『孤狼の血 LEVEL2』 松坂桃李と鈴木亮平のイカれ競演! | 悪食のシネ満漢全席

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ろくに情報知らぬまま、当たり屋みたいに突撃して、 しょーもない感想を言い合って、備忘録代わりに残します。 かなりの無責任、言いたい放題、無礼千万をお許し下さい。

 

悪食 85点
今年 32本目

監督 白石和彌
原作 柚月裕子
脚本 池上純哉
主演 松坂桃李
   鈴木亮平
   村上虹郎
   西野七瀬
   毎熊克哉
   斎藤工
   中村梅雀
   寺島進
   宇梶剛志
   かたせ梨乃
   吉田鋼太郎
   滝藤賢一
   中村獅童

広島の架空の都市を舞台としたヤクザと警察の抗争を描いた「孤狼の血」の続編。
白石和彌監督がまたもやメガホンを取るなら観に行かないと。
お台場ユナイテッドシネマへ。
   
鑑賞結果、一作目も面白かったのですが、二作目もなかなかのハードぶり。面白いです。
何と言っても鈴木亮平のイカレ振り。「TOKYO MER」の役もやりながらその対局の役どころ。
天才ですね。


ここからネタバレ満載でいきますからご注意を⁉️



広島で暴力組織の抗争に巻き込まれて殺害されたマル暴刑事、大上の跡を継ぎ、広島の裏社会を治めるようになったのが大上の相棒刑事、日岡(松坂桃李)。

警察権力を使い、裏の社会を取り仕切る日岡の前に、その抗争で収監されていた上林組組長、上林(鈴木亮平)が出所してきた。

悪魔のような上林は、先ずは自分を執拗に可愛がってくれた看守の妹をレイプした上、惨殺した。両目を抉られた悲惨な遺体だった。
直ぐに捜査本部が立ち上がり、日岡が応援として呼ばれた。
ヤクザと繋がっていると見られている日岡は警察内でも嫌われ者だった。
捜査本部長の嵯峨(滝藤賢一)が日岡を呼んだのだ。そして日岡には定年間近の公安出の瀬島(中村梅雀)が相棒として付けられた。


直ぐ捕まると考えられていた犯人の証拠は無く、捜査は行き詰まっていた。

上林(鈴木亮平)は、五十子会会長の仇を取ろうと思っていたが、五十子会は尾谷組と手打ちをしていた。


会長(吉田鋼太郎)、二代目組長(寺島進)、幹部(宇梶剛志)は、上林を抑えようとしたが、逆に上林は幹部を殺し、二代目組長をも殺して会長を黙らせ、組長の仇討ちの準備を進めるのである。



日岡(松坂桃李)は、抗争を止めようと上林組にS(情報屋)を潜り込ませた。
Sは日岡の女、真緒(西野七瀬)の弟、幸太(村上虹郎)だった。


真緒は反対していたが、これが最後だからと言って、幸太を上林組に送り込んだのである。



上林(鈴木亮平)は、完全にイカれていた。二代目組長(寺島進)を殺した時も檻に繋いで拷問した上で、組長が隠し持っていた銃器のありかを吐かせると目を潰してまだ息がある組長の奥さんと一緒に焼き殺して埋めたのである。
そんな片棒を幸太(村上虹郎)はジャブを打たされた上、手伝わされ、幸太の精神は崩壊しかけていた。


そんな状況を知っても日岡(松坂桃李)は、幸太を上林組から抜けるのを許さなかった。


日岡は、上林に罠を掛けて一斉検挙しようとしたが、その目論見は見破られ、幸太のSもバレて幸太は殺されてしまった。



武器を手に入れた上林(鈴木亮平)は、尾谷組に戦争を仕掛けるのである。
事務所にトラックで突っ込み、殴り込んだのだ。


そこに現れた日岡(松坂桃李)は、上林を挑発して自分を追わせて決着を付けようとした。


死闘の末に上林を殺そうとしたところで、刑事達に日岡は捕まってしまった。
捜査本部長の嵯峨(滝藤賢一)は、一連の事件の責任を日岡に取らせようとした。しかし日岡は隙を見て嵯峨の拳銃を奪い取り上林を射殺した。



広島県警は日岡(松坂桃李)が嵯峨(滝藤賢一)の拳銃を奪って犯人を殺したことを隠蔽した。
余りにも警察がヤクザに介入していた事実を隠したかったからだ。
日岡は広島の田舎の駐在所に飛ばされていた。
魂を抜かれた抜け殻の様な巡査生活を送っていた。
エンド。

とまあ、大筋はこんな感じの映画です。

この映画の特徴は何と言っても東映ヤクザ映画の再来という作り。
色調といい、陰影の作り方といい、70年代に撮られた「仁義なき戦い」を彷彿とさせます。
前作といい今作といい白石和彌監督の手腕は見事なものです。
昭和のヤクザ映画復活!

今のヤクザはそれこそビジネスマンの仮面を被ったインテリヤクザが多いかもしれませんが、この映画の中に出てくるヤクザは任侠でもない、極道。ヤクザさへも手に余る完全にイカれた極悪人。人の命なぞ、虫けらの命とも思っていないほど。こんな奴がいたら今の法律なら間違いなく組は解散、組長は刑務所行き。
そんなイカれたヤクザが生息していた高度成長の日本。その勢いは経済だけじゃなく、ヤクザ界にも及んでいたのでしょう。
その中で松坂桃李演じる日岡は白と黒がぶつかり合わない様に上手くグラデーションを取っていたつもりだったが、そこに油性のペンキが落とされたものだから、混ざることなく塗りつぶされた。

この映画の本筋はそういうことです。

そして最も印象に残るのは役者の神経がピリピリしびれる取り憑かれた様な演技。
主役の松坂桃李と鈴木亮平は、まさに演技の悪魔に取り憑かれている様。
二人がぶっちぎりに凄かったです。


鈴木亮平は日曜劇場「TOKYO MER」で心優しきドクターを演じていますが(これも非常に良くできたドラマです)、その役柄とは全くの対極にあるサイコクレイジーなヤクザ役は今までのヤクザの中でもダントツにイカれていて怖いなんて言葉で言い表すのはぬるいくらいのヤクザを演じています。
松坂桃李も負けず劣らずの悪徳刑事役で、そのイケメンで優しい顔が一瞬でヤクザをびびらせる顔になるのはマジで怖いです。
主役という言葉がこれ以上に合う二人はいないでしょう。
問題はこの二人が凄ければ、凄いほど、周りが大変になるということです。脇役達もそれなりの面々なのですが、いいなぁと思ったのは滝藤賢一と村上虹郎と毎熊克哉くらい。いえ、もう一人いました。西野七瀬。

 

日岡の女役でスナックのママで幸太の姉という役回りなんですが、彼女にこんな役が出来るとは思いませんでした。
はい、なめてました。すみません。貴方はいい役者になっています。これからも期待します。


そんなイカれた映画なのですが、何故か惹き付けられます。
それは高度成長期の日本が、誰も彼もが勢いづいていた時代、その勢いというか急流とも言える流れがこの映画に観て取れるからだ。
そんな時代が最高だとは思わないが、魅力のある時代であったことは間違いない。
そんな時代の魅力が感じられるからこそ、引き付けられるのであろう。


子供には勧められる映画ではありませんが、オススメな映画です。