『怪怪怪怪物!』 B級タイトルに騙されると酷い目に | 悪食のシネ満漢全席

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ろくに情報知らぬまま、当たり屋みたいに突撃して、 しょーもない感想を言い合って、備忘録代わりに残します。 かなりの無責任、言いたい放題、無礼千万をお許し下さい。

騙されると酷い目に

 

悪食  83点

今年  161本目

 

監督、脚本  ギデンズ・コー

主演           トン・ユィカイ

                  ケント・ツァイ

                  ユージェニ・リウ

 

台湾ホラー?学園ホラーという位置付けみたいですが、評判が割といいので、大森キネカにやってきました。

 

鑑賞結果、見事なスプラッターホラーです。

B級にならないギリギリの線。出てくる奴らはか全員怪物で全員死にます。悪食の大好物映画です。

 

ここからネタバレ満載でいきますからご注意を‼️

 

始まりは高校生のイジメの現場。教師がいながらも止めようともしない。

いじめられっ子もイジメの証拠を掴んで教師に出すも教師は認めもしない。

それどころか問題児のいじめっ子達と共にボランティアを命じる。

ボランティアは老人達の施設のようなところなんですが、浮浪者の収容施設のようにも見えます。

 

浮浪者がいきなり腹を割かれて殺されます。

その内臓を美味しそうに食べる人間とは思えない二人、怪物です。

後に分かるのですが、姉妹のようです。

抉り出した心臓を妹に与える姉。美味しそうにその心臓にかぶりつく妹。

このカットはなかなかショッキングで、うわっと仰け反ってしまうほど。

嬉しそうに心臓を食べる顔が脳裏から離れなくなりますよぉ〜。

このカット一つでこの映画のエグさが分かります。

 

悪ガキ達は偶然、車に撥ねられる怪物の妹を見つけます。

彼等はなんとその怪物を捕まえて自分たちの隠れ家に監禁するのです。

それからの悪ガキどもの行動は吐き気を催す程の醜悪な人間の本性を曝け出します。

怪物なら何をしても構わないというおぞましい行動。

虐めなんてものではなく、拷問。

鎖で縛り付け殴る蹴る。歯を抜く。血を抜く。

怪物は人間だということをまざまざと思い知ります。

弱者に対する人間の無慈悲な行動。その相手が人間でないとしたら、物言わぬ動物なら。怪物なら。

その悪ガキどもの行動に怒りを覚えながらも、それは単に普通の人達の行動をデフォルメしただけ。

監督の人間に対する冷徹な目が嫌という程、突き刺さってきます。

 

ここからの悪ガキどもの行動は正常な人間の判断基準から大きく外れ、只の異常者になっていきます。

怪物の血が人間の血を取り込んでいくのと、怪物の血を光に当てると燃えるということを知った彼等は、あろうことかその血を担任の女性教師に飲ませてしまうのです。

女教師は全身から血を流しながら燃え上がる。

それを嬉々として見ている。

人間の形をした怪物の登場です。

 

怪物の姉は妹が帰らない為、探しにいきます。

そして悪ガキどもが関係しているのを突き止め、その高校を探し出します。

怪物の姉はその高校の生徒を無差別に殺していくのですが、この殺し方が凄まじい。

特にスクールバスを襲うシーンは圧巻です。

運転手を瞬殺すると逃げ惑う生徒を一人また一人と切り刻んでいきます。

最後に残った一人は妹の牙を抜いてその牙を携帯のストラップにしていた悪ガキ仲間の一人の女子高生。

このラスト一人を殺すカットがまた痺れます。

バスに乗った生徒を皆殺しにしているのを目の当たりにしながら、彼女は怯えるわけでもなく、冷静にその姿を見ている。

そして自分の眼の前にやってきて、ストラップの牙を見つけた時の怪物の憎悪の目。

しかし、その目を見ても彼女は恐怖ではなく、その状況さへも楽しむように怪物の写真を撮って仲間の彼氏に送るのです。

そしてその瞬間に彼女は殺されます。

怯えない殺され方が、非常に怖く感じるのはどうしてか?

そこにまともじゃない精神が垣間見えるから。

そんな異常な怖さを表現するこの監督もまた異常者なんじゃないかと疑ってしまうほど。

バスの大量殺害の象徴として、バスの窓ガラスに血だらけの手、手、手。ホラーの様式美といって仕舞えばそれまでだが、その様式美が人間の恐怖を求める渇望にさへ見えた。

 

彼女を殺された悪ガキのボスは、怪物を殺すことを計画する。

怪物の妹を囮にしておびきだし、閉じ込めたところで焼き殺す計画を立てる。

その計画は上手くいくと思われたが、悪ガキどもの仲間になっていたいじめられっ子は自分は悪ガキどもとは違うという思いで怪物達の逃げ道を用意する。

そして、悪ガキ達は怪物の妹から搾り取った血を町中にばら撒き、怪物の姉をおびき寄せようとした。

 

怪物の姉は夜明け近くにやってきた。いじめられっ子は悪ガキどもを裏切って一人で隠れた。

悪ガキ達は一人残らず殺された。

そして最後に残ったいじめられっ子の元へ。

怪物の姉は彼も許さなかった。

なぶり殺しにあうところで彼は夜が明けていたことを知る。

彼は許しを請いながら朝の太陽の光を怪物の妹に当てた。

怪物の姉は妹を守ろうと自分が覆いかぶさった。身体が焼けていく中で、鎖を断ち切っていく怪物の姉。

しかし力及ばず燃え出してしまう。妹もまた燃え出して二人は灰になってしまった。

 

学校で給食の配膳をしているいじめられっ子。

悪ガキどもは居なくなったが、それ以外の生徒から虐められる。

彼は給食に怪物の血を混ぜるのである。

給食を食べた生徒の教室はたちまち炎の渦。

しかし彼も給食を食べていた。

彼は笑いながら炎に包まれた。

エンド。

 

凄い終わり方です。

虐められていた少年は、悪ガキ達だけではなく、それに加担したクラスメイトもまた死に追いやるのです。

唯一、同じように虐められていた女生徒だけを巻き添えにせず。

 

この映画では、登場人物のほぼ全員が死にます。

その潔いほどの殺し方は韓国の悪者映画の様です。

しかし、これは学園物。

全員殺すには余りにも光がない。

人は性善説と性悪説に例えられることがある。

性善説は子供は無垢で純粋で天使の様な存在。

性悪説は、子供には善と悪の区別が無い。

残虐と言える行動も平気で行う。

子供を悪の象徴として描き、最後は地獄の業火で焼き殺すこの映画、只のスプラッターホラーとして片付けて良いものだろうか?

笑いながら業火で焼き尽くされていく人間。

監督は人間の悪魔性をホラーという映画にして炙り出している。

久し振りにゾクゾクする映画を観ました。

誰にでもはオススメしません。

はっきり言って吐き気をもよおしますから。

しかし、こんな映画も作れる台湾の映画界は凄いです。