かった。
そんなある日、アパートに戻ると1人の女の子が待っていた。姪っ子のニコ(中野有紗)だ。家出をしてやってきたのだ。正木(役所広司)は何年ぶりかに会う姪っ子を快く受け入れるが、ニコの母親である妹、ケイコにも連絡入れていた。
ケイコは直ぐに迎えに来た。ニコは帰るのを嫌がったが、「いつでも来れるさ」というと素直に車に乗り込んだ。
ケイコは運転手付きの車でニコを迎えに来ていた。金持ちなのは明らかだ。「こんなところに住んでいるのね」とケイコは言ったがその言葉に嫌味は無かった。
ニコはケイコが正木を嫌っていると思っていた。何故なら正木の話をすると直ぐに話を逸らして何も言わないからだ。
しかし正木はケイコとハグをした。まるで恋人のように。正木の目には涙さへあった。
平山の変化の無い生活がまた始まった。
寝ている間に見る夢は、相変わらず無機的だった。
平山はいつものルーティンが始まったが、その顔は涙に濡れていた。
エンド。
恐ろしく何も起こらない映画です。そして見せているのは平山の変化の無い生活。ビム・ベンダース監督は何が言いたくてこの映画を撮ったのだろうか?
公衆トイレの掃除をしていると様々な人との関わりがあるが、その描き方が余りにもステレオタイプの人の描き方で、その見せ方は悪意にも感じる。
平山の目にはそんな風にしか映ってないのかもしれない。平山にとって変化の無い生活は彼にとってのささやかな幸せでもあるのかもしれないが、それを受け入れているのはある種の贖罪かもしれないと考えてしまう。
どんな贖罪なのか?
ここからは悪食の映画の読み取りではなく、妄想なのだが、平山正木は実の妹を愛してしまった。そしてニコが産まれたのだ。それを知った父親は怒り狂い正木を感動した。家の敷居は二度と跨がせないと決めた。しかしケイコは身籠っている為に家に残した。だから平山家本家では正木の話はタブーなのだ。ケイコは正木に対する想いを胸の奥深くにしまい込んでいるのだ。そして正木は自分のしてしまったことにある種の罪悪感を持っていて、その贖罪を含めて変化の無い人生と生活を選んだ。不必要な人との関わりを持たず、不必要に生活を変えない。
そんな生活にささやかな幸せすら感じていたが、夢は無機質だ。そこに僅かな心の悲しみが見える。
そんな男を役所広司が演技だけで表現している。無駄なセリフは一切無い。というか無駄なセリフしかない。観ている側には何も説明しない。
不思議な映画です。
ロングランしてます。是非、劇場で。